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◇158 結局倒せないんかーい!

“結局倒せない”って言う設定、なんか面白くないですか?

「いいか、チャンスは一度きりだ」

「ええっ、そんな一発本番なんて」


 タンクライノス臭われる私達。

 正直そんなギリギリなことを言われても仕方が無い。

 タンクライノスはすぐ後ろ。何故か砲身を向けては来ないが、ピンチではあった。

 ここは一発本番の賭けに出るしかない。


「人生に予行練習は無い。行くぞ」

「だよね。そうだよね」


 凄い良いことを言っている。

 心に響く言葉だけど、Nightが言うのが説得力ない。

 けれどここは信じることにし、私はNightと一緒にボンバー岩の群衆に飛び込む。


「「せーのっ!」」


 私達はボンバー岩の中に飛び込む。

 だけどただ無防備に飛び込む訳じゃない。

 タンクライノスがぶつかる瞬間に身を翻すと、進路を変えた。


「こっち!」

「【ライフ・オブ・メイク】」


 私はNightを引き寄せてボンバー岩の中から飛び出す。

 地面に転がる様に倒れ込み、代わりに受け身を取った。


 対してNightはスキルを使ってくれた。

 一体何を生み出すのか。

 それを期待する前に、閃光が爆音と共に迸る。


 ボー――――ン!


 けたたましい轟音が上がる。

 細かな岩の礫が爆風に煽られる。

 吹き飛んだ瞬間私達は身動きが取れなくなり、Nightが急遽生み出した盾の裏側に隠れて小さくなる。


「ううっ、凄い音だね」

「そうだな……さて、これで」


 縦に空いた小さな穴から瞳を覗かせるNight。

 爆風と一緒に巻き上がった土煙で視界は悪い。

 タンクライノスが如何なったのか?

 私は固唾を飲んで見守ると、Nightの苦い声がした。


「なかなかやるな」

「Night? 楽しんでないでさ」

「そうだな。だが、これは想定内だが……面倒だ」


 想定内ではあるらしい。

 だけど顔色も口振りもよくない。

 きっとよくない展開なんだ。

 煙の中、キャタピラの回る音が聞こえると、タンクライノスの存在を確認した。

 土煙の中、意気揚々と、ほぼ無傷のままタンクライノスが顔を出す。


「嘘でしょ? 無敵なの?」

「相当な防御力らしいな」

「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないよ!」


 明らかにマズい。絶対的にピンチ。

 私は考えなくても、意識を切り替えなくても分かった。

 この状況、非常にマズい。もはや打つ手なんて無い。


「どうしよう、Night」

「こうなったら、さっきの罠まで走るぞ」

「ええっ!?」


 突然何を言い出すのかと思えば、まさかのプランB。

 だけどここからあの簡素な落とし穴までって。

 流石に無謀過ぎ。そう思ったけど、Nightはマジだ。


「距離にしてみれば二百五十メートル程だ。走れるだろ?」

「それはそうだけど……」


 問題はNightだった。

 流石にNightの体力的に酷過ぎる。

 肩で呼吸をしていて、顔色が悪い。青白いにも程がある。


「ああ、もう!」


 私はNightの腕を掴んだ。

 ここまで来たんだ。やるしかない。やり切るしかない。

 私はタンクライノスに背を向けると、追い掛けっこに挑んだ。


「行くよ、Night!」

「アキラ、私を連れて走れるのか?」

「走るしかないよね?」

「……そうだな」


 なんでほくそ笑んでるの?

 正直キツいのは私の方なんだけど。

 タンクライノスにムカつきつつ、私はNightを連れて逃げた。




 ボーーーーーン!


 凄まじい轟音が聞こえた。

 真っ先に気が付いて顔を上げたのはフェルノ。

 体を素早く起こすと、あり得ないくらい早すぎる動きを見せた。


「なになに、いまのなにー!?」

「爆発音の様でしたが」

「そうね。一体なにが爆発したのかしら?」


 一体何が爆発したのか。少しだけ視野を広げてみる。

 このゴテゴテ荒野にはボンバー岩が生息してる。

 きっと一つか二つ、連鎖的に爆発したのだろうか?

 ただそれだけの話だけど、ベルはあまりにもタイミングが微妙過ぎるのが気になった。


「変な話よね」


 ベルはポツリと呟いた。

 すると雷斬が興味を示して訊ねる。


「変な話と言いますと?」

「単純な話よ。このタイミングの爆発、なにかあるでしょ?」

「なにかってー?」

「そんなの知らないわ。私はNightみたいに“なんでも分かってる”訳じゃないもの」


 ベルはNightとは違う。

 だから別に面白いことなんて言えない。

 それが分かっているからか、仕方なく見に行くことになる。


「仕方が無いわね。見に行く?」

「行くー!」

「そうですね。行ってみましょうか」


 ベルの合図にフェルノと雷斬は従う。

 ベルも頭を掻き、面倒臭そうな態度を取るが、体が素直だ。

 足が目の前の小高い丘に向かうと、向かい側にはアキラとNightが居る筈。

 爆発に巻き込まれてはいないだろうと推測するが、些か心配でもあった。


「わーい、一番乗り!」


 小高い丘をフェルノは駆け上がる。

 まるで子供の様に楽しんでいる。

 けれど反応はそこで止まった。唖然としてしまう。


「どうしたのよ、フェルノ。急に黙って」

「そうですね。いつものフェルノさんらしく……あっ?」

「ちょっと、コレはどういうことよ?」


 ベルは流石に声を出す。

 顔色が一変してしまい、瞬きをするしかない。

 開いた口が塞がらず、むしろ声を出すのが精一杯だった。


「なんで地形が変わってるのよ!」


 まず最初に地形が変わっていた。

 フェルノ、雷斬、ベルの三人は小高い丘の反対側に回った。

 けれど来た道は同じだ。丘の下、その地形が一変しており、ベルは声を荒げる。


「ってかなんで追われてるのよ!」

「そうですね。同速でしょうか?」


 アキラとNightは追い掛けられていた。

 明らかにアレがタンクライノスで間違いない。

 疲れ切ったNightをアキラが腕を引っ張って何とか逃げているが、タンクライノスに忙しなく追われていた。何故か同速なのが気になるが、少なくとも危険(ピンチ)だった。


「そんなことはどうでもいいでしょ!」

「そうですね。アキラさん、Nightさん、すぐに助太刀に参ります」

「うんうん。二人だけズルいよー、私もやる―!」


 雷斬の行動は手早かった。

 フェルノも目をキラつかせ、楽しそうにしている。

 そのせいか、すぐさま駆け出そうとするので、ベルは頭を使う。


「はぁ。なんか違くない?」

「違くない違くなーい。アキラ、Night、待っててねー。それっ!」

「あっ、ちょっと勝手なこと……はぁ」


 何とか引き留めようとした。そもそも追い掛けられる人数が一人増えるだけ。

 そのことに気が付いていたベルはサポートに徹しようとする。

 それが弓使いには合っていると感じたが、フェルノは止まらない。

 一度踏み込んだアクセルから足を放す気はなく、丘を駆け降り突っ走る。


「ったく、なにしてるによ」

「ベル、私達も」

「雷斬はダメよ。分かるでしょ、一人二人増えただけじゃ変わらないの」

「それはそうですが……」


 ベルは雷斬を向かわせないようにした。

 フェルノの様に直感では動かないと分かっていた。

 真剣なベルの顔を見た雷斬は、案の定立ち止まる。


「結局の所、倒せばいいのよ、倒せば」

「それができれば苦労はしませんね」

「そうでしょ?」


 単純明快な話をベルはする。

 けれどそんなことは夢物語。

 この状況でできる訳が無いと、雷斬は思ってしまう。

 だがしかし、ベルはニヤリと笑みを浮かべる。


「ですがあの爆発、恐らく仕掛けたのはNightさんの筈です」

「大方爆弾を撒いたのね」


 否、それは違っていた。

 地形に存在しているボンバー岩を起爆させたのだ。

 けれどそれでも倒し切れず現在に至っている。

 墓穴を掘ったのではなく、タンクライノスが頑丈すぎた。


「幸い、私達には気が付いていないみたいね」

「そうですね。ですがここからサポートするのですか?」

「ええ、そうよ。やるしかないでしょ?」

「やるしか……ですか。分かりました。ベル、なにをしますか?」


 雷斬はベルに指揮を委ねる。

 以前までは知らないものの、ベルに対して、雷斬は好感を持つ。

 嬉しくなって笑みを浮かべると、雷斬はベルに訊ねた。


「決まっているでしょ? 決まっていますよね」

「ベル?」

「ここから射抜きます、手伝ってください、雷斬」


 ベルの雰囲気が変わった。

 仮面を被り、冷静沈着な姿になる。

 しかも今回はただの演技ではない。顔に本物の仮面を被っていた。


「ベル、その姿は……」

「【仮面装着(マスクチェンジ)】。ここからは本気ですよ」


 ベルの雰囲気が異なっていた。

 その手には弓が握られている。

 まるで雷斬が二人居る様で、【仮面装着(静)】を発動させた。


 これぞ弓術形態(フォーム)の姿。

 一体どんな形を見せてくれるのか。

 私の成長に繋がってくれればと思うと、その様子を観察することにした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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