◇104 黄金のサソリさん
黄金のサソリってカッコよくないですか?
カッコいいと思ってくれたら高評価! よろしくお願いします。
「お、大きいね」
「はい。サソリ……でいいんでしょうか?」
「うん、多分いいと思うけど。雷斬?」
私と雷斬の目の前に現れたのは、巨大なサソリ。
普通に気持ち悪い大きさをしていて、全長は多分五メートルはある。
大きな鋏が二つに、長い尻尾が一つ。私達の姿を捉えると、体を虫みたいにコキコキ動かし関節を曲げた。
「き、気持ち悪い!」
「そうですね。このサソリのモンスターは、ムカデの様な動きをするみたいです」
「縦も横も変幻自在だよ。どうしよう、逃げられるかな?」
「恐らくは、無理かと」
もちろん私だって無理だって分かっている。
目の前のサソリのモンスターは、私達のことを見つめていた。
鋏をブンブン振り回してきそうで危ない。ゴクリと喉を鳴らすと、サソリは体をのけ反らせる。
ドスン!
サソリのモンスターはガサガサと足を小刻みに動かす。
私達へ近付くと、鋏をハンマーみたいに使って振り回す。
ブンブン叩き付けて、ドスンと地面に叩き付けると、砂が巻き上がった。
「うわぁ、殴って来るんじゃないの!」
「アキラさん、掴まってください。逃げますよ」
「えっ、そんなの無理で……あれ?」
私は雷斬に腕を掴まれた。
前屈みになった途端、体を倒しながら前に出る。
するとサソリの巻き上げた砂の波から上手く逃げ切り、雷斬は私を連れて距離を取った。
「大丈夫ですか、アキラさん?」
「う、うん。大丈夫だよ。それより、今のって」
「縮地です。少し乱暴だったかもしれませんが、怪我はございませんか?」
「それは大丈夫だけど……雷斬、なんで縮地なんて」
雷斬は“縮地”を使ったらしい。
けれど普通に生きていく中で、縮地なんて技使う機会は無い。
それをやってみせた雷斬は、相当武術に心得があるのだろうか?
何だかよく分からないけれど、雷斬の実力を垣間見た気がした。
「少々心得があるだけですよ。それよりアキラさん、このサソリ=ゴールデンスコーピオンは、厄介な相手ですよ」
「そうだね。しかも逃げられないなんて」
「強敵と言うことで間違いないでしょうね。全力で行きましょう」
「もちろんだよ。【キメラハント】+【甲蟲】!」
私はスキルを発動した。
両腕を籠手によって武装すると、拳と拳を合わせてみせる。
「アキラさん、その腕は?」
「私の固有スキルだよ。それより雷斬、行ける」
「はい。それではアキラさん、行きましょうか」
雷斬は私の前に出て先行する。
鞘から刀を抜くと、縮地を利用してゴールデンスコーピオンに近付く。
「はっ!」
振り上げた刀がゴールデンスコーピオンを切る。
もちろん鋏を狙うなんて危険なことはしない。
脇を狙って刀を叩き込むと、ゴールデンスコーピオンは嫌そうに体をのけ反らせた。
「はっ、まだです!」
しかし雷斬は絶対に逃がさない。
ゴールデンスコーピオンが逃げるなら、自分の自信の体を突き動かす。
横薙ぎに払い除けると、次の一撃を加えた。ゴールデンスコーピオンは大きな体のせいもあり、小回りが利かず逃げられない。
「このままきり続けたい所ですが……」
雷斬は優勢だった。けれど歩を弁えている。
反撃を喰らう前に一度距離を取ると、グッドタイミングで後方に下がった。
「危ないですね」
ゴールデンスコーピオンは腕を振り抜いた。
雷斬が少し避けるタイミングを見誤っていれば、確実に直撃していた。
頭を撃ち抜かれ、相当なダメージを……もっと言えば、即死していたかもしれない。
「大丈夫、雷斬?」
「はい、ですが少々怒らせてしまったみたいですね」
「そうだね。でも大丈夫、今ので多分……」
多分何が変わったのか、何が見えたのか、私には分からない。
だけどゴールデンスコーピオンが本気になっている。
ってことは、変化が生まれってこと。私達に注視して、お尻の尻尾まで使って来る。
ブシュン! ブシュン!
ゴールデンスコーピオンはお尻の尻尾を使って攻撃する。
私と雷斬目掛けて尻尾の毒針を突き立てる。
地面に大きな穴を開けると、私達の体を貫こうとしていた。
「怖い。こんなの喰らったら死んじゃうよ!」
「アキラさん、下がってください。私が前に出ます」
「あっ、危険だよ。雷斬、待って!」
私は前に出る雷斬を止めようとする。
まるで私のことを庇う様な動きで、私は手を伸ばす。
しかしゴールデンスコーピオンは鋏を叩き込むと、雷斬の動きが止まる。
「くっ、力強いですね」
腰を落とし、刀を使って鋏を受け止める。
身動きが取れなくなっていて、毒針の格好の餌食だ。
ゴールデンスコーピオンもそれを狙っているのか、ギラリと尻尾を突き出して雷斬を襲う。
「コレは……雷」
「そりゃぁ!」
雷斬はピンチだった。全身を死が取り巻く。
表情が険しくなると、雷斬は後ろに下がろうとする。
けれどそれよりも速く飛び出す影がある。そう、私が飛び出したんだ。
「アキラさん!」
「雷斬、無理しないで。一人で戦っているんじゃないんだよ!」
「は、はい……ですが」
「ですがとかないから。今は私達はパーティーなんだよ。お互いの背中を守り合って、隣を支え合う。分かるよね、雷斬なら」
「……アキラさん。はい!」
空気が一瞬変わった。
ゴールデンスコーピオンの鋏を私が叩いた瞬間に距離を取る。
それから短いけれど雷斬を叱る。
何だか雷斬は無理をしている。きっと私を前に出させないため。危険に遭わせないための配慮だ。
だけどそんなもの必要ない。
今この瞬間は、私と雷斬しかいないんだ。
だからお互いがお互いを支え合う。それがパーティーであると伝えると理解してくれる。
「それじゃあ雷斬、頑張ろう」
「分かりました、アキラさん。私の背中を託します」
「託されても困るけど……任せてって言っておくね」
「はい。それでは、私も本気を出しますね!」
何だか行けそうな気がする、できそうな気がする。
私も雷斬も負ける気がしない。
私はゴールデンスコーピオンなんて怖くない……は嘘だけど、鋏も毒針も私達は怖くない。
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