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◇134 流れが、流れが、うわぁぁぁぁぁ!

タイトルが全てを物語ってます。

 私達は筏で川を下る。

 操縦するのは雷斬。

 さっき教わったことを素直にやってのけると、筏は流れの速さにも負けない。


「雷斬、凄く上手だね!」

「ありがとうございます」


 私は雷斬を褒めた。

 雷斬も素直に受け取ってくれたけど、ベルは余計なことを言ってボヤく。


「当り前よ。雷斬は覚えが早いから」

「それを言うならアキラだってー」

「そうなのか? お前も物覚えが良いのか?」

「そ、そんなことは無いと思うけど?」


 急に褒め合い合戦が始まった。

 正直渦中に沈められたけれど困っちゃう。

 だって、私は別に物覚えがいい方じゃない。


「違うよー、アキラは物覚えがいいんじゃないよー」

「ぐはっ!」


 私は見えない所でダメージを喰らった。

 痛い。酷い、そんなこと言わなくてもいいのに。


「吸収がいいんだよー、アキラに二回目は通用しないからー」

「どういうことだ?」

「つまりさー……ん!?」


 フェルノの視線が一点に留まる。

 急に口を閉じたから何かと思っちゃった。

 私は視線をズラし、フェルノと同じ所を見る。


「げっ!?」

「岩があるな。雷斬、端に寄せろ」

「分かりました」


 目の前には大きな岩があった。最初のスリルスポットだ。

 私とフェルノが驚く中、Nightは的確に指示を出す。

 受け手の雷斬はオールを操り、筏の軌道を変える。


「そのままゆっくりだ」

「分かりました。あれ?」

「どうした、なにかあった……なっ!?」


 オールを操り筏を端へと寄せる。

 しかし川の流れが激しくなった。

 筏が急に揺れると、Nightは舌を噛みそうになる。


「すみません、川の端の方は流れが急で」

「そうだな、そうらしい」


 雷斬は伝えるのが少し遅れてしまった。

 そのせいでNightは唇を噛む。

 私は心配すると、Nightに声を掛けた。


「大丈夫、Night?」

「ああ、問題ない」


 簡易発の所で下唇を噛んだらしい。

 おかげで舌を噛まずに済むと、雷斬に的確な指示を出す。


「雷斬、端に寄せすぎるな。下には石も多い」

「石ですか? 本当ですね。気を付けます」


 川の端には大きめの岩……ではなく、石が転がっていた。

 上流のせいかまだ削れていない。

 オールが当たるだけじゃなくて、筏の底面も危うい。


「この辺りの流れは不安定ですね。難しいです」

「おまけにこの川は深いらしい」

「そうね。手伝う?」


 川は思った以上に深い。

 浅瀬じゃないので、転覆したら命が危ない。

 流石に一人に任せきりはよくないだろうと、ベルは雷斬を手伝おうとする。


「大丈夫ですよ、ベル。このくらいは造作もありませんから」

「いや、そう言うことじゃないんだけど……」


 けれど雷斬は断ってしまった。

 自分の身の安全のためにも手伝おうとしたのだが、逆効果になったらしい。

 頭を掻き視線を下へと落とした。


「あはは、でも楽しいよー」

「そうだね。今の所は……うへっ!」


 私は楽しそうにするフェルノに同調しようとする。

 確かに今の所はちょっと楽しい。

 だけどそんなことも言ってられない。急に流れが無性に速くなる。


「な、なにこれ!?」


 ちょっとだけパニックになる私。

 筏がクルクル回転している。

 安定のために付けられたアウトリガーが機能してない。


「くっ、流れが急に……」

「雷斬、体重を落とせ。それと内側に入れ。振り落とされるぞ」

「はい。そのさせていただきますね」


 雷斬のオール捌きが通用しなかった。

 簡単に流れに飲み込まれてしまい、危うく筏から落ちそうになる。

 何とか耐え抜いたはいいものの、まともな制御はできない。


「これはスリルがあるな」

「あるにはあるけど……」

「本当に試乗したのかしら? 怪しくなって来たんだけど」


 確かに怪しい。こんなスリル求めてない。

 筏が流れに任せ、上下運動を始める。

 グワングワンと揺れると、大量の水が覆い被さる。


「冷たい!」

「クソッ、シートの一枚くらい出してくれないのか」

「最高―。超―楽しいー」


 水浸しになる私達。Nightの文句も口から溢れる。

 それでもフェルノは楽しそうで、スリルを満喫していた。 


「の、呑気ね」

「あはは、フェルノはいつも通りだから」


 ベルは呆れてしまう。もちろんそうなるのは分かる。

 フェルノは絶叫系が大好き。

 とにかくスリルが良いアクセントになっているだけだ。


「だけどまだレジャーって感じだよね」

「そうだな。アレを見ても言えるかは微妙だが」

「アレ?」


 私も安堵していた。このくらいならまだ妥協できる。

 そう思ったのも束の間。

 視線の先をNightが教えると、そこには巨大な岩が立ちはだかる。


「ま、真ん中に大岩!?」

「ぶつかるな。このままだと」

「では避けましょうか。端に……あれ?

「無理だ。端の方がこの川の流れは激しい。持っていかれるだけだぞ」


 真ん中には大きな岩。丁度筏の進路だ。

 このままだとぶつかってしまう。

 雷斬は端に避けようとするけど、上手く筏が動かない。


「ど、どうするの、Night!?」

「今考える。とりあえず壊すのが早いが」


 Nightは知恵を絞った。いつものように何か出してくれる。

 そう期待したけれど、雷斬が何故か阻んだ。


「Nightさん、待ってください。ここは私が」


 何か考えがあるらしい。

 一体何をする気なんだろう?

 ぶつかるまでもう時間が無く、私は不安になる。


「なにをする気だ?」

「こうさせていただきます!」


 そう言うと雷斬はオールを深く水底へ差し込む。

 一体なにをする気なのか。私は不安になってしまう。

 目の前には大岩。ぶつかったらただじゃ済まない筈だけど、雷斬は冷静だった。


「このまま軸にして……はい」

「「「うわぁぁぁぁぁぁ!?」」」


 筏がグルンと一回転する。

 雷斬の突き立てたオールを中心に、クルンと一回転してしまう。

 筏がクルクル回り出すと、私達は悲鳴を上げた。


「目、目が回るよぉ」

「あはは、最高のスリルだねー」

「皆さん済みませんでした」

「それは先に言って欲しかったわ」


 一応助かったけれど目が回っちゃった。

 おまけに筏の方向が前後逆になる。

 波に煽られ、流れに沿わない。私達の乗る筏は危機に瀕していた。

 そう、操縦ができなかった。

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