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◇125 翅音が止んだら

まだ役に立たないスキル。

 何とかギリギリ間に合った。

 ベルがメガビブラートに襲われていたから慌てて飛び出したけど、何とか無事に助けられた。私はホッとすると、ベルに声を掛ける。


「間に合ったよ」

「間に合った……ですか?」

「うん。なんだか嫌な予感がしたからね」


 私はベルが心配でやって来た。

 如何やらその予感は的中したみたいで、メガビブラートが好戦的だ。


「あの、アキラさん。今、私の……」

「そんなこといいよ。それより戦える? それとも逃げる?」


 ベルが何か言おうとしたから、私は口を差し止めた。

 代わりに二つの選択肢を投げ掛ける。戦うor逃げる。

 どっちも間違っていないけれど、ベルは即答する。


「……逃げませんよ。私を虚仮にしたんですから」

「そっか。それじゃあ、頑張ろっか」


 ベルは何だか苛立っていた。それが本当のベルなのだろうか?

 私には分からないけれど、戦うなら頑張る。私ができるのはそれくらいだ。


「それっ!」


 先に仕掛けたのは私。【キメラハント】で【甲蟲】を発動し、いつものように殴り掛かる。

 けれど攻撃は空振り。

 メガビブラートは悠々と躱してしまう。


「あれ?」

「やはり速いですね。では!」


 空ぶってしまった私を援護してくれるベル。

 矢を番えると、弦を引き寄せて一射。

 真っ直ぐに飛ぶ矢は空気の抵抗を失い、メガビブラートを襲った。


「チッ、外しましたか。ではこれでどうですか!」


 けれどメガビブラートはこれすら優雅に躱す。

 四枚の翅を上手く使い、空中に停滞。

 スライド移動を駆使してホバリングすると、簡単に避けられてしまった。


パシュン!


 空気が渦を巻き、風穴を生み出す。

 もちろん目では追えないし、見ることもできない。

 けれど確かにそこにあり、風が渦を巻き上げる。


「【風招き】。放て!」


 矢を放つと、風穴の中に吸い込まれる。

 私は矢が異常な軌道を走る姿に慄く。


「な、なにこれ?」


 人間技じゃない。もっと高度な、高次元の技術が披露される。

 流石にこれにはメガビブラートも驚愕。

 かと思えば、四枚の翅を巧みに操り、体を浮上させた。


「あっ、また逃げちゃう!」

「上昇気流を使いましたか」

「上昇気流?」


 確かに風が浮き上がっている気がした。

 自然と体が浮き上がりそうな程、風力は強い。

 もしかすると、もしかする。私はバカみたいな作戦を考えた。


「ベル、私を飛ばして!」

「はい?」

「いいから、私が仕留めるから」


 これは今の私にはできない。今持っている私のスキルじゃ無理。

 だからベルを頼ると、意味不明な顔をする。

 「なんだコイツ」とか言いたそうな程、眉間に皺が寄っているけど、私も本気だ。


「お願い、ベル!」


 私は必死に頼み込んだ。

 あまりにも無謀なことは百も承知。でもこれくらいしかできない。

 その意図を組んでくれたのか、溜息を付かれる。


「はぁー……分かりました。ですがくれぐれも怪我はなされないように」

「ありがとう。せーのっ」


 ベルは迷った末に私にも風を招いてくれた。

 忠告を聞きつつ、体の周りを風が覆う。

 感触として肌に伝わると、フワリ地面から足が離れた。


「うわぁ、私浮いてる!? いや、飛んでる!」

「アキラさん、この状態は長く持ちませんよ」

「分かったよ。それじゃあ……えいっ!」


 体が宙に浮かび上がり、自由自在に空を飛ぶ。

 だけど体幹が強くないと全身を持っていかれそうになる。

 それくらいの強風に、現実では絶対に真似しちゃいけないし、できないって分かった。


「なっ、風穴の中に!?」

「そうだよ、後はこの状態で……翅だけを狙って」


 私の行く先は風穴の中。メガビブラートを標的に定めた。

 風穴の頭上に行くと、もう風が残っていない。

 つまり下は丸見えで、メガビブラートの姿が簡単に見つかる。

 この状態で私は見たいもの。それは翅の位置だ。


「【キメラハント】+【灰爪】+【熊手】」


 【キメラハント】を発動。今回は【灰爪】と滅多に使わない【熊手】の出番だ。

 すると私の両手が巨大化し、分厚い皮と毛に覆われる。

 ここだけはいくら風が当たっても痛くない。完璧に風を弾いていた。


「まさか、そのようなことは」

「します!」


 ベルは私の考えを読んでくれた。

 あまりにも無謀で、バカの一つ覚え。

 それでも私は宣言する。このバカな技をやると。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「まぁ、そうなるでしょうね!」


 ベルに散々ツッコまれてしまった。

 私は複雑に絡み合う風に巻き込まれてしまう。

 例えるなら洗濯機で、私は洗濯機の中にダイブしていた。


 だから発狂が止まらない。目が回って体が痛い。

 八つ裂きにされそうな中、この中を飛ぶメガビブラートの凄さを見る。


「で、でも! えいっ」


 私はメガビブラートを見つけた。

 つい目の前を悠然と飛んでいるので、私は【熊手】を使って風を押しかえる。

 その間に鋭い灰色の爪が何をするのか。決まってる。動きを止めるんだ。


「そこだっ!」


 私は爪を尖らせ、鋭く突き出す。

 メガビブラートもこの上昇気流を上手く使っている身。

 簡単に避けれるかと思いきや、私が風を邪魔したせいで、微かにだけど動きがブレる。

 そのおかげか、私の爪が翅に届いた。ほんの微か、ほんの隙間に触れる。


「せーのっ!」


 爪で引っ掻くと、翅が一部千切れる。

 そのおかげか、メガビブラートは体勢を崩す。

 風穴の中上手く飛べなくなると、そのまま体を風穴の壁面に叩き付けた。


 ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン!


 断末魔のように翅が擦れる。

 いくら振動を送ってもここは風の中。

 これ以上変なことは起きないので、メガビブラートに生き残る術はない。


「ベル、もういいよ!」

「本当にいいのですか?」

「うん、大丈夫だから。【幽体化】」


 私は即座にスキルを発動し、風穴の影響下から外に抜け出す。

 メガビブラートだけが風穴の中に取り込まれると、ベルはスキルを解く。

 すると如何だ。風穴が消え、メガビブラートは逆さまに落下する。


 パサッ!


 そのまま奇跡的に草の上に落ちた。

 衝撃を吸収すると、メガビブラートは死んでしまうが、一応形は残る。

 最後に綱渡りをしてしまった私は、なんとかなったと安堵した。


「よっと」

「アキラさん!? いつのまにそこに」

「あはは、驚いたでしょ?」


 私も地上に降りてから【幽体化】を解く。

 突然消えたかと思えば目の前に現れた私に、ベルは驚いた。

 瞬きをして本物かと疑われるが、私は本物で本人だ。


「とりあえずこれでよかったかな?」


 私が不安になってしまう。何せまだ結果が出ていない。

 経験知的には美味しくないと思うけど、私は表示された画面に視線を奪われる。



——ドロップアイテム獲得! 古代トンボの標本を獲得しました——


 一番欲しかったアイテムがドロップした。

 私は苦労が実ったと、心底喜ぶ。


「やったぁ!」


——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しました——

——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、メガビブラート:【衝撃波】を追加しました——


 次いで私は新しいスキルまで手に入った。

 これは凄いいい結果じゃないのかな?

 私は達成感に仰がれると、いい気分だった。


少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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