表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/230

◇154 もしかして落とし穴?

人類が発明した罠、落とし穴の出番だ!

 私達は荒野を歩き回っていた。

 ここまで大体三十分ほど、ほぼ無言。

 おまけに成果が出ていない。タンクライノスの姿がない。


「Night、一体何処に向かってるの?」

「何所でもない」

「はい?」


 まさかの返しだった。

 いつもはあんなに隈なく考える筈のNightが思考を放棄している。

 そんなのNightらしくない。と思ったのは、私だけじゃなかった。


「どういうことよ、Night。いつもみたいに偉そうなこと言わないの?」

「言う訳が無いだろ」

「あっ、最初から戦うことを放棄してるわね」


 もはや口喧嘩の舞台にも上がっていない。

 いくら罵っても調子に乗らない。

 これはダメだ。戦うことを放棄しているというより、戦う意思がない。

 完全にスマートなやり方に切り替え(シフト)している。


「調子が狂うわね」

「そんな気負いするな」

「気負いなんてしてないわよ。それで、なに企んでるの?」


 ベルは追及を忘れない。

 するとNightは憶測でものを言った。


「私もタンクライノスに付いての情報は片手程しか集まっていない。なんと言ってもレアなモンスターだからな」


 今回の相手、タンクライノスは非常に好戦的。

 一度視界に捉えた相手は何処までも追い続ける。

 だけど動き自体や本能に忠実な側面。その辺りの内面的な行動については多く情報が集まっていた。


 それでも片手程。

 何しろ目撃例が少ない。

 そのせいか、ネットの広大な海に潜っても、有益な情報はなかなか見つからない。

 それがNightの思考を乱した。


「それじゃあ外見の情報はほとんど無いって訳?」

「そんなこともない。タンクライノス、ある程度の形の想像は付くだろ」


 確かにタンクライノスなんて名前、想像しやすい。

 如何想像しやすいのか。

 簡単だ。戦車でサイなんて組み合わせは二つだけ。


 一つは下が戦車で、上がサイ。

 サイの角に戦車のキャタピラ。

 可愛くは無いけど、カッコいいかも?


 もう一つは最悪のパターン。

 下がサイで、上が戦車。

 強そうだけど何だか気持ち悪い。私は顔色を歪めた。


「戦車でサイ……だよね」

「そうだ。想像できるパターンは二種類が精々、分かってるな?」


 もちろん分かっている。

 だけどどっちのパターンだとしても、私は下が戦車の方がいい。

 頭の中の靄を切り払うと、コクンと首を縦に振る。


「そのどちらにも有効そうな仕掛け……つまりは罠を用意する」

「そんなことできるのー?」

「できるかじゃない。やるんだ」


 凄くカッコいい。

 主人公って言うよりも主人公の先輩ポジションの台詞だ。

 私は感嘆とするが、Nightは目を見開いて声を上げた。


「おっ!」


 目の前が急に開けた。

 空が見える。地面がない。

 一体どういうこと? そう思うけど、Nightは小走りすると、ニヤリと笑みを浮かべる。


「いいものを見つけたぞ」

「いいもの? 低いね」


 私は眼下を覗き込み。

 するとそこまでの高さはない。

 拍子抜けしてしまう私に、Nightは答える。


「これだけの段差があれば使えるな」

「使えるって?」

「もちろん罠にだ」


 私達の目の前には段差があった。

 大体一メートルくらいかな?

 軽く跳び越えられそうで、罠に使えるとか分からない。


「Nightさん、本当にここを使われるのですか?」

「不満か?」

「いえ。ただ、これほどの段差では脅威には……」

「脅威になるかならないかじゃない。脅威にするんだ」


 メチャメチャカッコいい言葉(ワード)だった。

 確かに思い込ませることが大事。

 ちょっと意味が違うかもしれないけど、催眠術とかそうだ。

 後はマジックとかもそれっぽいかも? とにかく思い込ませることで、効果を発揮する。


「って、意味違うんじゃないかな?」

「お前、催眠術やマジックとは違うぞ」

「なんで分かるの!?」

「むしろどうしてそこまで飛躍させた」


 完全に読み当てられてしまった。

 否、多分Night的には色々と私の仕草を観察したんだ。

 複数の想像を同時に働かせて私の思考を暴いた。

 うわぁ、ちょっと怖いかも。とは、私は言えない。


「って、対比したアキラが怖いわよ」


 ベルにグサリと刺さる言葉を言われた。

 流石に傷付く。私は落ち込んでしまう。

 まあ確かに飛躍はし過ぎたかも。これは反省ものだ。


「さてと、状態も把握した。充分だ」


 Nightはしゃがみ込んで地面を叩く。

 するとボロボロと崩れてしまう。

 かなり脆い。特にこの辺りはそれが顕著だ。


「よし、それじゃあ始めるぞ」

「始める? 一体なにをするの」


 Nightは段差を跳び越える。

 一瞬足がグニャリ掛けていたけど何とか耐える。

 それから私達に振り返ると、疑問に答えてくれた。


「決まっているだろ。それっ、受取れ」

「うわぁ!? ってシャベル?」


 突然渡されたのはシャベルだった。

 全員分行き渡ると、堂々とした口調を取る。


「今からここを掘るぞ」

「ほ、掘るって?」

「一体なにする気よ」


 私とベルはもちろん首を捻る。

 けれどNightは眉間に皺を寄せた。

 「分からないのか?」とか今にも言いそう。


「なにをする気だと? 決まっている、コレは罠だ」

「「罠?」」

「そうだ、深い穴を掘る。それが今回の罠だ」


 あまりにも自然な流れだった。

 この段差を利用して、罠を作るってこと?

 だけどそれって落とし穴じゃ……なんてことを思う前に、Nightはニヤリと笑ってしまった。



「よいしょよいしょ!」

「もっと深くだ」

「はーい」


 フェルノが一生懸命掘っている。

 もちろん私達も頑張っていた。

 だけど一人、Nightに対してイラっとする。


「Nightも手伝ってよ」

「私が手伝って、なんの足しになるんだ?」


 Nightは一切手伝ってくれない。

 ましてやサボっているっていうよりも、グチグチ指示だけしてくる。

 しかも自分が体力が無いことを分かった上でだ。

 なんだろう、正直納得はできない。


「そうだとしても手伝ってよ」

「ふーん、仕方が無いな」


 傾斜を滑り降りるNight。

 羽織るマントに土が付く。

 もちろんそれだけじゃない。フラリと倒れそうになってしまった。


「おっとっと……」

「あっ、Night!?」


 私はNightを支える。

 ただ傾斜を滑り降りただけなのに、こんなにフラつくなんて……。

 体幹が弱いのかな? それとも疲れが溜まっているのかな?

 ここまでの移動でかなり発汗していた。


「大丈夫、Night?」

「ああ、大丈夫だ。さて、手伝うか」


 インベントリからシャベルを取り出した。

 Nightはシャベルを地面に突き刺す。

 すると腕に激痛が走り、険しい顔をした。


「大丈夫、Night? 硬い石でもあったの?」

「いや、無かったが……」


 私は地面を見た。確かに石は埋まっていない。

 つまりただ単に硬い土をショベルが貫いただけ。

 否、弾かれただけだ。


「本当だ、なにも無い」

「はぁ。私の体力と筋力の無さには絶望するしかないな」


 ステータスが(マイナス)になることもある。

 もしかすると、今のNight……なんて野暮なことは考えない。

 だからここは意識を切り替える。


「あはは、Nightも気落ちしないで頑張ろうね」

「そうだな。私は私ができることをする」

「よーし、みんなもう少しだけ頑張るよ!」

「「「おー!!」」はぁー」」


 私の号令にみんな応えてくれた。

 フェルノと雷斬は黙々と作業を続ける。


 対してNightとベルは溜息を付いた。

 正味意味を考えだしている。


 けれどそんなこと言っていられない。

 ここまで来たんだ。目標まで掘るしかない。

 そう、私達の目標は……深さ十メートルだ。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ