◇111 満島の怪しい人工物
見つけたのは怪しい建物でした?
私達は森の中を歩いていた。
正直、何が出て来るか分からない恐怖と戦っている。
けれどモンスターが出てくる様子も無く、森を切り拓いて進むと、Nightはポツリと呟く。
「なにもいないな」
「そうだね。ちょっと安心したかも」
「えー、どうせならモンスターがいた方が面白いよー」
「「面白くない」」
私もNightも表情を顰める。
そんな悠長なことを言っていられる様子は無い。
何せ、海岸沿いから歩いて早三十分。道を切り拓くだけで大変だ。
「フェスタは疲れないの?」
「うん、全然疲れないよー」
「バカな。渡しはとうに限界だぞ」
「それはNightが軟弱すぎなだけ」
フェスタが先頭を切ってくれるおかげか、道はドンドン切り拓かれる。
開拓者として凄い才能があるのに対して、Nightは地獄を見ている。
全身から汗を流し、着こなすマントがビシャビシャだ。
「大丈夫、Night?」
「コレを見て、大丈夫に見えるか?」
「見えないけど」
即答で返すと、Nightは蹴りを飛ばそうとする。
癇癪を起されても困るから、私は速やかに躱した。
「避けるな」
「避けるよ」
「あはは、超インテリだもんねー、Nightは」
「お前は体力バカだがな」
「イェイ、私は体力があるよー」
絶対に褒められていないけど、フェルノはポジティブに捉える。
私は苦笑いを浮かべると、Nightに訊ねる。
「それにしてもNight、この島はどうなってるのかな?」
「どういう意味だ?」
「えっと、どうして満島なのかなって?」
「知るか、そんなもの自分で考えろ」
Nightはぶっきら棒になって私を突っぱねる。
グサリと突き刺さった痛みに、胸を襲われた。
けれどNightはそこまで厳しくないから、私はソッと受け流す。
「でも満島ってことは」
「なにかが“満ちるのか”それとも“満ちているのか”だな」
「満ちてるって?」
「それはまだ分からない。とは言え、この先に答えがある筈だ」
Nightはそれっぽいことを言ってくれた。
確かに森を抜ければ何かが待っているかもしれない。
私達は期待をしながら森の中を切り拓いていくと、先頭を切るフェルノが声を上げた。
「おっ!」
「どうしたの、フェルノ?」
「アレ見てよ。なにかあるよ」
フェルノが指を指すと、丁度草木が開いていた。
先の道が丸分かりで、確かに何かある。
「なにかあるね」
「そうだな。しかも絶対に合ってはいけない物だろ」
「確かにー。なんだろ、アレ?」
私達が見つけたものはヘンテコなものだった。
とんでもなく怪しげな建物が薄っすらと見える。
私達は気持ち悪いとは思いつつも、好奇心に負けちゃって、ソッと近付いた。
「二人共、気を付けようね」
「うんうん。流石に私も気を付けるよー」
「先走るなよ。先行して痛い目を見るのは後れた奴なんだぞ」
「それくらい分かってるよーだ。んでと、建物の正体は……はにゃぁ!?」
フェルノは変な声を上げてしまった。
だけど私もNightも同じことを思う。
瞬きをしてしまい、目の前の建物を見つめると、顔色が悪くなった。
「これ、大丈夫なの? 世界観が壊れちゃうよ!」
「そうだな。まさかここに来て」
「人工物だ。人工物だよ、しかも研究施設っぽいよー!」
私達の目の前にあるのは、巨大な人工物。
真っ白な建物が聳え立っているが、何よりも研究施設っぽいのがおかしい。
世界観が完全にぶっ壊れていて、慄く所か呆れてしまった。
「どういうこと? なんでこんなものがこんな場所にあるの?」
「落ち着け。なにかの演出かもしれないだろ」
「演出にしては世界観が……」
「近未来だよねー。あはは、でも小島の森の中にひっそりと佇む謎の建物。しかも真っ白。如何にも!」
「宗教団体の秘密工場、とか腑抜けたことを言うんじゃないだろうな?」
「うっ、バレてたー?」
「当り前だ。大体、そんな場所の鍵を渡すと思うか? しかも公式が、イベントの報酬として」
正直そんなバカなことは無いと思う。
ってことは、この建物はなに? 中に入れればいいんだけど。
私達はグルリと見回すと、明らかに出入り口だって分かる場所があった。
何せ、そこだけバリアフリーのスロープがあって、手すりもあって、天井もご丁寧に用意されていた。その先には四角い自動ドアっぽい物が設置されていて、ここから入ってくださいって教えてくれている。
「ここだよね?」
「そうだな。という訳だ、フェルノ行け」
「私―? アキラの方がよくない?」
「どうして私なの!?」
「「ギルマスだから」だな」
こんな時だけ都合のいいこと言わないで欲しい。
私は正直スルーしたい。だけどスルーは強要させてくれない。
私は意を決してスロープを上がり、悪かも分からない扉に手を差し出す。
「開けばいいけど」
ウィーン!
「開いちゃった!?」
「しかも自動ドアだな」
「うーん、最新仕様!」
自動ドアが最新仕様なのかは置いておく。
だけど世界観は完全に崩壊。
満島。あまりにも”技術が未知る島”過ぎて、私達は呆気にとられた。というか、バカ正直に考えるのを止めてしまった。
「も、もういいよ」
「そうだな。せっかく開いたんだ、中に入るぞ」
こうなったらとことんまで追求しよう。
そんなNightの探求心が爆発すると、私も乗っかる。
フェルノも腕を振り上げると、謎の建物の中に乗り込んだ。
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