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◇140 推進力強化

ファンタジーをSFを超えて、ついに近代へ!

 私達はとにかく逃げた。

 もう逃げることだけ考えた。

 狭い筏の上。逃げ道なんて無いけれど、とにかく逃げられるだけ逃げた。

 しかし……


「はぁはぁはぁはぁ……結構キツいわね」

「そうですね」


 雷斬とベルは疲労していた。

 ずっとスキルを使い続けている。

 それでも逃げるのが精一杯なのは、ここが川だからだ。


「どうしよう。二人共相当疲れているよ」

「そうは言ってもだな……」


 雷斬とベルも一回休憩が必要だ。

 このままだと、何処かで潰れちゃう。

 私は慌てると、Nightと視線を合わせた。

 未だに筏は追われているみたいだ。


「何処までも追って来るか」


 未だに背びれが飛び出している。

 私達の筏をカメか何かと勘違いしているのかも。

 付かず離れずの距離感を維持しつつ、何故か追いかけられ続ける。


 そんな状況はやきもきする。

 ふと視線を飛ばせば、Nightが雷斬に話し掛けた。


「雷斬、アレやってみるか?」

「アレですか?」

「そうだ。お前の雷なら、川の通電性を利用すれば」


 Nightはとんでもない想像を働かせる。

 雷斬に指示を出すと、首を捻る。

 一体何を考えているのかな? 私は頭を使った。


「ダメだって、流石にそれはダメ!」


 私は何となく想像が付いてしまった。

 だから全力で止めに入ると、Nightは舌打ちを鳴らす。

 多分だけど、私の想像は固くない。


「とは言え、これ以上は無理だぞ」

「そうだけど……」


 私は言葉を詰まらせた。

 それからNightに問われる。


「お前になにか方法が思い付くのか?」

「私が今持っているスキルじゃ無理だよ」

「そうだな……スキルが足りないか」


 正直このままだと逃げ切れる感じがしない。

 何か方法は無いのかな?

 私はNightに視線を配ると、まさかの手が挙がる。


「そうだー。ねぇ、これ試してみない?」


 そう言うと、フェルノが提案する。

 一体どんなバカみたいな方法かな?

 私はこの状況は藁にもすがりたかった。猫の手も借りたかった。

 だからNightと一緒に耳を傾けた。


「言ってみろ」

「私が炎でブシャァァァァァってするのー」

「……ちょっと待て」


 Nightが固まっちゃった!?

 どうしよう。こんな時に突拍子も無いことをフェルノが言ったから、Nightもおかしくなっちゃった。

 私はあたふたするものの、実は違うらしい?


「蒸気船か」

「蒸気船?」


 何だか嫌な予感がする。

 今でさえ文明開化の音がしてすぐ近くに聴こえる。

 けれどそれがドンドンけたたましい勢いを増すと、早速Nightは組み込んだ。


「ここをこうして、プロペラとモーターは活かす。とにかく今は推進力だな」


 Nightはブツブツ念仏を唱える。

 だけど手際が良すぎる動きで、よく分からない箱とかよく分からないパイプが伸びた。

 色んなパーツが最低限でくっ付いており、Nightは渋い顔をする。


「今はこれくらいしかできないな」


 もうゴチャゴチャしていて私には分からない。

 呆気に取られる中、迫ってくるサメを相手に、Nightはフェルノに指示を出す。


「お望み通りだ。お前の炎で一気に引き離せ!」

「OK。いっくぞー」


 フェルノがそう言うと、早速スキルを解放。

 【吸炎竜化】を発動すると、筏が軋みを上げた。

 フェルノの体重増加に悲鳴を上げているんだ。


「フェルノ、変に動いちゃダメだよ!」

「あはは、変にって?」

「余計な動きはするな。とにかく炎だ!」

「はいはーい。この箱の中に入れればいいんだねー。溶けないでねー」


 確かにそれは怖いかも。

 今ここでフェルノの炎を被ったら全員火だるま。

 その時は川に飛び込めばいいのかな? でも川の中にはサメがいて……余計なこと考えちゃダメだね。うん。


「ガンガン燃やせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 フェルノがそう言うと、手のひらから炎が出た。

 流石は<ファイアドレイク>、圧倒的な火力。

 轟々と燃えだした炎がパチパチと火花を上げると、箱の中に吸い込まれる。


 それから箱の中でバキバキとかペキぺキとか、ヴオンヴオンとかヤバめな音を立てた。

 私は怯えてしまうものの、次の瞬間もっと凄いことになった。

 パイプから黒煙を噴き上げると、筏はグングンとウィリーしそうな勢いで進んだ。


「うわぁ、急になによ!?」

「分かりません。ですがこの勢いは」


 今までとは訳が違う。だって炎を使っているから。

 しかもフェルノの炎はほぼ無制限。

 今までとは比べ物にならない推進力に、ここまで頑張ってくれていた雷斬&ベルが悲鳴を上げた。


「凄い凄い、ドンドン進む―」

「ふ、振り落とされそう」

「そうだな。想定外の速度だ」


 まさかNightもここまでのことは考えていなかったなんて。

 私は呆気に取られてしまう。

 筏は激しく揺すられると、私は筏にしがみつくのでやっとだ。


「ちなみにフェルノ、これいつ止まるの?」

「えっ、止める?」


 そう言った瞬間フェルノは炎を解く。

 すると推進力を失った筏の動きがピタッと止まる。

 突然止められたことによって、アクセルから急ブレーキが入ると、私達はあり得ない衝撃を受けた。


「ぶへっ! お、お腹痛い」

「(ガツン)くっ、頭が……」

「目、目が回るわね」

「そうですね……はい」


 フェルノ本人以外、体を思いっきりぶつけた。

 怪我をしなかっただけ幸で、全員が鞭で打たれたみたいに痛い。

 そんな私達の姿が意外なのか、フェルノは首を捻る。


「あれー? みんなどうしたのー?」

「どうしたのじゃない」

「なんで怒るのー?」

「当り前だ。お前はもう少し周りを見ろ」


 確かにもうちょっとでいいから安全運転がよかったな。

 私はお腹を押さえながら、何とか体を起こす。

 周りからの騒音が消え、しんみりとした空気が流れていることに気が付く。


「はぁ。怒ってばかりもいられないか。とはいえ……」


 体を起こしたNightは筏の周りの川を確認。

 モンスターの姿は一応無さそうだ。


 それから何周もNightは周囲を見回す。

 やはりモンスターの姿は上下左右、前後三百六十度影も形も無い。

 胸を撫で下ろしたのか、ソッと呼吸を整える。


「とりあえず助かったな」

「うんうん。なんとかなったねー」

「う、うん……」


 確かに助かった。助かったのは助かった。

 フェルノが一番役に立ったから喜んでいるけれど、私は少しだけ考えちゃう。

 本当は口にしなくてもいいんだけど私は吐露してしまった。


「ついにここまで来ちゃったよ」


 完全にファンタジー世界から近代文明の世界になっちゃった。

 私はゲーム感が完全に薄れ、灰色の空になったことを伝える。

 気が付けばサメ? の姿も居なくなっていた。

 如何やら振り切れたらしいけれど、早く筏から降りたくなった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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