◇10 VSラクーン
ラクーンってなんでしょうか?
正解は……
——レベルアップ! “アキラ”のレベルが3になりました——
——ドロップアイテム獲得! 甲冑蟲の角を獲得しました——
そんなアナウンスが鳴ってていたので、私はステータスを見てみる。
すると同時に私のスキルも反応した。
如何やら【キメラハント】が、また新しいスキルを手に入れたらしい。
——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しました——
——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、甲冑蟲:【甲蟲】を追加しました——
「ん? 【甲蟲】ってなに?」
当然の疑問が上がった。
とりあえずステータスを確認してみる。
■アキラ
性別:女
種族:<ヒューマン>
LV:3
HP:120/120
MP:120/120
STR(筋力):23/20
INT(知力):23/20
VIT(生命力):23/20
AGI(敏捷性):23/20
DEX(器用さ):23/20
LUK(運):23/20
装備(武器)
武器スロット:〈初心者の短剣〉
装備(防具)
頭:
体:
腕:
足:
靴:
装飾品:
種族スキル:【適応力】
固有スキル:【キメラハント】+{【半液状化】,【甲蟲】},【ユニゾンハート】
確かにレベルアップしたことで、ステータスが向上していた。
けれどこの新スキル、【甲蟲】ってなんだろう。
私は詳細を確認してみる。
固有スキル:【キメラハント】+【甲蟲】
条件:【キメラハント】使用中、【甲蟲】の使用を強く意識する。
説明:【キメラハント】に追加された、甲冑蟲の能力。両腕から拳までに掛けて、強靭な籠手を装備することができる。物理攻撃力を上げることができる。
「強そう? あれ、これって短剣が要らないってこと?」
この説明を見る限り、私は何となくそんな気がした。
けれど蟲の能力を身に纏うなんて、ちょっと気持ち悪い。
私は別に虫はダメじゃないけど、生理的にゾワッとした。
「ううっ、どうしよう。もうちょっとだけ行ってみようかな?」
とりあえず初めてのVRゲームの調子は上々。
丁度スタットーンの中腹まで来れた。
それだけで充分で、私は切り株から腰を上げた。
「よし、帰ろ……ん?」
私は来た道をもう一度戻ろうとした。
しかしここまで来た道は無くなっている。
私は首を捻るのだが、反対側には道があった。
「もしかして、私森に閉じ込められた?」
一度来た方向に足を運ぶ。
そこには木々が生い茂っていて、本来あった筈の道を塞いでいる。
しかし少し目線を変えれば、木の裏側に道ができている。
無理をすれば通れる。だけど葉っぱがチクチクしていて、私は通りたくなかった。
「こんな薄着じゃ通れないよ。あっち、行くしかないのかな?」
こうなった以上、反対側の道を進むしかない。
私は森に惑わされていると分かりながら行く神経に虫唾が走る。
絶対にこの先何かある。
全身が身震いすると、短剣を握っていた。
「なにもいないよね?」
正直、回復アイテムは何も無い。
甲冑蟲に苦戦したので、今は無駄な戦いはしたくない。
そう思いながら別方向に出口があると期待して、私は唯一の道を進んだ。
「進んでみたけど、なんにもない?」
私は警戒していたけれど、それも一瞬出過ぎてしまった。
と言うのも、来た道よりも開けた道で、おまけにモンスターの気配もない。
私は警戒したことを損に思うと、呑気な調子で先に進む。
「斜面もキツくなって来たけど、もしかして頂上かな?」
ここはあくまでも森だ。スタットーンと言う場所のことを考える。
確かに高い位置にはある。けれど山と言うにはかなり低く、ハイキング程度だった。
けれどここまでモンスターと戦って来たからか、多少なりとも疲れている。
「流石に今はもう戦いたくないかな……なんて」
私はフラグのようなことを呟いた。
すると空から何かが落ちてくる。
「シャー!」
「えっ、フラグじゃないのに!?」
落ちてきた場所は空じゃなかった。
けれど高い所からは間違いなく、私は短剣を取り出す。
落ちてきたモンスターはムササビの様に皮膜を広げると、鋭い爪を使って私のことを襲う。
「ちょっと止めてよ!」
私は短剣を振り上げると、突き付けて攻撃する。
しかし皮膜で風を捉え、上手い具合に上昇気流に乗る。
私の短剣攻撃を容易く躱すと、頭上を取って爪を振り下ろした。
「シャッ!」
「痛い!」
顔を裂かれて痛かった。
赤いエフェクトで爪の痕が一瞬出ると、私のHPは減った。
今の攻撃で二割。結構ピンチだ。
「ううっ、痛い……一体なんなの?」
私は目を凝らしてモンスターを特定する。
その姿はムササビの様。だけどそれは違った。
特徴的な縞模様が目立っていて、狸の様な顔立ち。
鼻筋に白い線は無いからか、私は戸惑って口走る。
「もしかして、アライグマ?」
私がその事実に気が付くと、モンスターの名前が表示された。
ムササビのような皮膜を持って空を飛ぶアライグマ=フィルム・ラクーン。
私の頭上を乗り越え、黒い爪をギラつかせると、顔面目掛けて飛び掛かって来た。
「シャァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。うわぁ!」
私は短剣で防御しようとした。
とりあえず顔だけは守ろうと、タイミングを全力で見計らう。
しかしフィルム・ラクーンが飛び掛かると、爪が短剣を掠めて、私の手の中から弾き飛ばした。
「ヤバい、どうしよう……」
私は短剣を失い、私はあたふたする。
しかしそんな私を嘲笑うみたいに、フィルム・ラクーンは襲い掛かる。
そこまで速くはない。だけどスライムになって逃げる間もない。
飛び掛かられてしまい、攻撃される寸前、私は頭の中にイメージが湧いた。
(そうだ、さっき手に入れたスキルなら……)
私はフィルム・ラクーンが飛び掛かる瞬間に合わせる。
頭の中で強いイメージを持つと、言葉が口から放たれていた。
「【キメラハント】+【甲蟲】!」
私がそう叫ぶと、両腕が変化した。
形が変わった訳じゃない。
けれど確かなことは、私の腕を手の甲に掛けてまで緑色の籠手が装備された。
それはいわゆるガントレットって奴で、私は咄嗟に拳を繰り出す。
「おらぁ!」
私の拳はフィルム・ラクーンの頭に叩き込まれた。
強烈な一撃で、フィルム・ラクーンは軽く吹き飛ばされた。
後ろに向かって吹き飛ばされると、木の幹に叩き付けられて、HPが一気に減った。
「あ、あれ?」
するとフィルム・ラクーンは動かなくなってしまった。
目を瞑って繰り出した攻撃だったけど、如何やら急所に入ってクリンヒットだったらしい。
ピクリとも動かないので、私は怯えるが、フィルム・ラクーンは粒子になって消滅した。
「もしかして、倒しちゃったの? ええっ、ええっ!?」
頭を抱えて困惑する。
けれど今回はレベルアップもしない。
ましてやドロップアイテムも無く、正直よく分からなかった。
「倒したんだよね、倒せたんだよね?」
私がフィルム・ラクーンに近付こうとした。
するとアナウンスが鳴る。
レベルアップはしておらず、ましてや何も貰えていない。
だけど私にはこれがある。そう、【キメラハント】が新しいスキルを獲得できたのか。私はニヤリと笑みを浮かべると、楽しみになっているせいもあり、ワクワクした。
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