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◇1 始まりの邂逅

本作品は、カクヨム様・アルファポリス様にて投稿中の作品を再構成し直したものになります。

VRものが好きな方、そうでない方、くだらない少女達の日常をお楽しみください。

 今日の授業も無事に終わった。

 特に何事もない日々を送り、いつも通り帰りのHRも過ぎた。

 早速に荷物を鞄代わりのリュックサックに詰め込むと、背中をポンポンと叩かれる。


明輝(あきら)、ちょっといい」

「ん? なに、烈火(れっか)?」


 振り返ると中学時代からの親友の加竜烈火(かりゅうれっか)が私のことを呼んでいた。

 またいつものことかな? と軽い談笑程度に考えていると、烈火はニヤッと笑みを浮かべる。

 私を何かに誘う時の顔だ。頬を掻きながら時計をチラ見すると、烈火は待たずに喋り出す。


「コレ見てよ、コレ」

「コレって? ゲーム、機?」

「VRドライブだよ。しかも最新のさー」


 スマホを取り出し、烈火が見せてくれたのは、大手企業らしい、エルエスタ・コーポレーション製のVRドライブだった。

 公式HPの画像で、黒色でカッコいい。

 けれどゲームにあまり今日の無い私には、そこまでの魅力を感じなかった。


「これがどうしたの?」

「どうしたのじゃなくて、カッコ良くない?」

「カッコいい気もするけど……私は興味無いかな」

「えー、この魅力が分からないなんて、明輝って乗り遅れてるなー。今って、遅れを取り戻す現代社会だよ?」

「そんなこと言われても、私、平凡だから」


 明輝は少し涙目になって目を伏せた。

 すると烈火は私の肩をポンポン叩く。

 励ましてくれているみたいだけど、こんなことになったのは烈火のせいだ。

 だけど私は意識を切り替えると、頭の中で無かったことにした。


「それでなんだけど、今度このゲーム機の再販分が届くんだよー」

「再販なの?」

「そうそう! この間の抽選落ちちゃって、だから二回目の予約抽選を無事に通って嬉しいんだー。ねっ、明輝も遊ぼうよ!」

「うーん、私はいいかな。予約もしてないし、そもそもゲームなんて」

「大丈夫! 私が遊ぼうと思ってるのはね、Creatures Unionってゲームなんだ」

「えっ、な、なに?」

「Creatures Union。ここ三ヶ月、ううん、この先ずっと遊べる人気ゲームは明輝でも充分楽しめるからさー、ねぇー、三回目の予約抽選も来るから、一緒に遊ぼうよー」


 烈火は私の腕を乱暴に引っ張った。

 ブンブン振り回され、まるで子供のよう。

 私は困り顔を浮かべるも、烈火の気持ちを組んで首を縦に振った。


「うん、いいよ」

「えっ、本当に!?」

「でも、三回目の予約抽選だっけ? まだ先なんでしょ、それに通るかも分からないから、いつになるかは分からないけど」

「大丈夫大丈夫。私が引っ張ってあげるからさー」


 烈火は絶えず楽しそうで、明輝はもはや逃げられなかった。

 頬を掻くのを止めて蟀谷に変えると、頼もしい烈火に任せることにした。


「それじゃあ、その時はお願いするね」

「うん、任せてよ」


 頼もしく胸を叩く烈火だった。

 私は毎日が楽しそうな烈火を見て少し嬉しくなると、いつも通りの日々だと感じた。

 特に何事も無い日。そんな毎日を送っていること。

 何処か停滞感のある寂しさも零しつつ、私達は荷物をまとめ、下校した。



「ふーん、こういうゲームなんだ」

「そうそう。でもこれ動画だから、実際に遊んだ方が絶対楽しいよー」

「それは、そうだと思うけど」

「VRゲームかー、ワクワクするねー」


 私は烈火と一緒に下校していた。

 スマホで動画を観ながら帰っていると、烈火はずっとCreatures Union=通称CUの話で持ち切りだ。

 そんなに面白いゲームなのか分からない私だけど、プレイ動画を観ていると、凄いクオリティの高さだと客観的に感心する。

 けれどそれ以外のことは事前情報をほとんど知らないので、私はなんとも言えなかった。


「CUはヴァーチャル・リアリティだからね。かなり昔の技術らしいけど、今の時代と大差ないね」

「うん。ここ最近の技術は昔とあまり進歩していないみたいだからね」

「それって何処情報?」

「テレビのニュースだよ」

「へぇー、ニュースなんて観ないなー」


 烈火はつまらなそうに返した。

 如何にも私は少しだけ真面目なくらいで、今時テレビでニュースを観る人は少ないらしい。


「烈火、なんだか私が変みたいに聞こえるよ?」

「変じゃないけど、真面目だなーって」

「私、別に真面目じゃないんだけど、烈火にはそう見えるんだ」

「見える見える。だってさ、もう何年も一人暮らしなのにちゃんと生活してるでしょ?」

「な、慣れだよ。それにお母さん、ずっと帰って来ないから。忙しいの、分かってるけどね」


 私の母親はなかなか家に帰って来れない。

 それも当たり前で、海外で働いている。

 有名な大学の教授であり、冒険家、本当に自由人で、連絡を取ることも今では滅多に無かった。


「ごめーんね。あっ、そうだ! 明輝、この後予定ある?」

「予定? うーん、卵は昨日買って、ご飯は作り置きしてるから大丈夫で……うん、無いよ!」

「そっか、それじゃあ家でゲームして遊ぼ。格ゲーだけど、いい?」

「いいけど、すごろくじゃないんだね」

「すごろくじゃ、明輝に勝てないでしょ? だからやらないのーだ。後、じゃんけんも禁止ね」

「あ、あはは、私そんなに強くないのに」


 烈火は負けず嫌いだなと私は思った。

 それから先を行く烈火の背中を追い掛けると、近くの公園を通る。

 ここまでは私と烈火は同じ道を通る。

 けれどふと公園を通った時、視線が公園に咲く桜に奪われた。


「あっ、まだ桜咲いてるね」

「うーん? うーん、そうだねー」

「烈火、興味無い?」

「明輝もそんなに無いでしょ? って、誰か居る。なにしてるんだろ」


 公園に咲く一本の桜の木。

 その近くで一眼レフカメラで写真を撮る女性を見かけた。

 普段見かけない女性で、私と烈火は目を奪われるが、それでもすぐに視線を避ける烈火とは違い、私は凝視してしまった。何故かは知らないが、運命的な出会い感が強かった。


「明輝、早く行こー」

「うーん、あの人、どうして桜の写真を撮ってるのかな?」

「えっ、そんなの桜が好きだからでしょ?」

「この公園の桜、そんなに有名でも無いのに?」

「そういう人も居るって話だよー。ほらほら、早く行こー」


 烈火は明輝の腕を引いた。

 圧倒的な力の前に私は成す術もない。

 アスファルトの上に足を付けたまま引っ張られると、そのまま烈火の家に向かうのだった。


(なんで、気になるんだろ?)


 私は首を捻りながらも、写真を撮り続ける女性に吸い寄せられる。

 すると女性が写真を確認しながら、チラッとこっちを見た。

 気がする程度なのだが、ふと笑みを浮かべたように見え、私は不思議な感覚に浸っていた。

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