◇114 雷を斬る者なり
四人目の仲間。
噴水広場にやって来た私達。
雷斬を捜してキョロキョロする。
すると特徴的な格好をした少女は目に留まる。
「あっ、いた」
雷斬は和のテイストが強い遺書に身を包んでいる。
雷をあしらった羽織を着ており、違いがすぐに分かる。
たくさんの人の中から見つけ出すと、私は声を掛けた。
「あっ、皆さん。足を運んでいただき、誠にありがとうございます」
雷斬は顔を合わせると、対面した瞬間から丁寧。
きちんと礼をすると、私達はにこやかに返す。
見習わないとなーと思いつつ、そんなことはさておきだ。
「私達を呼んだのには理由があるんだな?」
「はい。覚悟が決まりましたので」
「覚悟?」
ずっと気になっていた文面。“覚悟”ってなにに対する覚悟なのか?
私とフェルノは顔を見合わせると、雷斬は言葉を紡ぐ。
「単調直入に申し上げます。私を、皆さんのギルドに加えてはいただけないでしょうか?」
それを聞いた瞬間、頭の中が弾けた。
モワッと煙が充満すると、言葉の意味を理解するのに時間が掛かる。
けれど出た言葉は言葉じゃない。
「「「ん?」」」
言葉にもならない問いだった。
私達は言葉に詰まらせられてしまうと、雷斬が胸の前に手を合わせる。
「アキラさんは私を誘ってくださいましたよね?」
「うん。誘ったような気がするよ?」
「ですので悩んだ末に答えを出させていただきました。私でよければ、助力させていただきます」
話があまりにもトントン拍子に進んでいく。
けれど何処で捻じれてしまったのか、話が見えてこない。
とりあえず分かるのは、雷斬が私達のギルドに入って来ること。
だけどなんでそうなったのかな? 一番に気になっているのはNightらしく、眉間に皺を寄せた。
「どうしてそうなる?」
「と言いますと?」
「ギルドに入るのは構わない。とは言え、何故うちなんだ?」
「問題でもありますか?」
「あるだろ。お前の実力なら、何処のギルドに入っても恥ずかしくない。大手ギルドにでも入った方が、攻略は楽になる。うちは小規模も小規模、私もコイツもソイツも変わり者だらけだぞ」
「コイツ?」
「ソイツ?」
Nightの言い分は確かに正しい。雷斬に私達のギルドは似合わない。
けれどコイツとかソイツとかはちょっと傷付く。
Nightの容赦のない罵声に震えると、雷斬は一切動じない。強い目をしており、芯が通っている。なんだか武士って感じだ。
「理由は……正直ありません」
「無いのか」
「無いの!?」
かなーり傷付く。普通に心を抉られた。
まさか雷斬みたいな聖人からそんな酷い言葉が出て来るなんて。
大ダメージを喰らうと、私は胸を押さえる。
「い、痛い……」
「大丈夫―、アキラー?」
「大丈夫だけど……あはは」
もう乾いた笑いしか出なかった。
そんな私にフェルノは優しく背中を撫でる。
立ち直るのは簡単で意識を切り替えると、Nightの問いに正確な答えを出す雷斬の姿があった。
「ただ、私をギルドに勧誘してくださった方はたくさんいました」
「だろうな。お前の腕なら」
「ですが、それは私の見掛けの技術のみです。私は人前で種族スキルを発動したのは、アキラさんの前だけでした」
「そうだったの!?」
「はい。私がスキルを使うのは、必要だと判断した時だけです。今までは私の剣技だけを必用とした方ばかりでした。けれど皆さんは違いました。私のことを剣技だけで見てはいない、そんな気がしました」
確かに雷斬の剣技はとんでもない。
実際にこの目で見たから分かるけれど、あの剣技は何処のギルドでも通じる。
しかしそれは剣技だけしか見ていないことへの裏返し。表面しか見ていない……のは私達みんながそうだけど、何故か雷斬は私達のギルドに関心を抱いてくれた。
「気まぐれかな?」
「気まぐれでもいいんじゃない? ねぇ、雷斬」
「はい、フェルノさん?」
「うちのギルドに入ろうと思ったのって、それだけ?」
「いえ、正直な話、もう一つ含みがあります。ですがこれは」
「いいよ、全然言ってねー。ねー」
私とNightの顔をフェルノは見る。
交互に見返し、同意を煽られてしまった。
もちろん答えはYES。コクリと首を縦に振ると、雷斬の言葉を待った。
「それで雷斬、なになに?」
「では謹んで申し上げますね。実は、私の親友も仲間に加えて欲しいのです」
「親友? いいよ、全然」
「ありがとうございます! では」
「ちょっと待て。ソイツはどんな奴だ?」
流れを切り伏せたのはNightだった。
確かに言いたいことはよく分かる。だってどんな相手か分からない。
ましてやその言い分だと、私達のギルドに入る口実がとんでもなく弱く見える。
「ですよね。ですが皆さんならと思ったのです」
「私達?」
「はい。私の親友は少し気難しくてですね」
「Nightと同じだ―」
「分かる。凄く分かる」
「おい、本人目の前にしているんだぞ?」
それはまあ仕方ない。だってNightはいつもこうだから。
しかも本人も満更ではない。唇を噛むが気にしていなかった。
「ですな皆さんとなら、もっと上手く溶け込めそうなのです。どうかお願いできませんか?」
「私はいいけど……ねぇ?」
「うんうん。全然OKだよー」
「……」
Nightだけを残し、私もフェルノも好感触。
雷斬はここで押し通すのかと思えば、Nightの顔色を窺う。
実質的なギルマスのNightに首を縦に振られないと、雷斬はダメだと思った。
「お前の考えはそれが全てか?」
「私は皆さんを守る刀でいたいです」
「守る?」
「私の剣が今の時代に不要なことは知っています。ですが私は、大切な友人を守る存在でいたい。だからこそ、皆さんと共にいたいのです。漠然としていますよね?」
「そうだな」
雷斬は子供みたいに漠然とした言葉を吐く。
Nightには絶対に通じない。そう思ったけれど、Nightは不敵な笑みを浮かべる。
「だったら、全力で守れよ」
「「Night!?」」
「ありがとうございます、皆さん。これからよろしくお願いしますね、皆さん」
如何やら合格の判定が出たらしい。
きっと自分に重ね合わせる部分があったから、心動かされたに違いない。
私とフェルノはNightの成長? に喜ぶと、雷斬を迎えた。
「これからよろしくね、雷斬」
「はい、任せてください」
何を任せたらいいのかは分からない。
けれど確かなものは絆だ。
継ぎ接ぎだらけな絆は確実に固まっていると、私は想像した。
【ステータス】
■アキラ
性別:女
種族:<ヒューマン>
称号:《合成獣》
LV:10
HP:190/190
MP:190/190
STR(筋力):58/55
INT(知力):58/55
VIT(生命力):58/55
AGI(敏捷性):58/55
DEX(器用さ):58/55
LUK(運):58/55
装備(武器)
武器スロット:〈初心者の短剣〉
装備(防具)
頭:
体:〈朝桜のジャケット〉
腕:
足:〈朝桜のショートパンツ〉+〈朝桜のスカート〉
靴:〈朝桜の忍靴〉
装飾品:〈銀十字のネックレス〉
種族スキル:【適応力】
固有スキル:【キメラハント】+{【半液状化】,【甲蟲】,【灰爪】,【幽体化】,【熊手】,【蠍尾】},【ユニゾンハート】
■Night
性別:女
種族:<吸血鬼>
LV:12
HP:210/210
MP:210/210
STR(筋力):45/65
INT(知力):98/65
VIT(生命力):55/65
AGI(敏捷性):45/65
DEX(器用さ):90/65
LUK(運):65/65
装備(武器)
武器スロット:〈十字架の剣〉
装備(防具)
頭:
体: 〈黒夜・シャツ〉
腕:
足:〈黒夜・パンツ〉
靴:〈黒夜・ブーツ〉
装飾品: 〈銀十字の首飾り〉〈黒夜・コート〉
種族スキル:【吸血】
固有スキル:【ライフ・オブ・メイク】
■インフェルノ
性別:女
種族:<ファイアドレイク>
LV:7
HP:160/160
MP:160/160
STR(筋力):62/40
INT(知力):35/40
VIT(生命力):39/40
AGI(敏捷性):50/40
DEX(器用さ):41/40
LUK(運):40/40
装備(武器)
武器スロット:〈初心者の短剣〉
装備(防具)
頭:
体: 〈冒険者の軽装(上)〉
腕:
足: 〈冒険者の軽装(下)〉
靴: 〈冒険者の軽靴〉
装飾品:
種族スキル:【吸炎竜化】
固有スキル:【烈火心動】
■雷斬
性別:女
種族:<雷獣>
LV:9
HP:180/180
MP:180/180
STR(筋力):60/50
INT(知力):52/50
VIT(生命力):48/50
AGI(敏捷性):78/50
DEX(器用さ):65/50
LUK(運):50/50
装備(武器)
武器スロット:〈雷に打たれし鈍刀〉
装備(防具)
頭:
体: 〈封雷坊の装束(上)〉〈雷の羽織〉
腕:
足: 〈封雷坊の装束(下)
靴: 〈封雷坊の草鞋〉
装飾品: 〈雷模様の髪飾り〉
種族スキル:【雷鳴】
固有スキル:【陣刃】




