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◇11 見せたかった景色

まるで生きているみたいな森。

その真意って一体?

「どんなスキルかな?」


 フィルム・ラクーンを倒した私。

 レベルアップもしなかった上に、ドロップアイテムも無し。

 正直、戦って倒した割には、旨味が薄い。

 やるせない気持ちになったけど、私はにはまだ楽しみがあった。


「【キメラハント】でフィルム・ラクーンからなにを奪ったのかな? 楽しみ……あれ?」


 詳細が表示された。

 しかし私は首を捻る。

 何も間違ってはいない。表示されるのは、【キメラハント】だった。



——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しませんでした——

——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、追加することはできませんでした——



「ど、どういうこと? 倒したモンスターから、確実にスキルを奪えるんじゃないの?」


 私は困惑してしまった。

 と言うのも、ここまで確実にスキルを奪って来ていた。

 だから絶対に獲得して、より強くなれると思っていたのに、私は突き放された気分になる。


「もしかして、確率ってこと? それともあれかな? 私との相性があるの?」


 ここで一つ【キメラハント】のおさらいだ。

 固有スキル:【キメラハント】。それは倒したモンスターからスキルを獲得できると言う、上限なく青天井で強くなる極めて珍しいスキル。

 だけどスキルを奪えるかどうかは確率。更にはAIによるシビアな判定が入る。

 その事実を知ると、ここまでがラッキーの塊だったことを悟り、私は落胆する。


「ラノベの主人公みたいに、絶対最強って訳じゃないんだ……難しい」


 私は項垂れたりはしなかった。

 けれど過信しちゃダメだとも悟った。

 どんなモンスターを倒しても、スキルを奪えるわけじゃないのなら、闇雲な戦闘はできない。

 ゴクリと息を飲み息巻いていた自分を咎めると、頬をパチンと叩いた。


「よし、気を取り直そう。そんなこともあるよね」


 私は考えを改めることにした。

 それもそのはず、これはみんなが楽しめるオンラインゲーム。

 CUには圧倒的な自由度がある、なんでもありなゲームらしいけど、それはある一定のルールが明確に敷かれているからだ。

 誰か一人だけが得になるような絶対なスキルは無い。だって、これはゲーム。

 ユーザーが離れたらお終いなのだから、シビアな面があってもおかしくない。


「私だけが強いんじゃない。みんながこれくらい強いんだから、気にしちゃダメ。オンラインゲームは楽しむものだから、絶対に強いなんて無い方がいいもんね。うん、そうしようそうしよう」


 私は自分の中でそうやって落とし込むと、更に先を目指した。

 この先に行けばきっと帰れる筈。

 これ以上の戦闘をする気は一切無く、私は森の中を駆けていた。


「回復アイテム欲しかったな」


 HPは削れたままだ。

 顔の痛みもまだ残っている。

 痛覚が明確に存在するせいか、ダメージは極力負いたくない。


 私はCUの奥深さには触れていない。

 だけどシビアな一面を悟らされると、頬を優しく撫でる。

 それだけこのゲームの凄さに私がのめり込んでいる証拠だった。


「まあいっか。でもやっぱり楽しい。これがCUなんだ……私はクリーチャーじゃないけど……おっ!」


 ボヤきながら進むと、視界が更に開ける。

 白光が視界を照らすと、如何やら森が終わるらしい。

 ようやく森から脱出ができる。そう思った私はホッとすると、足早になっていた。


「うわぁ、凄い絶景」


 森を抜けた私を待っていたのは、広大な自然だった。

 スタットーンの最奥、そこは開けた崖。

 その眼下に広がるのは、深緑色の木々達で、森林が蠢いているように壮大だった。


「綺麗っていうか、凄い景色……まさかここまで凄い世界が待っているなんて……いいなぁ」


 私は呆けてしまっていた。

 それだけ気持ちの良い景色で、私は茫然としてしまう。

 黄昏るように立ち尽くすと、心地の良い風まで吹く。

 如何やらここにこれて良かったと、不満さえ押し殺していた。


「もしかして、私にこの景色を見せたくて?」


 なんとなくそう思ってしまった。

 だけど多分、私の勘違いだ。

 今日来たばかりの私のことをそんな風にもてなしてくれるか。

 私は怪しんでしまうが、それを捨てても良いくらいには、この森が好きになる。


「なんだか満足……後は帰れるかだけど、およ?」


 ふと周囲を見回した。

 すりと「開けろ」と言わんばかりに置かれた木の箱が置かれている。

 如何してこんな場所に堂々と。表情を訝しめるも、私は箱に吸い寄せられる。


「開けろって言ってるんだよね?」


 私が問い掛けると、箱は頷きかける。

 もちろん実際に頷いてはいない。そんな風に見えただけだ。

 私は唇をひん曲げると、箱の上蓋に手を掛けた。

 開けてみる。それしか待っていないので、私は「えいっ」と声を上げた。


 パカッ!


「クリスタル? なにこれ? なにに使うの?」


 箱の中には青色のクリスタルが入っていた。

 如何やらも何も、この箱は宝箱。

 中に入っていたクリスタルはアイテムらしいけど、私には分からなかった。


「どうやって使うんだろ?」


 私はクリスタルを手にしてみたが何も変化が起きない。

 太陽にかざしてみても、地面に置いてみても、ましてや撫でてみても何も起きない。

 ここは一度詳細を見るしかない。

 そう思った瞬間、私はそんなに力を入れていないのに、指の腹に力が加わり、クリスタルに罅が入った。


 パキッ!


「ん? なんだか嫌な予感が……うわぁ!?」


 クリスタルは何の力も入らずに、パリンと破裂した。

 バラバラに砕け散ると、私は驚いて顔を背ける。

 するとクリスタルが弾け、中から青い閃光が迸ると、私は容易く飲まれる。

 逃れることは全くできず、私は意識を一瞬にして奪われてしまった。

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