◇127 個性的な家具
売れない訳です。
需要も無ければ供給も無いから……悲しい。
「ソウラさん、ピー子さん、マンディさん、いますか?」
私はアイテム屋:Deep Skyにやって来た。
カランカラーンと鈴が鳴ると、ソウラさん達の名前を呼ぶ。
「あら、アキラ?」
「こんにちは、ソウラさん」
カウンターの裏に居たのはソウラさんだ。
作業をしていたみたいで、汗を掻いている。
私は丁寧に挨拶を交わすと、ペコリと礼をした。
「あの、マンディさんは?」
「マンディなら……」
「はいはいはーい、ここにいるよー!」
まずはマンディさんを呼んでみることにした。
もしかすると今日はいないかもしれない。
私はそう思いキョロキョロすると、マンディの声が聞こえ、突然抱きつかれた。
「マンディさん!? 何処に隠れてたんですか」
「そこだよー。私小さいからねー」
マンディさんに抱きつかれ、私は瞬きをしてしまった。
それから何処にいたのか尋ねると、人差し指を指している。
それは小さな木箱だ。
「は、箱の中?」
「うんうん。でさー、アキラー、なーに? 私に用?」
「えっと、はい」
マンディさんはハイテンションだった。
フェルノみを覚えるけれど、私はインベントリからアイテムを取り出す。
一旦離れて貰い、私はベルから預かったアイテムを取り出す。
「どうぞ」
「コレって……マジ!?」
マンディは受け取った箱を見て驚く。
中には超巨大なトンボ、メガビブラートが収まっている。
完全に息絶えていて、標本の状態にされていた。
「コレって、例の奴だよね?」
「はい。例の奴です」
「マジかー。凄―い、凄い」
マンディさんは子供のように喜んでくれた。
大学生でも子供の純粋な気持ちを持っている。
とってもいい子でいい人だって私には伝わる。
「あっ、でも翅が」
「あっ、えっと、その……」
マンディさんは見逃してくれなかった。
私は生きが詰まりそうになり、目が泳いだ。
やっぱりそこは気を遣うよね。私は目を瞑る。
「ごめんなさい、そこだけ傷付いちゃって」
「大丈夫だよー。これ喰らないなら問題なっし!」
マンディさんは寛容的だった。
正直コレクターなら激怒ものだと覚悟していたけれど、一安心できて喉が通る。
「あー、本当よかったー。私の単位も無事取れそうだし、夏休みは安泰だねー」
「夏休み……そっか」
今は七月。早いものでもうすぐ夏休み。
特に予定は決めていないけど、どう過ごそうかな。
自分の話になり、私は考え事をする。
「(コホン)それで、マンディはこれでいいのよね?」
「うん。最高だよー」
「そう。それじゃあアキラ、こっち来て」
「ソウラさん?」
何故かソウラさんに手招きされる。
私は恐る恐るソウラさんの元へと向かう。
「ピー子が呼んでるから会わせてあげる。付いて来て」
「ソウラさん? うわぁ!」
私はカウンターの裏に招かれる。
一体何があるのかな? 私は想像していたものを見つける。
カウンターの裏には階段が螺旋に続いていた。
「螺旋階段。しかも地下行き?」
「さぁ、付いて来て。暗いから、手すりに掴まってね」
「は、はい!」
ソウラさんが先に行ってしまう。
私も手すりを使い、慎重にソウラさんに続いた。
「暗いですね。もしかしてこの奥に?」
「そうよ。ピー子の作業部屋があるの」
「作業部屋……入ってもいいんですか?」
この奥にはというより下にはピー子さんの作業部屋があるらしい。
“作業部屋”、普通に入っちゃいけ無さそう。
私は怒られないかとビクビクするが、ソウラさんは笑みを浮かべた。
「いいわよ。なんたって、大切な顧客だからね」
ソウラさんの口から出た真。
とても便利で使い勝手のいいテンプレワードだった。
「凄い便利な言葉ですね」
「ふふっ、そうね。さぁ、見えて来たわよ」
当り障りのないツッコミをしてしまう。
するとソウラさんも笑って誤魔化し、真下に光が見えた。
如何やらこの先が作業部屋らしく、意外に地下は深くない。
「これなんですか?」
「それは運搬用の装置よ」
「そ、装置? ですか?」
一番下まで降り、作業部屋を目の前にした。
しかし私は気になる物を見つける。
何故か螺旋階段の真ん中、空いた部分に円形の箱が置かれていた。
如何やらこれは大掛かりな装置らしい。
見た目的にも私はアレを思い出す。
「エレベーターみたい」
完全にエレベーターと言いたいけれど、ワイヤーもない。
こんなの如何やって動かすんだろう?
不思議になる中、ソウラさんは作業部屋のピー子さんに声を掛けた。
「ピー子、アキラが来たわよ。入ってもいいわよね?」
「いい」
「アキラ、付いて来て」
私はソウラさんに通された。
今の「いい」がどっちなのかは分からないけど、とりあえず作業部屋に入る。
待っていたのは中央の椅子に座るピー子さんの姿。それから大量の素材に、大量の道具。
完成した家具達がズラリと並んでいた。
「アキラ、やっと来た?」
「ごめんなさい。ピー子さん」
「別にいい。それより、どう?」
「うわぁ、凄いですね。なんだか、その、えっと」
私は言葉に迷ってしまった。何せ思っていた家具と全然違い。
というのも、もっとベタな木製家具だと思っていた。
けれど目の前に現れた家具はそんなことは無く、その、全部が機能性は高そうだけど、デザイン面で個性が光っていた。
「いいでしょ? かなり丈夫なものにした」
「は、はい?」
「デザイン面も苦戦した。せっかくならいい物の方がいいと思った」
「あっ、はい」
ピー子さんは自信満々だ。流石にこれだけ笑顔の人の前で、「これじゃない」とは言えない。
私は困り顔を浮かべ、視線を逸らしてしまう。
けれどソウラさんは気が付いていた。私の脇をツンと突く。
「ピー子はコレだからね」
「あはは、えっと、でも嬉しいです」
実際家具を作って貰えたのは嬉しい。
何せギルドホームに家具は無い。
デザインがマッチしていなくても、無いよりはマシだ。
私はそんなことは言い出せないが、それでもできるだけ相手を傷付けない言葉を選んだ。
「そう? よかった。結構いいでしょ?」
「あっ、はい!」
「お代はタダでいい。けどお願いがある」
「お願いですか?」
「うん。また家具を作らせてほしい。私の可能性、もっと伸ばしたいから」
とんでもない提案をされてしまった。
正直返答は……まぁ言えないよね?
私は「あはは、じゃあ」と遠慮をしつつも、これからもピー子さんに頼むことになった。
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