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◇120 風の親友

いきなり口調が面倒臭そうに。

「と言うことがありました」

「ふーん、そう? で、なに」


 私はクラスメイトで親友でもある風見鈴忌(かざみすずき)にこれまでの話をしました。

 普段はしない会話でしたが、鈴忌は退屈そうに聞いてくれます。

 少しの興味も抱いて貰えていない。これだけでも好感度は低いのですが、鈴忌は口を開きました。


「それで私に手伝えってこと? 悪いけどパスね」

「どうしてですか? 鈴忌の腕なら」

「悪いけど私、知らない人と関わるの苦手なのよね。オンラインゲームだからって、ソロでやっちゃダメなルールなんてないわよ? だ・か・ら、私を関わらせようなんてしないで。斬禍だけならまだしも、そのよく分からないずっこけ三人と引き合わせないで欲しいわ」


 鈴忌は昔から頑固で、人好き合いが得意ではありませんでした。

 けれど雷慟山(らいどうさん)高校入学をきっかけにCUを始められました。

 私もそれに乗じて遊ぶようになったのですが、鈴忌は未だにオンラインゲームをソロで活動しています。もちろんその遊び方も正しいのですが、鈴忌にも()で楽しむという心を知って欲しいのです。


「強制はしません。ですが鈴忌は」

「風見、少しいいか?


 そんな中、お昼休みの教室に誰かが足を運びます。

 ふと視線を預ければ、担任の若宮先生でした。

 如何やら鈴忌に用があるらしいのですが、ここから鈴忌は仮面を被ります。


「はい、どうしましたか、若宮先生」

「鈴忌、また仮面を被りましたね」

「シッ、黙りなさい」


 鈴忌は私を模した仮面を被りました。

 これが鈴忌最大の武器であり、鈴忌の本質。

 仮面を被る(・・・・・)ことで何にでも(・・・・・・・)なれる特技(・・・・・)だ。


「若宮先生、どうしましたか?」

「実は次の授業で使う道具があって、一緒に取りに行って欲しいんだよ」

「若宮先生と言うことは、理科で使う道具ですね」

「ああ、そうだ。今日は薬品使わないからな。とりあえずビーカー類一式。っと、人手がもう少し欲しいな。雷、お前も手伝ってくれ」

「私ですか? 分かりました」


 如何やら人手がいるようなので私も手伝うことになります。

 すると明らかに鈴忌は嫌そうな態度を取りました。

 背中から薙刀のような殺気が飛ばされると、教室の中が静まります。


「ん? 今なにかあったか」

「なんでもありませんよ。それより斬禍、行きますよ」

「はい。あっ、若宮先生は?」

「私か? 私は……ふはぁ~、眠いから寝るわ。ってことで、二人に任せたぞー」

「「若宮先生!?」」


 若宮先生はいつでも何所でも眠れる人です。

 同時に夜型人間なので、昼間はとても苦しそうでした。

 そのため生徒を足代わりに使います。その癖はよくないのですが、気が付けば壁に体を叩き付け乍ら、白衣をゴシゴシ床に擦っていました。


「行ってしまいましたね」

「はぁ……斬禍、さっさと行くわよ。休憩時間無くなっちゃう」

「そうですね。では行きましょうか」


 鈴忌は私と歩幅を合わせてくれました。

 別に鈴忌は人付き合いが苦手なだけで、嫌いなわけではないのです 。

 必要とあればする。ですがその線引きが余りにもなので、誰かが仲介しなければ、いつかパンクしてしまいます。それが傷だと分かっているのですが、本人は頑ななので、こうして私が巻き込まれるのでした。そう、慣れている相手とであれば、鈴忌は素を見せてくれるのです。



「よっと」

「これで全部よね?」

「そうですね。それにしても数が多いですね」


 理科準備室から段ボール箱を拝借します。

 中には大量のガラス製ビーカーの数。

 一体なんの実験? に使うのかは分かりませんが、随分と古い物でした。


「分かってると思うけど、落としちゃダメよ」

「私が落とすとお思いですか?」

「思わないわよ。でもこんなことばっかり、本当疲れるわ」

「それは鈴忌が仮面を被るからではないでしょうか?」


 私は分かり切っていることを、容赦なく刀を振る様に伝えます。

 もちろん初対面の相手にこのような言い回しはしません。

 もっとやんわりと包み込むように。霞を切るようにですが、今は違います。


「鈴忌、本当に手伝ってはいただけないのですか?」

「しつこいわよ。なんで手伝わないといけないの?」

「鈴忌の腕が必要なんです」

「必要って、いい風に使われているだけじゃない!」

「そんなことはありませんから……」

「それに、斬禍が虫がダメで役立たずなだけでしょ!」

「うっ……」


 厳しい言葉が飛んで来た。矢で胸を貫かれた。

 私は確かに虫はダメです。まるで役に立てません。

 実際固まってしまったので、私は言い訳もできませんでした。


「ちょっと、マジでそうなったの?」

「……」

「呆れた。っていうか、虫がダメな子は多いからね。私も別に得意って訳じゃないから……で、早く口開きなさいよ!」


 流石に何も言い返せなくなるのは想定外でした。

 鈴忌も鬼じゃないし、自分が悪者になるのは嫌です。

 ワキャメキと叫ぶと、私は申し訳なさそうになりました。


「そうですよね。私がもっと頑張れば……」

「バカ、頑張ってどうにかなるものじゃないでしょ!」

「ですが」

「頑張って報われる世の中じゃないでしょ? ちゃんとやりなさい。考えるの、上手く行くにはどうすればいいのか、その過程を考えるのよ」


 鈴忌はてんやわんやだが、真面目に答えた。

 きっと私にはそれで響くと思ったのでしょうか?

 私は胸を撫でると、鈴忌は私のことを挙動不審に見つめました。


「とにかく、そのトンボ? 私に頼まなくてもなんとか出来るでしょ? はい、お終いよ」

「鈴忌、後でもう一度頼みに行きます」

「しつこいわね。私の気は変らないわよ」

「ですので気が変わるようにします。それでどうでしょうか?」


 あまりにも意味深な言葉を私が言ったので、鈴忌は眉間に皺を寄せます。

 けれどすぐに気を取り直してしまいました。

 確かに私が鈴忌を変えるには、鈴忌を引き入れるにはこれしかないです。なのでここは強引な手段を使います。


「はっ、いいわよ。それで気が済むならね」

「ありがとうございます」

「っと、こんなことしている場合じゃないわよ。早く準備して、残ったご飯食べないと」

「はい」


 何はともあれ約束は取り付けました。

 後私達がやるべきことは食事を摂ること。

 急いで教室に戻る私は、如何しようかと考えました。

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