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◇128 風は誘われて

新しい仲間は風のように。

「ってことになったんだけど」


 私は必死に事の顛末を報告した。

 するとNightは険しい表情を浮かべる。

 眉間に皺が寄り、足踏みを何度もしていた。


「一体なにがあってこうなったんだ?」

「それは……私にも分からないけど」


 確かに私にも分からないし、Nightが言いたいこともよく分かる。

 依頼人(クライアント)の要望を完全に無視したデザインだ。

 無難を通り越していて、もはや言葉も出ない。


「分からないで済む話か?」

「ごめんなさい」

「お前が謝ってどうする。はぁ……まあ、無いよりはマシだな。それに、この椅子はかなり出来がいい」


 とりあえずここは“仕方が無い”で諦めることにした。

 Nightは落胆してしまうが、唯一優れているものがある。

 リビングに大量に運び込まれた家具の中、椅子だけはデザインも機能性もマッチしている。


「いいよねー、カラフルでー」

「うん。みんなのイメージカラーにピッタリだよね」


 しかも何が良いって、とにかく椅子のカラーバリエーションが高いこと。

 シンプルな色合いだけど、それぞれのイメージカラーに合っている。

 私がピンク、Nightが黒、フェルノが赤で、雷斬が黄色……それから。


「そうだな。とは言え、こんなには要らなかったが……」

「「あっ」」

「まあ、適当な部屋にでも押し込んでおくか」


 しかし目の前に置かれている五脚の椅子。

 これだけではなく、もっと大量の椅子が用意されている。

 今は適当に使っていない部屋に押し込んで見ないふりをしているけど、いつか座ってくれる人が現れたら嬉しい。


「でだ……どうしてお前がここにいるんだ?」


 そんな中、Nightの視線が外れる。

 一体誰に向いたのかと思えば、雷斬と一緒に将棋を楽しむ少女。

 彼女の名前はベル。今回助っ人として活躍してくれた、雷斬の親友だ。


「……ん?」

「お前だ、ベル」


 Nightはベルに訊ねた。

 するとベルは自信満々に胸を張る。


「決まってるでしょ? 私、〈《継ぎ接ぎの絆》〉の一員なのよ」

「……ん?」

「あれ、知らなかったの? ふぅーん、遅れてるわねー」


 ベルはNightをイビり倒した。

 するとNightはばつが悪くなり、私を睨んだ。

 なんで睨まれるの? 確かに何も言ってないけど。


「ごめんね、でもあの流れがあったら……」

「流れだと?」

「そうよ。あのまま放任してたら、私の現実、バラされるかもしれないでしょ?」

「ん?」

「だから、私は食い止めるために、自分で食い止めることにしたの。分かるわよね?」

「おまえ自身が口封じに動く……ってことだな」

「正解。分かってるじゃない」


 ベルは自信満々にNightと指を突き付けた。

 するとNightはジロッと私のことを睨む。

 相談しなかったのが、そんなに嫌だったのかな? でも私はいいと思う。


「私はいいと思うよ? だって楽しいから」

「楽しい、だと?」

「うん。たくさん仲間が増えたら、友達が増えたってことでしょ? 私は好きだよ」


 Nightには正直縁遠い話だと思う。

 そのせいか、やっぱり分かってもらえない。

 溜息を付かれてしまうと、私は一応弁明する。


「だ、だって、あの流れがあったら……」

「分かった分かった。話は分かった」


 多分Nightは話が分かっている。

 けれど納得してはいない。

 私は視線をキョロリと配ると、ベルの顔色を窺うNightが居た。


「ベル、お前はギルドに入ったんだ。分かっているな?」

「分かってるわよ。“仲良く”でしょ?」

「“仲良く”……なんだ、その方針は。誰が決めた」

「「「(ピシッ)!」」」

「お前か……」

「だって!」


 全員から指を指されちゃった。

 Nightも睨んで来る。怖い。

 私にだって言い分はある。どんなことでも、賛否があるのは大事。

 だけど“仲良く”ないと、何もできなくなっちゃう。


「“仲が悪い”よりも“仲がいい”方がいいでしょ!」

「それはそうだが、極端だろ」

「そうだけど、そこはノリで考えてよ!」

「お前、私にノリを求めるのか? はぁ、お前な」


 Nightは呆れてしまった。如何して呆れちゃうんだろう?

 私は疑問に思うけど、やっぱり私がやることは変らない。

 Nightの手を掴んで、ベルの手を掴んで、互いの目をジッと見る。


「な、なんだ?」

「なによ、なにか文句でもあるの?」


 私はなにも言わないし、言い返さない。

 ただ二人の目をジッと見つめる。

 鋭い眼光とかじゃない。ただただ見つめていると、二人は照れ顔を浮かべる。


「ああっ、その……な」

「恥ずかしいわね。見つめられるの」

「ごめんね。でも、二人なら分かるでしょ?」


 私はアバウトな回答を返した。

 Nightもベルも悪い子じゃないし、むしろいい子だ。

 だけど継ぎ接ぎらしい。個性が(スーパー)にバラバラで、個性的なだけだった。


「はぁ。お前、どんなカリスマ性を持っているんだ」

「そうね。仕方ないわね」

「仕方ないって?」

「「さては、気が付いていないな」いないわね」


 私のカリスマ性なんて似合わない。もちろんそんなものは無い。

 だけど二人は私を見て諦めてしまうというか、馴染んでしまった。

 なんだろう? なんでだろう? 私は分からない。


「それではベルはどの席に座りますか?」

「座るって?」

「イメージカラーですよ。ベルのイメージカラーは確か」


 ベルは誘導される間もなく、五脚ある椅子の内、一つを取る。

 それは緑色の席だ。

 誰が何と言おうと、ベルは緑。それが風に誘われた、ベルらしい。


「ってことで、今日からよろしくね」

「うん、よろしく」


 もはやベルは仮面を被っていない。

 完全に素の状態を取り戻すと、ベルはニヤリと笑みを浮かべる。

 最初からそれでよかったのに。優しい風が撫でるように吹き、私達は新しい風を手に入れた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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