◇107 メダルハンターはお終い
疲労が蓄積され過ぎて、もうよく分からんのよね。あはは……はぁ。
「いい加減、起きろ!」
「痛っぁ!?」
私は思いっきり蹴られた。
あまりの痛さに目を覚ますと、犯人はNightだった。
一体何が起きたの? なんでこうなったの? 私は瞬きを何度もすると、状況が上手く呑み込めない。
「えっ、ちょっと待ってよ。なんで蹴られたの?」
「お前が起きないからだ」
「起きないからって……あれ、ここは?」
私は周りを見回す。眩しい太陽がピカピカと射抜く。
如何やらここは地上らしい。
やった、私と雷斬は無事に地上に戻って来れたんだ。
ホッと胸を撫で下ろすと、頭に手を当てる雷斬の姿もあった。
「うっ、どうやら戻ってこれたようですね」
「うん。やっぱりゴールデンスコーピオンを倒すのが、絶対条件だったんだね」
「はい。倒し切れてよかったですよね」
ゴールデンスコーピオンを倒さないと、宝箱は開けられなかった気がする。
ってことは、地上に戻って来れなかった。
レベルが一定になっていたけれど、雷斬と力を合わせたから勝てたと分かり、私は自信が持てた。
「なんの話をしているんだ?」
「それはそうと、二人共見て」
「ん?」
「メダルを見つけてきましたよ。どうでしょうか?」
私と雷斬は手に入れたメダルを見せる。
大量のメダルを両手に集めると、Nightは目を見開く。
フェルノはと言うと、「おー!」と高らかな発生を上げ、パチパチと手を叩いた。
「凄い凄い、そんなのあったの?」
「うん、あったよ」
「そっかー。おっ、星三つもある!」
「……マジか。やはり砂漠に眠っていたんだな」
「「う~ん?」」
確かにNightの言ってくることは当たっている気がする。
だけど、こんなの偶然だ。私はそんな風に割り切っちゃう。
まさか地下にあるなんて思わなかったし、倒せるなんて想定もしてない。
私は雷斬と一緒に顔が顰めると、唇が曲がっていた。
「でもメダルはたくさん集まったよ」
「それはそうだが……まあいいか。時間的にも無理だろうな」
Nightはポツリと呟いた。
もしかして、もう時間なのかな?
メニューを開くと、イベントバーをタッチ。残りの制限時間が表示されている。
後三十分も無くて、私達のイベントはここまでだった。
「それじゃあ雷斬、はい」
「アキラさん? えっ……」
「ここまで護衛してくれたお礼」
私はメダルを手渡した。星が三つ描かれている。
普通に集めたら最高レベルの星数メダルだけど、雷斬には要らないかもしれない。
それでも私はお礼に手渡すと、雷斬は首を横に振る。
「いけません、アキラさん」
「どうして?」
「私は既に報酬を貰っています。これ以上貰う訳には行きません」
「えーっと、じゃあ。はい!」
私は雷斬の手の中にメダルを押し込む。同情を誘うようなことをしたけれど、それでも私はした方がいいと思った。
だからこそ雷斬は困り顔を浮かべてしまう。
視線が右往左往すると、追い打ちとばかりに私はフレンド申請を送った。
「雷斬、恩着せがましくて悪いけど、フレンド登録しない?」
「フレンド登録ですか? それでしたら構いませんよ」
——フレンド登録を:雷斬に送りました——
——雷斬が承認しましたので、フレンドに追加されました——
雷斬はすんなりフレンド登録してくれた。
ついに四人目がフレンドに追加されると私は嬉しい。
それと同時にNightが雷斬に提案をする。
「雷斬、今回のイベントはここまでだが、また護衛を頼めるか?」
「は、はい。謹んでお受けさせていただきますよ」
「そうか、これで私達の活動が楽になるな」
「うん。ギルドの資金が集めそうだよね」
「ギルド、ですか?」
雷斬をよそに勝手な話をしていた。
けれど雷斬本人が私達の話に興味を持つ。
一歩詰め寄ると、雷斬は私達の“ギルド”に興味を示す。
「皆さんはギルドを設立しておられるんですか?」
「うん。〈《継ぎ接ぎの絆》〉って言うんだよ」
「絆ですか。いいですね……」
「あれ~? もしかして雷斬、興味持ったの?」
何故か”絆”って言葉に雷斬は顔色を変える。
パッと明るくなると、私達に口を挟もうとする。
「あの皆さん、よければ私も……」
「そうだ、雷斬も一緒にやる?」
「えっ、それは、その……」
「ここで会ったのもなにかの縁だし、さっきのメダルは関係無くね、私達のギルドに……うわぁ!?」
ここまでが全部”流れ”みたいな感じで、私は雷斬を一方的に誘った。
正直、雷斬の優しさに付け込んでいるのは確実。
悪いことをしている気分になったが、その瞬間体が光に飲まれる。
「な、なにが起きてるの!?」
「どうやらイベントも終わりらしいな」
「お、終わり? ここで終わるの?」
「あはは、体感時間ってヤバいねー」
体感時間がやけに早く感じた。
だけどこうなったら抗えない。
それぞれが光に包まれると、私達の姿が消える。
今回のイベント、メダルハンターはもうお終いで、何だか絆が深まった気がした。
「なにはともあれ、楽しかったな」
私の心の声が本心として吐露される。
正直、まだやりようがあったのは確か。
だけど一つだけ心残りなのは、雷斬に恩を着させてしまったことで、それだけが私のことを戒めた。
「社長、失礼します」
「はい、どうぞ」
私のいる社長室にやって来たのは耶摩さんでした。
タブレットを持っており、如何やら何か見せたいものがあるようです。
「どうしましたか、耶摩さん?」
「見てください、社長。今回のイベントの結果です」
「結果ですか?」
汗を掻き、いち早く私に見せたかったのでしょう。
一応結果はまだ確認していませんが、多くのプレイヤーが参加してくださったことは知っています。
その結果は如何なのか。タブレットの映像を宙に表示すると、イベントの詳細なデータが表示される。
「なるほど。想定内のプレイヤー数ですね」
「想定内なんですか!? 流石は社長ですね」
「そんなこともありませんよ。プレイヤーの総人口・脳波・日数などを鑑みれば次第に見えます」
私は大したことはしたつもりはありませんでした。
けれど耶摩さんは何故か驚いています。
瞬きをして表情に陰りが見えると、私は励まし掛けました。
「耶摩さんには他に優れた才があります。ですので、気を落とさなくてもいいですよ」
「ありがとうございます、社長。それで今回のイベントなのですが」
「集客力は充分ですね。収益も問題ありません。それで上位のプレイヤーは……なるほど、この方ですか」
私は一応確認はしていました。想定通りの方ではあります。
ですが結果としては私の想定以下でした。
流石にまだ早かったかと思うも、気になる名前を見つけた。
「彼女は……」
「えっ、ああ。社長が気に掛けているプレイヤーですよね?」
「ええ、そうですか。彼女もまた……面白いですね」
「社長?」
今回のイベントの結果は想定内でしかなかった。
けれど私にとっては嬉しい結果も見られた。
確実にそして着実に成長している人達がいる。それが分かるだけでも今回のイベントを開催したことは間違いでは無かったと、自分の意識を見失わなかった。
「この調子で次のイベントも企画しましょうか」
「えっ、は、はい!」
「さてと、次は……と言いたいですが、しばらくは難しいでしょうね」
一応次のイベントを考えてはおく。
けれどそんな暇は無く、他の業務が立て込んでいる。
そのせいかCUにかかわっている時間は取れず、次のイベントまでは時が空きそうだった。
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