◇102 雷斬の実力は?
タイトル詐欺です。
だって次回か次々回で本領が発揮されるから。
まあ、前振りですね。ごめんなさい。
私達は雷斬を仲間に加えた。
護衛を頼んだけれど、その実力は凄かった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! そやっ!」
雷斬は日本刀を鞘から抜く。
凄まじい速さの抜刀中で、目の前に現れたモンスターを切り裂いた。
スパッ!
一瞬して切り裂かれると、HPは〇になる。
パタリと力尽きてしまうと、雷斬を前に動けなくなった。
スキルの練度は上がっても、経験値が手に入らないのは残念。
それくらいの働きで、私達は茫然と見守った。
「凄いね」
「ああ。今の抜刀術、見えなかったぞ」
「あはは、雷斬って凄いんだねー」
私達は雷斬の実力に拍手を送る。
もう讃えるしかないくらいで、鞘に刀を納めると、笑みを浮かべて振り返る。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「うん、雷斬のおかげだよ。ありがとう」
「いえ、この程度のこと大したことはありませんよ。では、先に行きましょうか」
「うん。このままメダルも手に入ればいいんだけどね」
残念ながら、メダルは手に入っていない。
モンスターに襲われるだけで、疲労が溜まってしまう。
私達は定期的に水分補給をしながら、砂漠の真ん中を当てなく歩いた。
「そう言えば、皆さんはなにかの集まりなのでしょうか?」
「うん。私達はギルドメンバーなんだよ」
「ギルドですか」
「うん。雷斬はギルドには入っていないの?」
「はい。私は単独ですので」
何だか悪いことを訊いちゃったかもしれない。
私は反省して、目を伏せる。
雷斬はそんな私に気が付くと、優しく気遣いを掛けた。
「アキラさん、お気になさらないでください。私が一人でいるだけですので」
「雷斬……」
何だか無理をしているように見えてしまった。
それこそ私には、誰かと一緒になにかをするのが好きそうに見える。
けれど性格が災いしているのか、雷斬は他人を尊重しすぎていた。そんな気がした。
「雷斬、お前は一人で楽しいのか?」
「はい、どうか致しましたかNightさん?」
珍しく口を開いたのはNightだった。
しかも普段のNightなら絶対に言わなそうな言葉を口にする。
私もフェルノも立ち止まると、Nightの顔をジッと見る。
「私が言えた口ではないが、お前は集団行動が得意だろ」
「そうですね。慣れてはいますよ」
「だったら何故、誰とも組もうとしない。私にはそれが不自然でならないぞ」
何だか踏み込んじゃいけないラインな気がした。
私はNightを宥めようとするが、それに対して雷斬は謙虚。
豹変し口を荒くすることもなく、笑みを浮かべて答える。
「私は組みたい親友がいるだけですよ」
「親友か、ソイツはどうしたんだ?」
「それは……その、ですね」
何だか触れ辛い話な気がする。
私はそれまでにしようと思い、Nightの口振りに飛び込む。
「Night、もう終わりにしよ。ねっ」
「そうだな。これ以上言っても仕方が無い……で、アレはどうするんだ?」
「「アレ?」ですか?」
Nightは何を言っているのだろうか?
視線を追ってみると、フェルノがずっと見つめている。
砂漠の奥。何か落ちている。小さな箱の様な形で、砂の上に置いてあった。
「箱だよね」
「箱だな」
「「箱」ですね」
宝箱が置いてあった。
明らかに罠のニオイがする。
絶対に近付く訳にはいかず、私達は遠ざかることにした。
「触らない方がいいよね」
「そうだな。避けるぞ」
「触らぬ神に祟りなしですよね。皆さん、大周りをしましょうか」
「さんせーい。あーあ、ちょっと気になったんだけどなー」
「今日はダメだよ。最終日なんだから、変なことはしないように。……あれ?」
私達は見えている宝箱を完全に罠と判断。ここは離れることにした。
もし開けて大変な目に遭ったらごめんだ。
私達は大周りをすると、宝箱を離れた……筈だったけど。
「宝箱、近付いてない?」
「そんなバカな話があるか……いや、当たっているな」
「やっぱり!?」
宝箱は動いている。
ゆっくり、確実に私達に近付いて来ている。
明らかにヤバい臭いがすると、急いで離れることにした。
ザァーザァーザァーザァー……
「な、なんか変な音もするよ!」
「この音、砂か」
「砂?」
私達は宝箱から全力で離れようとする。
踵を返して逃げようとしたけれど、それが如何してもできない。
標的にされてしまったのか、宝箱がドンドン近付く。
しかも砂が嫌な音を立てると、地面の奥へと吸い込まれる。
「ま、待って。宝箱の前に、足が捻って」
「気を付けろ、これは流砂だ」
「流砂ですか。では、砂が脈動する音の正体は……」
宝箱が近付くと、私達の周りに異様な砂の音が広がる。
三角錐の形に展開すると、砂がドンドン沈んでいく。
これが流砂って奴だとすれば、私達は既に罠の中。
足下を取られると、つい転んでしまいそうになる。
「蟻地獄か」
「「「蟻地獄!?」」」
流砂の正体は蟻地獄。宝箱を中心にして、三角錐に広がる。
まるで宝箱が生き物のようで、私達は標的になった。
その事実が分かると、私達は流砂からの脱出を試みる。
だけどそう上手くは行かず、足がズルッと滑った。
「うわぁ!」
「アキラさん!?」
私が足を滑らせると、雷斬は速やかに私の元に寄った。
だけど私もそんな迷惑を掛けない。
流砂に飲み込まれないように足搔いて見せると、雷斬はそれに驚いた。
「アキラさん、まさか自力で!?」
「あっ、雷斬待ってよ!」
雷斬と私が噛み合わなかった。
私が流砂から這い出ようとすると、今度は雷斬が蟻地獄に飲まれそうになる。
草鞋では踏ん張ることができないみたいで、ズルズルと沈んでいく。
「アキラ、雷斬!?」
「私達は大丈夫。二人は地上で待ってて」
「おい、お前ら勝手に」
「Night、助けに行くよねー」
私はNight達が心配していた、しかも助け来ようとしていた。
だから言葉とアイコンタクトでそれを拒否する。
心配をかけて、余計な危険に巻き込みたくない。
「いや、私達は地上で待つぞ」
「な、なんでぇ~!?」
「それが私達のできることだ。アキラ、雷斬。ちゃんと戻って来いよ!」
「うん、待ってて」
私と雷斬は蟻地獄に飲み込まれてしまった。
流砂に飲まれ、体が沈んでいく。
陽の光が完全に消え、砂と暗闇に視界も体も奪われると、私達は死を悟った。
ああ、これは助からない奴だと。
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