◇116 家具作りの天才
リメイク元と少しだけ変えました。
私はアイテム屋Deep Skyにやって来た。
カランカラーンと軽やかな入店音と共にやって来ると、前以って連絡をして置いたので、ソウラさんに迎えられる。
「ソウラさーん」
「あっ、アキラ。待っていたわよ」
私はここまで一人でソリを運んできた。
本当はみんなにも手伝って貰いたかった。
けれどみんな予定があるみたいで、ましてやソウラさんに一人で来て欲しいと言われていた。そのせいで私一人で運ぶ羽目になり、店に着いた途端、ソウラさんにも手伝って貰う。
「うっ、重いわ」
「そうなんです、重たいんです」
「よいしょよいしょ。ふぅ、ありがとうアキラ。コレがシェルダーウッドなのね、初めて見たわ」
ソウラさんは少しソリを動かしただけで、額から汗を流す。
それを思えば、私の体中から噴き出る汗の量はとんでもない。
私はソウラさんからタオルを受け取り、全身ビショビショの体を拭いた。
「ふぅ。なんとかなりました」
「ありがとう、アキラ。それと〈《継ぎ接ぎ》〉のみんな」
「私からみんなに言っておきます。それより、どうして一人しかダメなんですか?」
私はソウラさんにどうしても気になったことを訊ねた。
するとソウラさんは店の中を見た。
今日も少しものが多い。この前より物が多い。なんだか狭い気がする。
「もしかして物が増えましたか?」
「そうなの。他のプレイヤーから買い取ったアイテムがそのままになっているから」
「確かにこれだと一人が限界ですよね」
「後、うちにはちょっと問題児がいて」
「問題児?」
私は誰のことを言っているんだろうか? そう思って首を捻った。
考え込んでしまうと、店の奥からカタンカタンと音がする。
一体何? と思った私は、急にソウラさんの背後に立った女性に驚く。
「うわぁ、だ、誰ですか!?」
「あっ、ピー子」
「ピー子? ピー子さんって誰!? 初対面ですよね」
「うるさい、ちょっと黙って」
私は口を噤まされてしまった。
だけどこの人は一体何? 何処から出て来たの?
色々考えてしまうけれど、少なくとも悪い人じゃないし、もしかしなくてもソウラさんの友達だ。
「(コホン)。上がうるさくて気になったけど、なにかあった?」
「ええ、貴女の欲しかった素材が手に入ったのよ」
「素材が!? その前に、私は問題児じゃない。もっと問題児は他にいる」
「気にしてたのね」
「当り前。それで、私の欲しかった素材って……あっ!」
内輪の話をしていたけれど、ピー子さんは急に目の色を変えた。
私が運んで来たソリを見つけると、上に積まれた大量の木材に視線を奪われる。
目がキラキラと輝くと、表面を優しく指で撫でる。
「いい、凄くいい素材。間違いなく最高品質のシェルダーウッド」
「えっと、この人が?」
「そうなの、私達の仲間で天才家具職人のピーコック。略してピー子、変わり者の職人よ」
「変り者……確かに?」
ピー子さんは私が運んで来たシェルダーウッドに見惚れている。
ウットリした顔をして、一向に離れる気配が無い。
ましてや下に敷いてあるソリにさえ興味を示すと、「おお……うぉう」と声にならない声を上げていた。
「凄い、凄くいい」
「あのー」
「ん? 誰」
「この子はアキラ。〈《継ぎ接ぎの絆》〉のギルドマスターで、シェルダーウッドを持って来てくれたうちの顧客」
ソウラさんの説明はほぼほぼ完璧だった。
だけど何だか引っ掛かる部分もあって、素直には喜べない。
蟀谷辺りを掻いてしまうと、ピー子さんは立ち上がって私の手を掴んだ。
「ありがとう。私はピーコック、ピー子って呼ばれてる」
「あっ、はい。私はアキラです」
「アキラ、ちゃんと覚えた。これだけの素材があれば、きっといい家具が作れる」
「家具を作るんですか?」
「うん。私は大学でも物を作っているから、なにかを作るのは好き。それじゃあ早速……ん?」
私はシェルダーウッドを手にして作業を始めようとする。
如何やらカウンターの奥に部屋があるらしい。
ソウラさん曰く地下室があるらしいが、行かれる前に思いだしたことを口走る。
「あの、ピー子さんって家具が作れるんですか?」
「作れるけど? あまり売れないけど」
「それは……あの、家具って作って貰えますか? リビングに置ける机と椅子。とりあえず色々一式」
私達は満島をギルドホームに使っている。
あの謎人工物を住処に使っているけれど、家具っぽい家具が何も無かった。
まるで研究施設。そんなんじゃ全然休まらないので、私達は考えていた。“生活感が欲しい”と。
「家具、作っていいの?」
「はい。お代は……相談ですけど、お願いできませんか?」
私はダメもとで頼み込んでみた。
正直自称でも何でも“天才”って言う以上、創作活動に撃ち込んでいる筈。
他人に構っている暇は無いってNightは総称していたけれど、ピー子さんは笑みを浮かべる。
「いいの、作って?」
「はい。あっ、個性的じゃなくて大丈夫ですよ。溶け込みやすく、使いやすいがいいんですけど……」
「注文は承った」
「承っちゃった!? あの、ソウラさんいいんですかね?」
私はトントン拍子な状況に慌てて、ソウラさんに尋ねる。
するとソウラさんは笑みを浮かべている。
如何やらOKらしいが、私は瞬きをしてしまい、逆にピー子さんに手を握られた。
「あの、やりすぎないでくださいね?」」
「任せて。最近は創作活動にも熱が入ってなかった」
「えっと、個性爆発だー、とかは無しな方向で」
「任せて、いいもの作るから。期待して、良いものだから」
何だかヤバい人に頼んじゃったかもしれない。
これも何かの縁だと思って声を掛けたのだが、目がギラギラしていて、私は圧を感じる。
もしかしなくても空気が重く、熱を帯びていて逃げられない。私は全てを一任することにし、「お、お願いします」と詰まり顔でそう言った。
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