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◇126 仮面が剥がれて

早めにバラします。

「なんとか倒せたね」


 私達はメガビブラートを何とか倒した。というより動けなくした。

 そのおかげか、消滅することは無く無事に採取完了。

 これにて依頼終了だ。


「そうですね、アキラさん」

「うん。ところでベル、それ苦しくない?」

「はい?」


 メガビブラートを倒した余韻もそのまま。私はベルに訊ねる。

 けれど意味不明過ぎたのか、噛み砕かないといけない。

 ベルは首を捻り、頭を抱える。


「ベル、無理してるよね? 少しだけ素が漏れてたから」

「はっ!?」


 またベルの素が見えた。だけど今度は一瞬だ。

 目を見開いてこの世の終わりな顔をする。

 挙動不審すぎて、何だか目に焼き付きそうだ。


「……」

「ベル?」

「……」

「あれ、戻るの?」


 何故か無言になられてしまった。なんだろう? 私、マズいことでもしちゃったのかな?

 正直に言っただけなのに、こんなことになるなんて。

 私が必死に呼びかけても、ベルはまるで聞こえていないふりをする。


「アキラさん、皆さんの所に戻りましょうか。そこで話します」


 ベルの空気が変わった。

 倒したメガビブラートを回収し、箱の中に納めると、インベントリの中に仕舞う。

 顔を伏せたまま、私と一切目を合わせてくれない。ただ言葉だけがシットリしている。


「分かった。って、ちょっと待ってよ!」


 ベルは私を置いて先に行ってしまう。

 慌てて追いかけると、背中から溜息が見える。

 何か隠したかったことでもあったのかな? バレバレだったとは、流石に口が裂けても言えない。


「あっ、皆さんが戻られましたよ」


 出迎えてくれたのは刀を手にした雷斬。

 今すぐ鞘から抜きそうな勢いで、全身がビリビリしている。


「以外に早かったな」

「うん。なんとかなったよ」

「ってことはー、無事に倒したの?」


 Nightとフェルノも心配してくれていた。

 けれど意外に早かったらしく、キョトンとされてしまう。

 何だかやるせないけれど、私は気を取り直した。


「うん。ベル、標本を見せて」

「……」


 私はベルに標本を見せるようにお願いした。

 するとインベントリから箱を取り出す。

 巨大な箱だ。特注サイズで、中には超巨大トンボ=メガビブラートが収められている。


「なるほどな。損傷は翅だけか……翅だけか」

「あれ、ダメだった?」

「価値が……な。まあいい、今回品質は度外視されている。上々だろ」


 コレクターの目線で見れば、これはダメダメ。

 翅は特に重要らしく、一部が完全に千切れている。

 標本としての勝ちは薄いそうだが、今回はこれでもOKなので、目一杯妥協する。


「やったー。じゃあこれでお終いだねー」

「はい。所でベル、先程からどうかされましたか?」


 フェルノは盛大に喜んでいた。今回ほとんど戦ってないけど、楽しかったらしい。

 よかったと胸を撫でる私だけど、その隣では雷斬がベルに問い掛ける。


「別に、なんでもないわよ」


 雷斬に諭され、ベルはやけになっていた。

 口調が荒々しく、本性が素顔を見せる。


「ベル、その口調」

「あーあ、なんで気が付かれちゃうのかしら? 本当、ファーストコンタクトでこれとか、絶対にバカ気てるわ。私の仮面と演技は完璧だった筈なのに。やっぱりアキラ、貴女異常よ」


 何故だろう。何故か分からないけど、私罵られている。

 それと同時にベルがようやく素を全開に現わした。

 退屈そうに頭の上で腕を組むと、鋭い目付きで睨まれる。

「全く、どれだけ鋭い洞察力なのよ。私、今までコレでやり通してきたのよ?」

「そんなこと言われても……」


 ベルにとってはとんでもない屈辱みたいだ。

 それにしても今までコレを続けて来たなんて、とんでもないメンタルだ。

 後、とんでもない技術だ。


「ベル、無理をされていたんですね」

「そうよ。でもアレは無理なんかじゃないわ。私の演技よ」


 雷斬もずっと気が付いていた。だからこそ心配していた。

 私に任せたのはそう言うことで、解放してあげてよかったのかな? と色んな意味で板挟みに遭う。

 そのおかげか、ベルは素を取り戻すが、同時に口調が散々だ。

 

「演技にしては随分と杜撰だったな」

「なっ!? まさか貴女も」

「当然だ。気が付かない訳ないだろ」


 そこに追い打ちを掛けたのはやはりNight。

 つい余計な一言を武器にベルを刺しに行くと、グサッと一突き。

 ベルと口論になるのは確実だ。


「はぁー……なんなの。なんなのよ、もう!」


 けれど打ちのめされたのはベルの方で、落胆してしまった。

 肩を落として立ち直れそうにない。

 背中が丸くなってしまうと、私は別に声を掛けようとする。けれどなんと声を掛けたらいいのかな? 全然分からなくてたどたどしい。


「あの、ベル。私は……」

「私は気が付かなかったよー」

「フェルノ、今はそれ所じゃないから」

「あれー?」


 このしんみりムードの中、たった一人切り裂く人が居た。

 フェルノは何一つとして空気を読まない。

 私が注意しても頭に?を浮かべていて、話が見えていないらしい。

 

 そうこうしている間に口を割って入ったのは、またしてもNight。

 心配になる私を尻目に、Nightの口は弾丸になる。


「それで、あの下手くそな演技がなんなんだ?」

「下手くそは余計よ。でも仕方ないわね。バレちゃったんだから……チッ」

「「「舌打ち!?」」」


 絶対に言っちゃいけない言葉を吐いた。

 多分意味を求めちゃいけない所に首を突っ込んだ。

 本当に容赦がないNightに、ベルは腹を立てて舌打ちする。


「はぁー……私は昔からこうなのよ。自分のブランドを崩さないために、こうやって演じて来たの。普通バレないのに、貴女達には通用しなかったけど」

「ベル……ごめんね」

「謝らないで。はぁ、バカらしいわ」


 ベルにとって仮面を被った演技は、自分自身のブランドを守るためだった。

 確かに世の中の多くの人が、他人の顔色を窺って、都合のいい仮面を被る。

 そんな生き物だって、お母さんから聞いて来た。ここにいるメンバーが普通じゃないだけで、この国の人のほとんどはこうかもしれない。


「ベル、ごめんなさい」

「謝らないでよ。私が惨めに見えるじゃない」

「ベル、本当に……」


 私はひたすらベルに謝る。それくらいしかできない。

 ここまで必死に頑張ってきたベルの努力を無駄にしてしまった気になり、私は自分を戒めた。


「もういいわよ。それよりさっさと帰りましょ」

「ベル?」

「バレちゃったものは仕方が無いわ。予定変更よ、ここからは別プランで行くわ」


 一体なにを考えているのかな?

 とりあえず怒られずには済んだけど、ベルは新しい作戦を考えている。

 背中からはショックが伝わる。同時に何か解けたような気になってしまい、複雑化した感情に頭をやられた。


「よかったですね、ベル」

「雷斬?」

「皆さんありがとうございました。これでベルも少しは」


 何故か雷斬は嬉しそうにしている。

 きっと二人にしか分からない何かがあるんだ。

 私達はポカンとしてしまうが、ベルの後を追うように、街へと帰った。

【ステータス】


■ベル

性別:女

種族:<シルフィード>

LV:9

HP:180/180

MP:180/180


STR(筋力):50/50

INT(知力):55/50

VIT(生命力):50/50

AGI(敏捷性):70/50

DEX(器用さ):90/50

LUK(運):50/50


装備(武器)

武器スロット:〈蜻蛉翅〉


装備(防具)

頭:

体: 〈妖風のブラウス〉

腕:

足: 〈妖風のタイトパンツ〉

靴: 〈妖風のブーツ〉

装飾品:


種族スキル:【風招き】

固有スキル:【仮面装着】

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