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◇118 メガビブラート

全長1.5メートルを誇る巨大トンボ!?

「よっと!」


 フェルノは軽くジャンプすると、木の上にいた虫を捕まえる。

 やっぱり夏だからかな? カブトムシを簡単に見つけられた。


「見て見てアキラー、カブトムシ―」

「凄いね、フェルノ。それじゃあ私も。えいっ!」


 渡しは虫取り網を使って虫を捕まえる。

 スッと手首を捻り、逃がさないように引き寄せると、手元にはクワガタが飛び込む。

 サイズはそこまで大きく無いけど、とりあえず捕まえられた。


「おっ、アキラもやるねー」

「うん。Nightは……なにしてるの?」

「観察だ。私は虫に興味が無いからな」


 一方のNightは研究者っぽかった。

 捕まえた虫を手にすると、ガラス製の箱の中に移し生態を観察している。

 ジッと見つめていて、こっちに目を合わせてくれない。


「それにしても色んな虫がいるね」

「うんうん、タイコモリ―は凄いね」

「当然だ。古代種の植物が今も生きながらえている場所だぞ。多種多様に進化し続ける虫達が生息しているに決まっているだろ」


 私達四人はタイコモリ―にやって来た。

 ここは古代種の植物が今も残り続けている貴重な場所。

 スタットからは少し遠出したけれど、来た甲斐がある場所だ。


 もちろんこの森にやって来たのは、今の時期限定で大量発生しているらしい、メガビブラートを捕まえるため。

 巨大なトンボのようで、四枚の長い翅を使って高速飛行するらしい。

 おまけにとんでもないビブラートの持ち主みたいで、どんな見た目か楽しみだった。


「それで雷斬」

「はい」

「もしかして、虫ダメだった系?」

「……いえ、そのようなことは」

「無理しなくていいよー。だってさー」


 私とフェルノは虫は平気。Nightも触れるが興味が無い。三人が今時虫が大丈夫派だったけれど、一人だけ、雷斬だけ違った。

 虫除けスプレーを全力で吹き掛け、かなり遠い位置に立っている。

 明らかに虫がダメ系な人だった。


「白状しますが、はい。私は虫が苦手でして」

「そうなの?」

「我が家はそれなりに敷地面積があるのですが、その分も虫も多く、その……アレを見ただけで、私はその……」


 “アレ”の正体はまあ黒光りする“アレ”なんだろう。

 敢えて口には出さないことにしつつ、今回の雷斬は戦力にならない。

 休んでいてもよかったのにと私は気遣うが、それが余計に雷斬を傷付けてしまいそうで口にできない。


「そっか。それじゃあ待ってて」

「いえ、付いて行きます」

「ん? どうして」

「それは、その……一人だと、虫が、怖くてですね……」


 何だか雷斬がとっても可愛く見えてしまう。あどけない様子で、プルプル震える子犬の様。

 バカにしたら行けない。だけどつい笑ってしまう。

 滅多に見れない一面に触れつつ、Nightは先を急ぐ。


「さて、メガビブラートを探すなら急ぐぞ。奴は速いからな」

「やっぱり速いんだ」

「当り前だ。モデルが古代のトンボ、メガネウラだぞ」

「うーん、それは分からないけど、とにかく大きなトンボなんでしょ? 確か……」


 バサバサバサバサバサバサバサ!


「「「ん!?」」」


 突然波打つような変な音が聞こえ出す。

 耳障りで耳の奥をキンキン言わせ、私達はハッとなる。

 明らかによくない物が近付いている証拠で、私達は武器を構えた。


「今の音、聞いた?」

「うん、聞いた聞いたー」

「なにか来るな。気を付けろ!」


 バシューン!


 私達は身構えると、突然近くの木の樹皮が剥がれた。

 直接触れた訳じゃなくて、見えない何かに剥ぎ取られる。

 まるで音の波に浚われた(・・・・・・・・)様子で、鼓膜を叩いた。


「い、痛いとかじゃないけど、なにこれ!?」

「この先になにかいるな。くっ!」


 Nightは腰のホルスターから拳銃を取り出す。

 今回はリボルバー式のようで、一発パン! と発砲した。

 弾丸は目の前の道を抜け、その奥にいる何かを威嚇する。


 バキッ!


 木の幹に当たったような軽い音が聞こえた。

 如何やら標的を外したようで、Nightは舌を噛む。

 狙いは良かった筈。けれど音も大きく、簡単に避けられてしまった。


「クソッ、外したか」

「一体なにがいたの?」

「恐らくはメガビブラートだ。奴の高速移動は羽音にも通ずるからな。私の銃だと、音も大きくて届かない」


 Nightのその予想は大きく当たった。

 突然目の前の道を切り裂くように、耳障りな羽音が聞こえ出す。


 ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン!!


 今度は鼓膜だけじゃなくて脳が震えそうになる。

 頭を揺らされ、気持ちが悪くなってしまう。

 体勢を崩しよろける私達の頭上を、巨大な何かが悠々と超える。


「アレは……トンボ?」

「デカくね?」


 その姿は間違いない、紛れもないトンボだ。

 しかも私達の知っているトンボの大きさじゃない。

 大きくて気持ちが悪い。私達は目を見開くと、Nightは銃を撃つ。


「この距離なら……」


 パン! と発砲と同時に薬莢が飛ぶ。

 弾丸はメガビブラートを狙っては見たが、悠々と躱される。

 巨大にもかかわらずトンボの能力は健在で、圧倒的な動体視力に停滞飛行、なんだってできてしまい、弾丸は宙に消えた。


「ダメか」


 これはもう作戦とか云々の話じゃない。

 完全に野生に負けてしまっている状態で、打つ手がない。

 もちろんまだやりようはあったが、当の本人がもう動いてくれない。


「雷斬、お前のスピードで」

「……雷斬?」

「おーい」


 三人で声を掛けてみたけれど、雷斬は固まっていて動かない。

 突然現れたメガビブラートにビックリすると、意識が消失していた。

 ピクリともしてくれないのでコレはもうダメ。


「仕方ない。一旦帰るぞ」

「そうだね。このままじゃなにもできないもんね」

「雷斬、帰るよー」

「ああ……あああ」

「駄目かー。仕方ない。よいしょっと」


 雷斬は完全置物状態になってしまい、このままじゃ動かせない。

 フェルノは人形を抱きかかえるみたいに雷斬の腰に腕を回す。

 ゆっくり慎重に、パワーで雷斬を運ぶと、一時撤退することにした。


「Night、どうしよう?」

「捕まえられない相手じゃない。だが、戦力が足りない」

「うん。スピードが無いもんね、私達には」

「いや、速さよりも大事なのは正確性だ」


 Nightはメガビブラート攻略を見出している。

 そのためには〈《継ぎ接ぎの絆》〉に足りない部分が大きい。

 スピードよりも大事なもの、それは気が付かせずに捉える正確性だった。

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