◇130 難有りのレジャーに大変身
はい、ヤバい奴。
現実だと営業停止の奴。
私とフェルノはギルド会館にやって来た。
何しに来たのかって? もちろん依頼を受けに来た。
早速クエストボードに寄って行こうとすると、奥の受付で受付嬢のNPCの一人、ミーNaさんが地獄みたいな顔をしていた。
「ねぇ、アキラー。ミーNaさんがなにか困ってるよー?」
「そうだね。なんだろう?」
ジッと視線を配っていると、ミーNaさんと目が合っちゃった。
すると視線が一切外れてくれない。
ガンを飛ばされると、私とフェルノは逃げられない。だって、目を逸らしたらヤバい。
「あっ、手招きしてる」
「来てってことかな?」
「かもねー。どうする? 行ってみる?」
「ど、どうしよう」
困る私達。しかしミーNaさんが一生懸命、周りからの目もくれない。
恥ずかしさを隠しながら、私達に手招きをし続けている。
これはあれだ。行ってあげないと可哀そうだ。
「行ってみよっか?」
「えー、面倒な奴かもだよー?」
「で、でも、行ってみよう!」
私はフェルノを無理やり引き連れ、ミーNaの元に向かう。
するとミーNaは安堵したのか、ホッと一息。
それからキリッとした顔をする。今更やっても遅いとは言えない。
「ミーNaさん、なんですか?」
「丁度良い所に来ていただけましたね」
「「丁度良いとは?」」
なんだか上手く都合に合わされた気がする。
私とフェルノは顔色を顰めてしまうと、眉間に皺が寄る。
それから何処からともなく二枚の紙を取り出すと、私達に差し出す。
「こちらの紙を見ていただけますか?」
「もう渡してるじゃないですか」
「そうですね。もう渡しています。それでどうでしょうか?」
「ど、どうって言われても……楽しそうですね」
私はちょっとだけツッコんだ。
するとミーNaさんはテキパキと返した。
私とフェルノは一応手渡された紙、というか用紙に視線を移すと、可愛い絵が描いてある。
「可愛い絵ですよね」
「ありがとうございます。その絵、私が描いた訳ではありませんよ」
それは自信満々に言うことなのだろうか?
私は固まってしまうが、フェルノは笑みを浮かべる。
「すっごい! すっごく面白そー」
「そうですか!? ありがとうございます」
「これ、川下りだよね?」
「はい。ギルドが管理しているダンジョン内で、今度川下りのイベントを開催しようと思っているんです」
それはとても楽しそうなレジャーだ。
私は応援しようと思ったが、ミーNaさんは顔色が悪い。
視線を背け、バレない様チラチラと視線を飛ばす。
「あ、あの、ミーNaさん?」
「実は、この企画には様々な問題があると、この間言及されてしまい」
「言及?」
「はい。……あの、皆さんにお願いしたいことがございます」
突然ミーNaさんは私達に頭を下げる。
なんでこんなことをされているのか分からない。
けれどとりあえず顔を上げて貰う。
「止めてくださいよ、ミーNaさん」
「そうだよー。こんなに楽しそうなのにねー」
「は、はい。実際、楽しい企画を考案したつもりでした。適度なスリルを味わいつつ、最後にはハッピーな思い出になるものにしようと、念入りに準備をしてきたのですが……」
ミーNaさんは歯切れが悪い。しかも私達に頭を下げている。
これはあれかもしれない。
ミーNaさん、私達に頼っている。
「お願いします、どうかお願いします!」
「落ち着いてください、ミーNaさん。一体なにをお願いしているんですか?」
私はミーNaさんに落ち着いて貰った。
けれど、一体何をお願いしているんだろう?
イマイチピンと来ないので、ここは確信を付く。
必要なのは意識を切り替えて、ピンポイントに訊ねること。
「そのレジャー、もしかして試乗試験していないんですか?」
「うっ……それは、その……」
私は一番訊いちゃマズいことを訊いちゃったらしい。
ミーNaさんは視線を泳がせる。
もしかしなくても、これはあれだ。私達に試乗試験をお願いしている。
「えっ、嫌ですよ」
「そこをなんとかお願いできませんか?」
「いやいやいやいや、試乗試験はダメですよね!? そこはギルド会館側がなんとかしますよね!?」
私はミーNaさんに頼まれても、流石にそれはできない。
何せそんな危険な真似を、私達はできない。
普通に考えて、ギルド会館側がやるべきだ。私は断固として拒否すると、もう一発喰らわせた。
「それになにより、試乗試験してないでレジャーをしようとしたんですか?」
「そ、そんな……ことは、ないのですけど」
「ええっ!? ちょっと待ってください。もしかして、試験して無いんですか!?」
「いえ、しました。一回はしましたよ」
「一回って……」
私は言葉を失ってしまった。
頭を抱えてしまいそうになるが、ミーNaさんはキョトンとしてしまう。
するとフェルノはニコニコ笑顔になり、ミーNaさんに詰め寄る。
「私はやりたいなー」
「えっ、やるの?」
「うん! でさ、ミーNaさん。ちゃーんとお代とポイントはくれるんだよねー」
「えっ?」
「ねー。ねー、ねー」
フェルノはトコトンまでミーNaさんを追い詰める。
グサリと胸を打つと、ミーNaさんは逃げられなくなる。
視線を左右に動かす。ここは応じなければならないと、切羽が詰まる。
「わ、分かりました」
「やりぃー! やったね、アキラー」
「う、うん。そうだね」
こういう時のフェルノは怖い。
ミーNaさんは逃げられなくなり、責任の全てを握らされる。
手綱を否応なく持たされると、私は憐れんだ。
「あの、ミーNaさん。ごめんなさい」
「い、いいんですよ。いいんです」
ミーNaさんは困り顔を浮かべている。
もう仕方が無いと、諦めてしまっていた。
私はフェルノに視線を飛ばすと、ニヤニヤ笑みを浮かべていた。
「ですが、くれぐれも気を付けてくださいね」
「き、気を付けるですか?」
「はい。アキラさんの言う通り、試乗試験はあまりしていません。というか、していませんので、くれぐれも安全に配慮してくださいね」
「どういうことですか!?」
ここに来てミーNaさんも最大の爆弾を投下する。
私は固まってしまうと、フェルノは肘を入れる。
「フェルノ?」
「なんかいいねいいね、楽しいねー」
「楽しく、無いよ?」
「スリルがあるねー。早速みんなに相談しようよー」
一番怖いのはソレだ。
きっとNightとベルにバンバン怒られるに決まっている。
私は今から弁明を必死に考えると、なんだか心が痛かった。
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