◇100 熱中症には気を付けて!
記念すべき”第100話”です。
ついにあのキャラが登場……ですが、今年は暑くて熱中症の人も多かったですよね。
冬でもこまめに水分補給をして、熱中症対策しましょうね。今の時代、ヤバいですからね。
「ああ、暑い……」
私は心の声が吐露していた。
Nightのおかげで少しは涼しくなったけれど、日が昇れば昇るほど日射量が増える。
全身を刺すような暑さが私達の周りを取り囲み、逃げ場を完全に奪っていた。
「水分補給はこまめにしろよ。ポーションは使えないんだ、熱中症にでもなったらOUTだぞ」
「そんなこと言われなくても……」
「大量にあるよー。塩も入ってるよー」
「後、ビタミン剤もね」
こんなこともあろうかと、準備だけは万端だった。
最初Nightに言われた時はまさかと思ったけど、本当に使うことになるなんて。
正直度肝を抜かされたけれど、今となっては救いの手だった。
「それにしても、なにもないね」
「そうだな。モンスターさえ寄り付かない」
「本当、死の行進だよねー」
フェルノがそれっぽいことを言った。きっと何かのアニメに出て来たんだ。
引用した台詞が宙をクルクル回り出す。
今の状況、確かに当てもなく彷徨い続けて、死への行進を着実に続けているとしか思えない。
「そんな碌でもないことを言うな」
「碌でもないことになってるでしょー」
「それはそうだが……絶対になにかある筈だ」
Nightが強情だった。自分の考えを間違っていると疑わない。
けれど逸れには私も同意できる気がした。
何だか胸騒ぎのような、全身を駆ける可能性を感じた。
「ふーん、まあいいけどさー」
「いいんだ」
「いいよー、全然」
「そこは否定して来るタイミングだろ。ボケもツッコミも無いのか」
「あはは、無いよー。だって私、芸人志望じゃないしー」
完全にフェルノはへし折りに来た。
笑って全てを誤魔化すと、ノリもツッコミもボケも天然も無い。
って、私がおかしくなったのかな? 考えるのが辛くなってきて、なんだか思考が逃げたくなる。
(一体どんな意識に切り替えてたんだろう、私。それにしても、本当に暑い)
直射日光が眩しい。肌を突き刺してきて、ドンドン色黒になる。
多分、四十℃は超えていること間違いなし。
フラフラしてしまいそうで、適当に布を覆い被っていても貫光する。
「うーん、視界に変なのが映って来た」
「ん? どうした、羞明でも起きたか?」
「しゅうめい?」
「光が目に入って、強い刺激を受けることだ。視界がボヤけたり、涙が出ることもある。最悪、病気にもなり兼ねないからな。一応注意はしろよ」
Nightが難しい言葉を使って説明してくれた。
けれど難しくて簡単な説明しか入って来ない。
それを聞いた途端、なんだか怖くなってしまった。私は身震いすると、フェルノが似たようなことを言う。
「うーん、私も変だなー」
「お前もか」
「なーにか見えるんだよねー。砂漠の向こう側、こっちに向かって近付いて……」
「なんだと!?」
私達の進行方向。反対側からも、当然誰かやって来ることはある。
フェルノが見かけたものが、私が見たものと同じなら納得ができる。
目を擦って視線を飛ばすと、やっぱり間違っていない。黒っぽい人影が近付いて来ている。
「アレはプレイヤーだな」
「「プレイヤー!?」」
ここに来てのプレイヤーはマズい。
流石に戦いになったら相当体に堪える。
どうせなら戦いたくない。穏便解決を図りたい。そう思ったけれど、相手は一人。
この暑さもあるから、もしかすると囲えば戦わずに済むかもと、淡い淡い期待を寄せた。
「おい、なんだか様子がおかしくないか」
「えっ、様子が?」
「左右に、特に右へ右へと揺れているぞ」
確かに人影はドンドン真っ直ぐ歩けなくなっていた。
フラフラとしながら左右に行ったり来たり。まるで真ん中が分かっていないみたいだ。
「アレは……マズいかもしれないぞ」
「「えっ?」」
Nightがそう呟くと、突然人影は動かなくなる。
体をよろけさせると、うつ伏せになる形で倒れ込む。
パタンと立っていた姿が消えると、ピクリとも動かなくなってしまい、状況が深刻だと悟った。
「倒れた!?」
「えっ、ヤバくなーい」
「た、助けに行こう。早く!」
私は急いで助けに行こうとした。なんだか体がそうさせたんだ。
けれどNightは手を伸ばして止めようとする。
きっと罠かもしれないと買い被っているんだろうけど、私はそんなの聞かない。今は助けることが先決だ。
「私は行くよ、二人はどうするの?」
「お前な、少しは罠を警戒して……」
「あはは、行くよ行く行く。ほら、NightもGOGO!」
「お、おい。背中を押すな。分かった、分かったから……うわぁ」
私が急かすと、Nightを連れてフェルノも急ぐ。
倒れたプレイヤーを助けるべく傍までダッシュ。
砂が足下を浚い、動きを鈍らせてしまうも、靴の中に砂が入って熱い中、強引に倒れたプレイヤーに寄り掛かる。
「あの、大丈夫ですか!?」
倒れていたプレイヤーに声を掛ける。
うつ伏せだったので、とりあえず体を起こす。
仰向けにすると、表情が非常に悪い。
青紫色になっていて、全身から汗が噴き出ている。
「ううっ……」
「よかった、意識はあるみたい」
「それはそうだろ。で、症状は?」
「そんなの分からないけど、とにかく苦しそうだよ」
倒れていたプレイヤーは少女だ。長い黒髪はポニーテールで結い、触覚部分が金色に輝いている。
見た目だけではなく格好も特徴的で、日本の武士の様に羽織を着ている。
腰には日本刀を携えており、足下の草鞋には砂がこびりついていた。
「こんな格好で砂漠に来たからだ。おい、大丈夫か? 返事できるなら何でもいいから声を出せ」
「Night、そんなぶっきら棒な」
「ううっ、あっ……」
「よし、声は出るな。瞼を上げるぞ……同行は開いていないか。体温は……高いな。この汗の量、まあ熱中症だろ」
「「熱中症!?」」
一番警戒していないとダメな奴だ。
まさか水分補給をしていなかったのかな? それとも途中で切れちゃったのかな?
どのみちこのままじゃ大変だ。いくらゲームの中とはいえ、現実にも影響が出るかもしれない。
「Night、なんとかできない?」
「流石に見過ごせないだろ。とりあえず応急処置をするぞ」
「「Nightさん!」」
Nightはインベントリの中からアイテムとを取り出す。
そこまでたくさんの相手身は無い。ましてや今イベントでは使えないポーション類で一杯。
それらを避けつつ、Nightが取り出したアイテムは、何処にでもあるようなものばかりだ。
「まずは簡単なテントを組むぞ。フェルノ、お前立てれるか?」
「えっ、テント? って、パラソルじゃん」
「今は日影が作れればなんでもいい。アキラ、お前は声を掛け続けろ。それと体温を下げるために、服を濡らせ。持って来た水、まだまだ残っているだろ」
「うん。ちょっとごめんね」
Nightは的確なマニュアル通りの指示を出す。
その間、Nightはアキラとフェルノに役目を与え、何やらアイテムを作る。
ポーション類が使えない。逸れなた代用できるものを作る。
「Nightはなに作ってるの?」
「点滴だ」
「「点滴!?」」
「完璧なものじゃない。あくまでも代用品だが、これくらいしかできないからな」
「「いや、これくらいの範囲を超えているような気も……」」
「なにか言ったか?」
「「なんでも無いです」よー」
アキラとフェルノが驚くも、Nightなら全然できそうだった。
【ライフ・オブ・メイク】で簡単に作ったペットボトルの中に水筒の水を移し、食塩を少しだけ混ぜる。人体に影響の出ない範囲の点滴を生み出すと、何処から取り出したのか、長めのチューブを用意した。少女の腕に突き刺すと、トクントクンと点滴が体内に入る。
果たしてこんなこと、資格も無い人が見様見真似でやっていいのかな? ダメだと分かっていながらも、止めることはできなかった。
「ここまでやったんだ。後で礼は弾んで貰うぞ」
「「Nightさーん」」
「冗談だ」
Nightの台詞が冗談に聞こえてこない。
無償で助けてあげる気が無いのか、それともコレを使って脅すのか。
何だかNightっぽいと思うけど、今は必要なものを・必要なことをするだけ。とにかく分かるのは、ゲームの中でも熱中症になるから気を付けないとダメってことだった。
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