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◇13 青白鳥の女性プレイヤー

1-2の始まり。

まさかこんなに長くなるなんて……

 私はCUにログインして二日目。

 スタットを歩いてみることにした。

 如何やらここが中心になるので、色々散策しておいて良さそうだった。


「って言っても、何処に行こう」


 正直行く当てなんてなにも無かった。

 なにせ私はゲーム初心者。

 事前にネットで調べても来ていないので、予め用意されていた地図を使って、街の様子を確認する。


「えーっと、ここが噴水広場で、こっちに行けば大通りがあって、中央は円形で……本当に西洋みたい」


 如何にもこうにも、このCUというゲームは日本をモデルにしているらしい。

 しかしそれは大陸として見た限りで、スタット自体は日本の都市っぽくない。

 むしろテーマパークのような、それこそ日本の至る所に昔は合ったらしい、世界の○○村を模しているとしか思えなかった。


「今の時代、なんとか村って無いもんね……ってことは、ここはヨーロッパ村? なんてね」


 くだらないことを一人で喋っていると、何だか楽しくなってしまった。

 しかし道行く人達、NPCやプレイヤーの目が痛く刺さる。

 “あいつ、大丈夫か?” と言いたげで、私は冷ややかな目に遭った。


「……-っと、何処か面白い場所は……広いな」


 スタットの街は地図で見ただけでも思った以上に広い。

 そのせいだろうか。

 私は一日で回ることを早々に諦め、とりあえず噴水広場から伸びている道を行くことにした。


「あっち行ってみよう。なにかあるかも」


 私は座っていた広場ベンチから立ち上がった。

 お尻を軽く払うと、早速鋪装された道を行く。

 すると丁度のタイミングだったからか、噴水の水がブワッと上がる。


「冷たい! ……ヤバくない?」


 私はその瞬間気が付いてしまった。

 噴水の水が噴き上がると言うことは、大量の水が雨の様に注がれると言うこと。

 急いでこの場を離れよう。そう思った瞬間……にはもう遅かった。


 バシャ―ン!


 私は判断自体は早かった。

 だけど逃げるのが遅れてしまい、噴き上がった水が雨の様に私を覆う。

 服を濡らし、服を黒く染めると、肌を透かせた。

 散々だと思ったが、それでも大事な部分は見えていないので、ホッと一安心する。


「って、安心じゃない! 早く行って……うわぁ!」


 ボハッ!


「痛たたたたぁ……ごめんなさい、ぶつかっちゃって」

「ううん、私もぶつかっちゃったわ。こちらこそ、ごめんな……どうして濡れてるの?」

「あっ、それは、その……」


 私は女性にぶつかってしまった。

 鼻先をぶつけてしまい、微かな痛みで目を瞑る。

 すると女性は無傷だったようで私を優先的に心配すると、濡れていることに疑問を持たれた。

 恥ずかしくて薄ら笑いを浮かべると、視線の先にある、噴水が目に留まる。


「もしかして濡れちゃった?」

「は、はい……」

「そうなのね……えっと、それじゃあ」

「あっ、大丈夫ですよ。すぐ乾きます」

「ダメよ! 女の子なんだから、ちゃんと気にしないと」


 女性にそんなことを言わせてしまった。

 私は驚いて目を開けると、女性の全体像が浮かぶ。

 腰丈まである長い髪は青く、同じく聡明な瞳も青。

 スラッと伸びた手足に加え、脚を全て隠すロングスカートが目立つ。

 白と青を基調とし、何処となく清楚な鳥を思わせた。


「ちょっと待ってね、確か余ってた筈……はい、すぐにこれを羽織って」

「えっ、でも……」

「いいから、早く」


 私は女性に着るものを手渡される。

 如何やらジャケットのようで、色合いは地味な灰色。

 ファスナーが取り付けられていて、私は薄い肌着の上からジャケットを着た。


「あの……」

「うーん、ちょっと地味だった? ごめんなさい、今はそれしかないの」

「あっ、そんなことないです! むしろ着られるものを貸して貰えただけありがとうございます」


 私は女性に着るものを貰ったにもかかわらず、女性を申し訳ない気持ちにさせてしまった。

 なんだかやるせない。何とかして元気を出して貰おうとする。

 けれど女性は優しく、笑みを浮かべてくれた。


「今度返しますね! えっと……」

「私はソウラよ。Deep Skyのソウラ」

「Deep? 私はアキラです。あの、今だけ貸して貰えますか?」

「ええ、いいわよ。それよりなにか用があるの?」

「はい! 実は、ここに行ってみたくて」


 私は地図を見せると、女性はハッとなる。

 目を見開くと、ニヤリと笑みを浮かべる。

 何かあるみたいなので、私は女性に訊ねた。


「あの、ここってなにかあるんですか?」

「そこはね、掲示板があるのよ」

「掲示板? えっと、なんですか、それ?」


 私が今から行こうとしている道の先には、何やら“掲示板”があるらしい。

 ってことは単純で、プレイヤーやNPC同士で、連絡を取り合うのだろうか?

 私は考えを膨らませると、ソウラさんは私に声を掛ける。


「アキラ、ジャケットは返してくれなくてもいいけど、掲示板を見つけたら、灰色の爪っていうアイテムを欲しがっているプレイヤーがいるみたいなの。私の知り合いの依頼だから、代わりに受けてくれない?」

「えっ、ええっ!?」


 如何してそんなお願いをするんだろう。

 私は困惑してしまうが、ジャケットを借りたのは事実。

 それに別に迷惑な話じゃない。

 私は「は、はい……」と呟くと、ソウラさんのニコリと笑った。


「それじゃあお願いね。あっ、フレンド登録でもしない?」

「な、なんですか、急に……怖い」

「えっ、私は繋がりを大事にするだけよ。どうする、アキラ?」

「えーっと(断れる雰囲気じゃない。断ったら、私ヤバい奴になっちゃう)」


 私は自分との間に折り合いをつける。

 散々悩んで五秒間。

 頭を悩まされてしまうも、ここはソウラさんの提案を飲むことにした。


「ソウラさん、フレンド登録ってどうやってすればいいんですか?」

「えっとね、メニューからフレンド登録を選択して、IDを送るを押して……」

「えっと、はい、これでいいですか?」

「うん。それじゃあ登録っと」


 ——フレンド登録を:ソウラに送りました——

 ——ソウラが容認しましたので、フレンドに追加されました——


「早っ!?」

「うんうん、これでフレンドね。それじゃあ依頼を受けてあげてね」

「わ、分かりました。じゃあソウラさん、また」

「うん、またね」


 私はそそくさと逃げるようにソウラさんから離れる。

 目の前の道に入り込むと、振り向くこと無く足早に去る。

 何だか変わった人とフレンドになっちゃったなと思いつつ、初めてのフレンド登録に内心では嬉しかった。




 噴水広場で私は不敵な笑みを零してしまう。

 というのも、今フレンド登録をした子が、あまりにも“都合の良いもの”を持っていたからだ。

 私は目を疲れさせながらも、フレンド登録できたことに安心すると、近くのベンチに腰を下ろした。


「ふふっ、あの子、きっと面白いわよ。私も期待しちゃうな」


 足をばたつかせながら、私は喜ぶ。

 まさかあれだけの物を持っているとは思わなかった。

 しかもかなり純粋でいい子だ。疑ってはいたものの、私の言葉を聞き入れてくれていた。


「なにかしてあげたいな。そうだ、今度会う時にでも……」

「あのー、ちょっといいですか?」


 私は頬に手を当てながら、アキラと仲を深めようと考えていた。

 もちろん私欲はある。けれどそれを抜きにしても、大事にしたい繋がりを見つけた。

 そんな折、ふと声を掛けられたので、私はビックリしてしまう。


「これ、あげます」

「えっ?」


 目の前に現れたのは女性だった。

 とはいえ、私と年齢はほとんど同じ、もしくは一つか二つ年下だろうか。

 まただきをして女性の愛らしい顔と声を凝すると、女性は手にしていた衣服を私に差し出す。


「あの、これは?」

「私が仕立てた物です」

「仕立てた? もしかして、生産系のプレイヤーさん?」

「うーん、まあデザイナーだからね。んで、今丁度優しくしていた貴女にプレゼント。これをあげるから、好きに使っていいよ」


 また突然の申し出だった。

 私は驚くというよりも恐怖心の方が先に過る。

 何せ突然のことすぎて、頭の中では理解が追い付かない。


「好きに使うとは言っても……」

「売ってもいい、あげてもいい、自分で使うでも構わないよ」

「とは言っても……確かにデザインは良いですけど……えっ!?」


 私は仕立てられた上下セットの衣服を見る。

 完全にオリジナルなもので、シミ一つも無いことから、くまなく見て回る。

 するとアキラにピッタリな色合いと丈だと気が付く。

 頭の中で点と点が繋がり、私はハッとなる。


「もしかして彼女に?」

「ん? 彼女って」

「……いえ、なんでもないですよ。わかりました、ありがたく頂くわね」


 アキラのことを言っているのかと思った。

 しかし当の本人にその気は無いらしい。

 単なる偶然? 不思議に思うも、ここは貰っておこう。


「うん、真っ当な人の下に行くようにしてあげてね。それが私のマジカルだから」

「マジカル? ……えっ、まさか! いない……」


 顔を上げると、そこに女性の姿は無い。

 キョロキョロ周囲を見回しても姿も形も無いのでログアウトされたらしい。

 それを解って上でだけど、私は仕立てられた衣服を観察。

 すると裏には刺繍が施されていて、特徴的な綴りが縫われていた。


「やっぱり、ってことはさっきの人は……まさかこんな所にいるなんて」


 私は口を開けたまま開かなくなり、手のひらで覆った。

 それだけ凄い人だと気付いてしまい、私は驚きが止まらない。

 けれどお礼を言う前に本人はいなくなってしまい、私は脳裏が霞む。

 受取ってしまった以上、返す手段は無く、私は特徴的な言葉と共に、もの凄い思い出へと昇華されることとなった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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