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◇151 黒鉄の巨人・敗れる

いよいよ五章スタートです。

先に社長がクリアします。

これぞ本当のデバッグ作業?

 CUの世界。深い深い森の奥に、ひっそりと佇む遺跡。

 この遺跡は(そら)を模したものです。

 中々良いデザインに仕上がっているので、私は社員の皆さんに感謝しました。


「後は上手く動いてくれるかですが……」


 私は遺跡の全ての謎を解き明かしました。

 実際、この遺跡の攻略は簡単ではありません。

 私自身も苦戦を強いられてしまいました。


「太陽と月に星、全てを解き明かせば開く道。設定も充分ですね」


 シナリオチームの活躍に歓喜しました。

 私も初見で遊んでみましたが、かなり面白いです。

 とは言え、必要なのかと疑う面は観えました。

 要改善……と通常の企業なら思うのでしょうが、私は個性や味として残します。


「それにしてもよくできていますね。この遺跡に見惚れてしまい、謎を解くのに一分も掛かってしまいましたね。不覚です」


 私は遺跡の完成度の高さに驚きました。

 探索を続ける中でふと比べてしまうのは謎です。

 あまりにも単純。それでいて子供騙しにもなっていません。

 こんなこと言うと怒られてしまうのでしょうが、私自身、一分も無駄な時間を費やしてしまったと感じました。


「この下ですか?」


 私の目の前には階段が現れました。

 最後の謎を解いたことで開いたのでしょう。

 早速この先に向かいます。


「下りても大丈夫そうですね」


 私は階段を下りました。

 この先に待っているもの、もちろん私は知っています。

 これだけの遺跡なのですから、当然用意しています。


「楽しみですね。資料以上のものになっていることを期待しますが……」


 私は自分の部下達に淡い期待を抱きました。

 もちろん野暮なこと、余計なプレッシャーを掛けると気が付いています。

 ですが手元の資料を見ると、楽しみでワクワクしました。


 そうして階段を下ります。

 気が付けば天井が高くなっています。

 如何やら目的地に辿り着いたみたいですね。


「ここがボスフロアですか」


 階段を下りてやって来た先。

 そこは広々とした地形。

 如何やらボスフロアは十二分に取られているのか、私は満足します。


「あの中央にあるのは……」


 中でも気になったのは中央に設置された塊。

 一体なのか。少し近付いてみます。


「コレは……」


 突如として現れたのは、巨大な黒い塊。

 鉄で出来ているのか、叩くとカーンカーンと反響します。

 変形機構でも備わっているのか、所々に分割線がありました。


「触っただけでは動かない……みたいですね。ん?」


 私はペタペタ触ってみました。

 しかし塊は塊のまま。

 一向に動く様子がありません。


 ですがしばらく触っていると、何やら警戒装置が機能したみたいです。

 突然けたたましい音を奏でます。

 それに合わせ、私も距離を取りました。如何やら変形してくれそうです。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


「おお、いいですね。この起動音、古典的です」


 目の前の巨大な塊は、突然動き出しました。

 カラクリ仕掛けなのか、内部で歯車が回る音。

 に、非常に似た効果音と共に立ち上がります。


 ガガガガガガガガガガがガガガガ!


「動きが鈍いですね」


 想った以上に動きが鈍いですね。錆びついているのでしょうか?

 その形は分割線や軸を利用し、ゆっくりと人の形へ、所謂巨人になりました。

 私は首を捻ってしまいますが、赤く光り出した瞳が、こちらを睨んでいます。


「どうやら忠実なようですね。侵入者を排除する……ボスとしては充分ですね」


 けれども行動自体は忠実です。

 しっかりとプログラムが機能している証拠です。

 私は社長として嬉しく思うと、早速黒鉄の巨人は攻撃を仕掛けました。


 ドン!


 振りかぶられた拳が、真っ先に私を捉えます。

 突然振り下ろされた拳。

 初見だと、躱すことさえ困難でしょう。


「なるほど、想像よりは遅いですね」


 しかし私には一切届きません。掠りもしません。

 ふむふむと顎に手を当てます。

 要改善……とまではいきませんが、初見殺しには有効でしょうね。


「では反射は……はっ!」


 私は試しに駆け出してみました。

 するとアバターが私の動きに付いて来れません。

 完全にファンタジーの域で、当然ながら、黒鉄の巨人は私を追えませんでした。


「なるほど、視野はそれほど広くないみたいですね」


 参考になるデータです。

 実際に自分が戦ってみないと分からないことも多々あります。

 それにしては有益な情報に私は感謝すると、次は防御面を見てみます。


「では攻撃を仕掛けますか」


 私は黒鉄の巨人に攻撃を仕掛けました。

 地面を蹴り、高く跳び上がります。

 狙うは頭。反撃して来るか否か、緊張感が高まります。


「はっ!」


 ズドーン!


 私の拳が炸裂しました。

 もちろん武器など一切使っていません。

 そのままスキル無しの攻撃がクリンヒット、黒鉄の巨人は一発でKOされてしまいました。


「あれ? お終いですか」


 起き上がってくる様子がありません。

 正直困りましたね。

 これだとテストの意味がありません。


「ふむ、防御面は私の体感では高めに設定されていると思ったのですが……まだまだ粗がありますね」


 もう少し強い設定にしても問題なさそうだ。

 と、私は思います。


 実際、黒鉄の巨人は中ボス並み。

 それくらいの実力は備わって欲しいのです。

 ですが私の攻撃一発も耐えられないとなると、少しだけ不安になりますね。


「この辺は要改善と……はい、これだけ集まれば充分ですね」


 私は鉄の巨人から得られる情報をすべてまとめました。

 軽い報告書に仕上げると、次の行動に移ります。


「では次に地形の調査をしましょうか」


 私は黒鉄の巨人を倒すと満足しました。

 ですがまだ終わりではありません。

 この遺跡の構造をもう少し探る必要があります。


「五分もあれば充分ですね」


 それから私はしばらく、遺跡の内部を歩き回しました。

 残念なことにモンスターはいません。

 罠のようなものもありません。

 黒鉄の巨人と戦う地形(フィールド)も、充分に確保されています。


「さてと、これで問題ないみたいですね」


 とりあえず私のやりたかったことは無事に上手く行きました。

 調査の結果は後で担当部署に報告することにします。

 私は満足感を得ると、この遺跡の活躍を楽しみに思いました。


「どのようなプレイヤーがこの遺跡を攻略するのか。楽しみですね」


 硬い頭では決して解けない。

 そんな杞憂なダンジョンを作ってしまった。

 けれど私には楽しみで仕方が無く、変化や進化に期待をしながら、CUをログアウトしました。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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