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◇157 タンクライノス

戦車に追われたら人間逃げきれません。

完全に手を抜かれてますw

「うーん、気になる」


 私は目を凝らした。

 流石に視力に影響を与えるスキルは持ってない。

 そのせいか、遠目になってしまうと、黒い影はこちらに気が付いたらしい。


「あれ、なんか来てない?」


 私はゾワリとする。

 これはここに居てはいけないのでは?

 そう思わされると、私はゴクリと唾を飲む。


「うーん、嫌な予感が……あれ?」


 ふと耳を澄ましてみた。

 すると耳障りな雑音が鼓膜を貫く。

 まさしくこの重低音。私は頬が固まる。


「えっ?」


 私はゾッとした。

 全身を駆ける肌寒い感覚。

 鳥肌ものの恐怖がすぐ近くに来ている。

 間違いない、これは走行音だ。


「ま、マズいかも?」


 私の直感が囁き掛ける。

 アレは距離を取るべきだ。

 近付かれたら終わる。そんな気がしてならず、まずは視界に入ったNightに呼び掛ける。


「Night、逃げるよ!」

「どうした、アキラ……」


 私はNightに叫んだ。

 急いで走り出して近くに寄ろうとする。

 けれどNightの顔色は悪く、固まっている。


「急いでNight。私じゃNightを背負ったまま走れない」

「分かっている。分かっているが、お前ソレは……」


 分かってる。言わなくても気が付いてる。

 走行音が近くに聞こえている。

 つまりさっき見えた黒い影、それが私達を追っている。


「来てるよ、Night!」

「分かってるならこっち来るな」

「こっちしかないでしょ!」


 後ろを振り返っている余裕はない。

 すぐ近くに走行音が聞こえ、キャタピラが鳴り響く。

 荒野の地面を踏み潰すと、チラリ背後が見えた。


「ラガァーラガァーラガァーラガァー」


 巨大な黒い塊が現れた。

 上半分がサイ。下半分は戦車。

 あまりにも奇怪な生命体で、私は言葉を失う。


「うわぁ、な、なにこれ!?」


 だけど声をとにかく出したかった。

 だからお腹の底も底から吐き出す。

 もう驚くしかない。怖いという感覚が襲う。


「タンクライノスだ。来るぞ!」


 Nightは教えてくれた。

 これがタンクライノス。見れば分かる。

 だけどそんな余裕はない。私はゾクリとしてしまうが、何が来るのか分からなかった。


「ラーガァン!」

「は、速い!?」


 移動系のスキルは持ってない。

 だから私の足は等速のまま。

 一定の速度で走り続けると、タンクライノスだけが速くなる。


「くっ、こうなったら!」


 私は体を起こした。

 跳ねる様に足を動かすと、急いでNightの元へ向かう。

 こんな時、何をするべきなのか。

 もちろん、何とか出来る人の力を借りるんだ。


「お、おい、こっち来るな!」

「Night、助けてー!」


 私はNightの所までやって来た。

 少しだけ息が荒くなる。

 まさかこんなことになるなんて。油断したつもりは無いんだけどね。


「おい、こっち来るなって言っただろ!」

「言ったけど、なんとかしてよ」

「私を青い猫型ロボットと一緒にするな!」


 超国民的漫画・アニメを口にした。

 確かに例えとしては合ってる気がする。

 だけどこの顔。正直困っている。


「き、来てるよ!」

「クソッ。こうなれば……」


 タンクライノスはキャタピラを使って優雅に襲い掛かる。

 鋭いサイの角を突き出している。

 高速移動しながら突進攻撃を繰り出してくる。


 流石に当たればひとたまりもない。

 何とかしないとダメだと、Nightも腹を括った。


「なにかいい方法があるんだね。それじゃあ早速……あれ!?」


 私が振り返ると、Nightの姿がない。

 代わりに凄く近い所にNightが居た。

 走って逃げてる。だけどもの凄く遅い。


「ま、待ってよ、Night!」

「はぁはぁはぁはぁ……」


 Nightは息を荒くしている。

 疲れ切った様子で瞼が重い。

 そのせいか走りも軸がブレていて、私でも簡単に追い付いた。


「Night、逃げるなんて酷いよ!」

「これが最善だ」

「これが最善って……それでどうするの?」


 私はNightに訊ねる。

 今こそNightの知恵の出番。

 そう思ったのも束の間、厳しい見解を見せた。


「正直な話、私一人だと手は無い」

「手が無いってどういうこと!?」

「そのままだ。私は……はぁはぁはぁはぁ」


 Nightがドンドン後退する。

 全身から汗が噴き出ている。

 相当疲労しているのか、Nightは苦しそうだ。


「まさか、体力切れ?」


 Nightはとにかく体力がない。

 運動神経が悪いとかではなく、単純に体力が足りない。

 そのせいか、普通にすぐバテる。

 これだけ走れば相当で、もはや限界ギリギリだ。


「はぁはぁはぁはぁ……ああっ、あっ!」

「ダメだよ、ここで倒れたら」

「アキラ?」


 私は今にも倒れそうな、虚ろな目をするNightの手を掴んだ。

 流石に置いてはいけない。

 私は自分の体を使って、前傾姿勢になってでも、一緒に走る。

 きっとフェルノや雷斬、多分だけどベルもそうする。多分だけど。


「ああ、でもこれじゃあ……」

「状況は変わらないな」

「そんなこと言ってないで、Nightは考えてよ!」


 結局事態は好転していない。

 ましてやタンクライスは襲って来る。

 逃げ切れるかな? いや、無理そうだ。


「どうしよう。どうしよう、どうしよう!」

「どうしようもなにも無いだろ!」

「なにも無いって……でもどうしたら」

「お前のスキルじゃ足りないか」


 今私が使えるスキルは限られている。

 普通に考えて【適応力】は意味ない。

 ましてや【キメラハント】が奪って来たスキルも、【半液状化】に【甲蟲】・【灰爪】・【熊手】に【蠍尾】、【幽体化】なんて皆無だ。

 頼みの綱、もはや奥の手の【ユニゾンハート】も如何使えばいいか見当も付かない。

 これは万事休すだよ。


「私も体力的に厳しいからな」


 一方のNightは【ライフ・オブ・メイク】が使えない。

 使えなくはないけれど、体力が持たない。

 今のままだとまともに使えずで、できることが無かった。


「それじゃあどうするの? このままやられる?」

「そんな訳にはいくか」


 諦める様子はまるでない。

 タダでやられる訳にはいかない。

 頭をフル回転させて考えると、Nightは何か思い付く。


「やるしかないか」


 けれど何か思い付いている。だけど顔色が悪く、嫌悪している。

 本当はやりたくないが、やるしかない。

 渋々な表情を浮かべ、唇を噛む。


「クソッ、かくなる上は」

「まだなにかあるの?」


 正直に気に転じた時点で手遅れだった。

 だけどまだ勝機が残っているらしい。

 ここからじゃまともに落とし穴まで引っ張れない。

 そう悟ると、一瞬で作戦を切り替える。


「こっちだ!」

「こっちって、危ないんじゃなかったの!?」


 Nightは方向転換した。

 私も頑張らずに付いて行く。

 するとタンクライノスも曲がり難そうにはしつつも、方向転換を開始。

 私達を見逃してくれない。


「うわぁ、まだ追って来た!」

「仕方ないだろ。ほら、走れ」


 タンクライノスは何処までも追い掛けてくる気満々だ。

 私とNightはずっと追い掛けられる。

 だけどなんで方向転換したんだろう?


「ねぇNight、信じたくはないんだけど」

「想像通りだ」

「想像通りって?」


 いや、この方向は想像できる。

 私は嫌な予感がした。スキルとか関係無しにだ。

 もちろんタンクライノスを倒せるかもだけど、そんな危険なこと、あの岩々を着火する何てバカ気ていて笑えなかった。

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