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◇136 岩を降らせてきたぞ!

大分、苦悩していた時ですね……

 筏はドンドン下って行く。

 しかももう少しで中流だ。

 意外にスリルはあったけど、それより楽しいの方が強いかもしれない。


「みんな、なんとかなってるね」

「そうだな」


 淡白な返答が返って来た。

 確かにまだ油断できない。

 上流が一番危険とは言え、まだ上流の中だ。


「それに、コンドルが気になりますね」


 ベルは未だにコンドルのことを気にしていた。

 視線が全然離れない。

 頭上を見たまま首が疲れるまで見続ける。


「えー、なにかしてくるのー?」

「分からないです。ですが、私は怪しんでいますよ」


 冷静沈着に話し掛けられて、逆に怖くなる。

 これがベルの形態(スタイル)なんだろうけど、ちょっとだけ違和感がある。


「ベル、もう少し肩の力を抜いたらどうでしょうか?」


 親友として雷斬がベルに宥めかける。

 けれどベルは首を横に振って否定した。


「それはできないです。必ずなにかある。そう確信していますから」

「確信ですか?」


 ここまで意思が硬かったら、私達はなにも言えない。

 ベルの好きなようにさせてあげると、突然空が暗くなる。


「あれ? 急に暗く……うわぁ!」

「これは、絶景だな


 空が暗くなったんじゃない。影が下りたんだ。

 筏が潜っているのは天然のトンネル。

 何万年という月日が生み出した、幻想的な岩のトンネルだった。


「なんか風情あるねー」

「フェルノの口から風情か」

「バカにしたなー。まあ珍しいけどねー」


 確かに珍しい。だけどそれだけ美しかった。

 差し込む微かな陽射しが影の中を照らす。

 すると岩の表面の凸凹を丁寧に強調させてくれて、目を奪われてしまう。

 多分だけど、絶景とか秘境とかって、こういうことだ。


「なんかいいね。これだよね?」

「うんうん。レジャーって感じ―」


 私とフェルノが子供みたいに興奮する。

 すると雷斬はベルのことを気にしてしまう。


「……それでベル。どうして弓を構えているのでしょうか?」

「こういう場所が怪しいのです。そうですね、Nightさん」

「そうだな」


 この状況でもベルは弓を構えている。

 矢を番え、常に上を見ている。

 何処から敵が来るのかは分からないが、Nightも警戒していた。


「……ん?」


 Nightが喉を鳴らした。

 その瞬間、頭上から何かが落ちて来る。


「やっぱり来ましたね!」


 ベルは頭上から落ちて来る何かに弓を構えた。

 弦を引き寄せ、スッと指先から放す。

 すると矢の先端が落ちて来た何かに触れると、バキッと音を立てた。


「破裂してください」


 ベルはそう言うと、小さな破片が飛び散った。

 私の頭上に振らされると、雨のように体を射抜く。

 腕や肩に当たると、私達は顔色を顰めた。


「痛い!? な、なに、これ!」

「岩かな? あれー」

「岩が降って来るんですね。ですが……」


 如何して岩が落ちて来たんだろう。

 ベルが矢で射抜いてくれたからこのサイズなんだろうけど、どうして岩が降って来るのかは分からない。

 私は首を捻ってしまうと、顔色を顰める姿があった。


「雷斬、それにNight、なにか分かったの?」


 今しか話す暇は無いと思った。

 だから私は二人に訊ねると、雷斬とNightは悩んだ顔をする。


「恐らく、何者かが岩を落としているな」

「そうですね。実際、追って来ていますね」

「追って来てるって?」

「追って来ていますよね、ベル」


 雷斬とNightは奇妙な話をした。

 何かが追っているのだろうか? 一体何が?

 自然とベルに視線を向けると、弓を下ろして呟いた。


「もちろんよ。この音は、鳥よね」

「「鳥!?」」


 ベルは【風招き】を使っていた。

 そのおかげか、背後から吹く風に違和感を覚える。

 何かが風を切り裂いている。つまり、飛行する何かを感じ取る。


 その正体をベルは鳥だと思った。

 飛行すると言えば、なんとなく鳥だと思うのはおかしな話じゃない。


「なんにも見えないよー」

「当り前よ。後は本当の闇なのよ」


 フェルノは振り返るも、暗すぎて何も見えなかった。

 おまけに何が飛んでいるのかも分からない。

 私とフェルノは目を凝らしてみるけれど、ベルに一蹴されてしまった。


「でも鳥が……しかもコンドルか」

「どうしたの、Night?」

「いや、なんでもない」


 Nightはなにやら引っ掛かる部分があったらしい。

 けれど肝心な部分をまるで教えてくれない。

 一体何が分かったのかな? 気になる私だったけど、Nightは切り替えた。


「そろそろトンネルを抜けるぞ。気を引き締めろ」

「気を引き締めろって?」

「なにが起きても不思議じゃない。ってことだな」


 Nightは私達を脅かした。

 だけど確かに気を引き締める必要はありそう?


「怖いこと言わないで」

「そう言いながら、スキルを使っているが?」

「あっ……」


 私とフェルノは自然とスキルを使っていた。

 固有スキル【キメラハント】で武装した。

 フェルノも【吸炎竜化】を発動している。

 やっぱり言葉に惑わされちゃってるみたいかも。


「言っとくけど、鳥が相手ならまともに戦えるのは私だけよ?」

「そうだな。私も拳銃を使うくらいには」

「射程が足りないのー?」

「ライフルは持ってないからな」


 確かにまともに戦えそうなのはベルくらいだ。

 後はNightなら何とかなりそうだけど、如何にも上手く行かないらしい。


「物騒な話し」


 私はポツリと呟いてしまった。

 だけど、拳銃がある時点で、ライフルもありそうなんだけど。


「皆さん、トンネルを抜けますよ」

「いいか。驚くなよ」

「な、なに? もしかしてこの先の光景、Nightは知ってるの?」


 明らかにNightは知っているような口振りだった

 一体何が待っているのかな。

 絶対に碌な事じゃない。


「いや、何となくの想像だ」


 Nightが何を想像しているのかは分からない。

 けれど薄っすらと差し込む陽射しがトンネルの中を照らす。

 真っ白な光が溶け出すと、私達の視界が開ける。



「な、なにあれ?」

「鳥だねー。コンドルだねー」


 トンネルの外側は絶句な光景がある。

 頭上には大量の鳥が回っている。

 クルクルと円を描き、興奮状態だった。


「なるほど。やはりか」

「やはりかじゃないよ! これって絶対に危ないよね!?」


 大量の鳥に睨まれている。それだけで怖い。

 コンドルが群れを成し、私達のことを見つめる。


「しかもなにか持ってるよー」

「岩だな」

「岩ですね」

「岩じゃないよ!」


 何となくだけど、私とフェルノ意外に三人は気が付いていた。

 大量のコンドルが獲物を狙っている。

 私達の顔色を窺うと、何故か足に岩を持ち、ニヤリと眼差しを浮かべていた。

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