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105/185

◇105  雷鳴を纏って

——雷を纏い、世界を置き去りにして行け——

「アキラさん、私が先陣を切ります。その隙に、サソリに奇襲を仕掛けてください」

「いいけど、それって雷斬が危険じゃないの?」

「問題ありませんよ。私は”捕まりませんから”」


あまりにも意味深なことを言う。

 如何いう意味なのか首を捻る私だけど、ゴールデンスコーピオンは自慢の針を突き出す。

 ドスンと地面に突き刺さると、毒を注射される前に私と雷斬はジャンプして避けた。


「どうする気だろ、雷斬……!?」


 砂埃の中、雷斬の姿を見つける。

 するとバチバチと青白い光が発光している。

 迸っているって言えばいいのかな? 光の塊が、突然高速移動をし始めた。


「えっ、な、なに!?」

「はっ!」


 バシュン!


 突然ゴールデンスコーピオンの鋏が片方切り落とされた。

 バシュン! と物々しい音を立てると、ドスンと左腕が落ちた。

 ゴールデンスコーピオンは突然のことに理解できなかったけれど、理解するしかなかった。全身をズタズタに切り刻まれると、ゴールデンスコーピオンはドンドンHPが削られる。


「嘘でしょ!?」

「嘘では無いですよ、アキラさん」

「この声、雷斬!? ど、何処にって……まさかあの光が……って冗談でしょ?」


 突然雷斬の声が聞こえて来た。

 まさかと思うが周りを見ても何処にも居ない。

 流石に逃げる何てこと、雷斬は無いと思うけれど、それが目の前を横切った光だとは思いたくない。


「冗談ではないですよ」

「嘘でしょ!? えっ、それじゃあ雷斬って」


 ゴールデンスコーピオンの背中に人が乗っている。

 その姿は完全に雷斬。HPは削れているが、全身から青白い光を放っている。


「ら、ら、ら、雷斬?」

「コレが私の種族スキルです。<雷獣>の持つ雷を纏うことで、敏捷性を極限まで高める技。名前は私オリジナルですが【雷鳴(イカヅチ)】です」

「雷鳴って書いて、イカヅチって呼ぶんだ」


 何だかオシャレって言うか、中二病って言うか、まあ面白い。

 私は自然と親指を立ててGOODを出す。

 すると雷斬は安心したのか手にしている刀を握りつつ、一瞬にして移動した。


「また消えた!?」

「アキラさん、私が右腕を落とします。そのうちにお願いします」

「やっと出番だ。分かったよ。足には自信無いけど……」


 私は地面を蹴った。もちろん砂だから重たい。

 走り難いけれど、雷斬も頑張っているから走る。

 その瞬間、ドスンとけたたましい音、それに加えて砂が舞う。

 気が付くとゴールデンスコーピオンの右鋏も落ちていて、私は苦しむゴールデンスコーピオンに近付いた。


「【キメラハント】+【甲蟲】!」


 私は飛び上がって、ゴールデンスコーピオンを殴りつける。

 ズシンと腕に伝わったのは、痺れる感覚。

 普通に硬い、それから痛い。サソリらしく、体が硬化しているみたい。


「痛ったいけど、それっ!」


 思いっきり拳を突き出すと、ゴールデンスコーピオンの体が凹んだ。

 グニャリと歪むと、柔らかい部分に触れる。

 ゴールデンスコーピオンは体をクネクネ動かすと、HPがゴッソリ削れた。


「やった。このまま一気に」

「ダメです、アキラさん!

「えっ? うわぁ!」


 私が一気に勝負を決めようとした。その瞬間、雷斬が叫ぶ。

 一瞬立ち止まると、私は顔を上げた。

 鋏が無くなって油断していたけれど、最大の武器、毒針がまだ残っている。


「そんなの……喰らいたくない」

「くっ、スキルの反動が……」


 私は何とか躱した。

 けれど毒針の標的は私じゃない。

 目の前にしゃがみ込んでいるのは雷斬で、膝を付いてしまっている。

 汗を掻き、ビリビリと電気が迸る。本人の口から出た「反動」と言う言葉から、スキルによって動けなくなっている。


「このままじゃ雷斬が。今動けるのは私だけ、だったら!」


 迷うことは無く体が動いた。

 思考するよりも先に本能が駆けだす。

 突き出される毒針を代わりに受けるなんて真似はしない。だったらどうするべきか、毒針自体を破壊すればいいんだ。


「せーのっ!」


 私は方向転換。せっかく避けた筈の尻尾に向かって突撃。

 突き出した拳にはいつの間にか【灰爪】が纏わり付いている。

 鋭い爪が剣のように尖ると、グサリと尻尾を突き刺す。


「と、取った! や、やぁやぁやぁやぁ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「アキラさん……クッ、【雷鳴】」


 急にゴールデンスコーピオンは揺れ出した。

 私が急所を捉えたみたいで、尻尾がポロリと抜けてしまう。

 すると痛がっているのか、嫌がっているのか、体がバッタバッタと暴れ出すと、私はゴールデンスコーピオンの背中から落っこちた。


 そんな私は受け身を取ろうとする。

 慌てているけれど、思考の奥底は冷静。

 意識を切り替え、最善の行動を取ろうとした。

 その瞬間、私の体が誰かに抱きかかえられ、気が付くとゴールデンスコーピオンが崩れた拍子に舞い上がった砂波に煽られていた。


「ううっ、ぺっぺっ!」

「大丈夫ですか、アキラさん?」

「その声は雷斬だよね? えっと、なにが起きて……私がお姫様抱っこされてる?」

「はい。アキラさん、お怪我はありませんね?」


 気が付けば私は雷斬にお姫様抱っこされていたって訳。

 突然のことに顔色が真っ赤になると、流石に恥ずかしくてすぐに下ろして貰う。

 全身から電気を迸らせる雷斬を見つめると、少し辛そうにしていた。

 もしかして重かったのかな? とか余計な心配をするが、反動がまだ残っているだけらしい。


「雷斬、少し辛そうだよ?」

「問題ありませんよ。それより見てください、私達の成果です」

「成果? あれ、ゴールデンスコーピオンがいない」

「私達の勝利の様ですね。どうやら尻尾の付け根が弱点だったようです」


 もしかして、私が突き出した爪が食い込んだのかもしれない。

 ってこと、偶然にも勝てたってこと?

 幸運な私は安心すると、急に力が抜けてしまった。


「ふぅ~」

「大丈夫ですか、アキラさん!?」

「うん、大丈夫だよ。なんだか気が抜けちゃって」

「そうですね。まさかこのような結末を迎えるとは思ってもみなかったですね」


 ゴールデンスコーピオンはペタンと畳みたいになっていた。

 動く気配は一切無い、復活する様子も無い。

 如何やら私達の勝利は確定のようで、何処からともなくレベルアップじゃないファンファーレが聞こえた気がした。


——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しました——

——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、ゴールデンスコーピオン:【蠍尾】を追加しました——

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