◇152 戦車のサイですか?
無駄な与太話を排除しました。
リメイク前より読みやすい筈です。
八月になった。
学生にとっては最高の休日。
夏休みに突入し、時間にとんでもなく余裕が貰えた。
おまけに高校に入ったら義務教育じゃなくなった。
おかげで課題の山に襲われることもない。
ましてや美桜高校は、進学校じゃない。だから部活にも入っていない私は、こうしてゲームにのめり込んでいた……訳でも無いんだけどね。
「ってことで、ギルド会館に来てみたんだけど」
私の足は早速ギルド会館にやって来ていた。
何せ行く所が無いし、目的がない。
残念ながら今日はソロで、暇も暇だった。
「ギルドランクを上げたいって思ってたけど……」
ここに来た目的はいい感じの依頼を受けるため。
受理してこなせばこなすほど、ギルドランクは上がりやすい。
次のランクはC。
まだまだ遠い感じがする。
だからここは頑張らないとな気分で、私はギルド会館にやって来たんだけど……
「これはどういうことですか、ミーNaさん?」
何故かミーNaさんに呼び止められてしまった。
しかも私の姿を見るや否や、手招きをしていた。
明らかに何かある。だけど無視も悪い気がして私はノコノコ向かった。
「お待ちしていました、アキラさん」
「待ってた? んですか」
受付の窓口にやって来ると、何故かそんなことを言われた。
明らかに怪しい。
碌でもない話しなのは確定で、私は身構える。
「実はとある荒野にモンスターが出現したそうです」
「モンスターですか?」
そんなの普通だと思うけど。
しかも荒野なんて、私は少なくとも行ったことが無い。
「変なことですか?」
「あまり見かけないモンスターでして」
「はぁ?」
珍しいモンスターなんて山ほどいると思う。
だけどそんな提案されるなんて。
これは私の興味が顔を覗かせる。
「ちなみにどんなモンスターが現れたんですか?」
私がほんの少し、本当にちょっぴりだけ興味が顔を出した。
するとミーNaさんの顔色が変わる。
私はゾクリとしてしまうが、モンスターの名前を呼ばれた。
「タンクライノスと呼ばれるモンスターだそうです」
「タンクライノス?」
なんだそれ。戦車とサイ? 組み合わせ的に想像しやすい。
だけどそんなモンスターが現れるなんて、ますますファンタジーじゃない。
SFに片足を突っ込むと、私はポカンとする。
「このタンクライノスは、Cランク相当ではありますが、Bランクにも近いとされています」
「それじゃあほぼBランクってことですか?」
「そうとも言われていますね」
つまり強いってことだ。
勝てるのかな、そんな相手に?
あれ、なんで私勝つ前提なんだろう。
「まさかとは思うんですけど、討伐とかじゃないですよね?」
「察しがいいですね、まさにそうです」
「無理です」
即答した私。
タンクライノスなんて強いに決まっている。
私は断固として首を縦に振らないでいると、ミーNaさんはもう一声。
「こんな機会滅多にありませんよ?」
「つまり珍しいってことですか?」
「もちろんです。いい経験になると思いますが?」
どっち? それはどっちを言ってるの?
人生経験的な意味? それとも経験値的な方?
訳が分からないでいるも、私は自問自答をする。
「えー、えっ?」
私はよく考えることにした。
唸り声をつい上げてしまいそうになる。
それだけは必死に抑え込むと、心の中で唱える。
(タンクライノスの討伐か……)
きっとフェルノなら飛びつくんだろうな。
私は遠い目をしてしまった。
とは言え珍しそうなモンスターの名前で、興味はある。
興味はあるんだけど……ちょっとね。
「どうですか、アキラさん?」
それにしても不思議だ。
どうしてそんな話を私なんかにするんだろう?
この前もそうだけど、変な話だな。
「でもどうしてそんな話を私にするんですか?」
「アキラさん達なら、きっと調査に向かってくださると思うからです」
「えー」
なんでそうなるのかな?
完全に使い勝手にいい駒にされてる。
ムカつくなと思いつつ、ミーNaさんはこっちを見ている。
「それでどうされますか?」
ミーNaさんの期待の目。
気持ち悪いくらいキラキラしている。
これは流されてはいけない。私は波から外れる。
「うーん、私一人じゃどうにも」
「大丈夫ですよ、皆さんと一緒でしたら」
「ごめんなさい。興味はあるんですけど、もう少し簡単な依頼にします」
私は笑顔で立ち去る。
何せ今回の依頼は難しそう。
ソロだととてもじゃないけど無理だし、みんなにも悪い。
前回のことがあるから強く言えず、私はミーNaさんの期待? を踏み潰す。
「あっ、待ってください」
そんな私の背中をミーNaさんは引き留めようとする。
だけど私は無視も無視。スルーを決め込む。
このままだとマズい。なんでそう思ったのか分からないけど、余計なことを言った。
「それに、この依頼を無事に達成していただければ、〈《継ぎ接ぎの絆》〉はCランクにあと一歩になりますよ?」
私はピタッと足を止めた。
それは旨い話過ぎないかな?
怪しいと思う私だけど、一旦窓口に戻った。
「それって本当ですか!?」
「はい。本当ですよ」
この依頼をこなせば、一気にpも稼げる。
そうすればCランクまでは一直線。
私は正直悩んでしまった。
「うーん、勝手に引き受けてもいいのかな?」
「ギルドマスターであれば、構わないと思いますよ?」
「うーん、職権乱用な気がするんですけどね」
完全にギルマスの立場を利用するように迫っている。
むしろ脅迫にさえ聞こえる。
私は目を泳がせつつも、逃げられないと悟った。
「分かりました、頑張ってみます」
「本当ですか!? ありがとうございます」
「ありがとうございますって……」
如何して感謝されるのかは分からない。
まだ依頼もこなしていないし、上手く行くかも分からない。
保証が全くできない中、私は渋い顔をした。
「あっ、アキラさん。それともう一つ」
「えっ、まだなにかあるんですか?」
立ち去ろうとする私を、ミーNaさんは引き留める。
踵を返すのを止めた私。
嫌な予感がする。
「はい。あくまでも噂なんですけど」
「う、噂……」
大体この手の噂は碌なことが無い。
それは前回で証明済みだ。
私はげんなりした顔になるも、ミーNaさんは楽しそうで、単に噂を誰かに話したい人になっていた。
「って、ことになったんだけど、いいかな?」
「「よくない!」わ」
私はギルドホームでみんなに説明した。
正直勝負にはならないって分かってた。
案の定、Nightとベルに反論される。
(あはは、こうなっちゃうよねー)
私は目を泳がせた。
何せ事前に確認も取らなかった。
だからこうして詰め寄られてしまうけれど、もう受けちゃったんだから、二人もそれ以上は言い返せなかった。凄く気まずかった。
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