◇110 海原に浮かぶ小島
やって来たのは離れ小島でした?
「ミーNaさん。ここで鍵が使えるんですか?」
「ええ、ここで使えますよ」
「そうなんだ……あの、ここってなんのための空間なんですか?」
私は鍵を見つめる中、ミーNaさんに訊ねる。
たくさん扉がある不思議な空間。
カラフルで同じ大きさの扉が幾つも横並びになっていると、何だか博物館に来たみたいだ。
「ここは繋がりの間です」
「つ、ながり、の間?」
「はい、繋がりの間です。当ギルド会館を始め、数多くのギルド会館の設置された街々へは、繋がりの間を介して移動ができます。とは言え、ほとんどの場合プレイヤーの皆さんはご利用されませんがね」
確かにこの空間を使わなくても全然困っていない。
何せ各地に設置された転移装置。それに触れさえすれば、一瞬で移動ができる。
けれどこの空間が廃止されていないってことはなにか意味があるのかも。
渡しは少し頭を使うと、Nightが答えを漏らす。
「この空間の意味は、それぞれのギルドホームに飛ぶことが主だな」
「流石はNightさんですね。正解です」
「「ギルドホーム?」」
ここに来て目標の一つになっているものの名前が出た。
ギルドホームに飛べる? ちょっと意味が分からない。
もしかして、みんなギルドホームに行くために鍵を持っているのかな?
渡しは想像力の羽を広げると、空に飛び立つには時間が掛かった。
「Night、どういう意味?」
「言葉通りだ。そうだろ、ミーNa」
「はい。この空間、俗にこの扉は各地のギルドホームを繋ぐものです」
「ギルドホームを繋ぐ? だから繋がりの間!」
「そう言うことです。さてと、説明はこのくらいですね。
ミーNaさんはある程度の説明を終えた。簡潔でとても分かりやすかったけど、これから如何すればいいのかな?
とりあえずミーNaさんに誘導された私は、持っていた鍵を握り締める。
「それではアキラさん、目の前の鍵穴に鍵を挿してみてください」
「刺してもいいんですか?」
「はい、構いませんよ。鍵を回し切ったら、そのまま扉を開けてください。健闘を祈ります」
なんで健闘を祈られるのかは分からない。
妙に不気味な対応だったけど、とりあえず真っ黒で重厚感のある扉の前に立つ。
「それじゃあ開けるよ。(ガチャ!)」
鍵穴に鍵を挿さすと、スッと入ってしまった。
多分、どんな鍵でも扉に挿せる。
ってことを思ったらちょっとあれだけど、私は鍵穴をグルリと回すと、扉の錠が外れた。
「おっ! 開いた」
「そのままゆっくり開いてみてください」
「分かりました。せーのっ……軽っ!?」
扉はあまりにも軽かった。私はちょっと驚いてしまうと、腰が引けてしまう。
そんな私をフェルノは「あはは」と笑った。
ちょっとだけムッとしてしまう私は、Nightに口ずさむ。
「Night、フェルノは置いて行こう」
「待って待って。私も行くよー」
「それじゃあ笑わないでよ」
「ごめんごめん。でも、ビビるアキラって面白いからさー……ああ、ごめんって。降参だよ」
私はついつい殺気を飛ばしてしまった。
するとフェルノは勘付いたらしく、すぐさま平謝りをする。
そんなに私が怖いのかな? 首を捻るけれど、とりあえず扉の先に行ってみよう。
「それじゃあミーNaさん、行ってきます」
「お気を付けて」
「気を付ける? はい、ありがとうございます」
「アキラ、油断するなよ。この先がどんな場所かは不明だ。もしかすると、危険な場所かも知れないぞ」
「ええっ、そんなこともあるの!?」
てっきり安全な場所に行けると思っていた。だけど思い起こせば場所は島。モンスターだって普通に生息しているかもしれない。
そんな場所の足を運ぶと思ったら、ちょっとだけ怖くなっちゃう。
たじろぐ私だったけど、フェルノに付い背中を押されてしまった。
「それじゃあ行ってみよう―!」
「ちょっとフェルノ、背中押さないで。危ないよ」
「ドーンと行ってみよう!」
「おい、私まで巻き込むな。うっ、うわぁ!」
アキラたちは扉に吸い込まれてしまった。
本当は普通に飛び込みたかったけど、気が付けば空間から弾かれている。
ミーNaさんの姿は無くなり、一瞬にして見知らぬ場所に倒れていた。
「痛たたぁ。もうフェルノ」
「ごめんごめん。ちょーっとやらかしちゃった?」
「やらかしもなにも、お前は少し態度を律しろ。コレだと危ないだろ」
確かに危うく怪我をするところだった。
けれど三人共全員無事のようで、体を起こして周りを見てみる。
なんって言おう。とりあえず目の前は森、後ろは海だ。
「もしかしてだけど、ここが満島?」
「そのようだな。本当に島……しかも、海岸沿い」
「海岸? あっ、本当だ。見てよ、アキラ。あっちに砂浜が見えるよ」
フェルノが指を指していたから、私も目で追う。
確かに砂浜が見えるけど、何だか日本の砂地と違う。
サラサラの白い砂浜が映ると、海の様子も和やかだ。
「本当。でも……」
「小島なんだろうが、かなり広そうだな。見てみろ、目の前には山まであるぞ」
「うん、それは気になってた」
視線を森の方に向けると、その先には見たくもない絶望が待っていた。
何せ巨大な山が聳え立っている。その迫力は私達を飲み込むほど。
丁度てっぺんには雪も降り積もっていて、自然豊かな島になっている。
「面白いね。ここが満島かー」
「面白いかは別として、モンスターがいないといいな」
「いたらどうするの?」
「とりあえず引き返すぞ。丁度そこに転移装置が置いてある」
どうしてこんな場所に転移装置が?
私は至れり尽くせりな構造になっている島に疑問を抱いた。
もちろんフェルノは楽しんでいるけれど、Nightも怪しんでいる。意味を持っているの確実だ。
「Night、この島って」
「とりあえず探索だな」
「そうだね。フェルノ、森の中に行ってみよう」
「いいねいいね、盛り上がるよねー。楽しいよねー」
「楽しんでるのはお前だけだがな」
まだ油断はできない。いつ何処から攻撃されるかは不明。
私とNightはフェルノを先頭に森を目指す。
初めてやって来た鍵の先、そこがどんな場所なのか、私達は見て回る。
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