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六、大潮。海を渡る

 海の道渡る。


 その日の夜、受雷と真美は自転車でヤジリ浜へと出かけようと神谷荘をでようとする。

 

 すると、

「お兄ちゃん」

 玄関には紬と和子がいた。

それに紬の息子で和子の父の武利もいた。


「乗れ」

 武利は無愛想に顎を動かし、2人に軽トラへ乗るよう伝える。


「どこに?」


「荷台だよ」

 和子は荷台に飛び乗った。


「町でこんな事やっていたら捕まるぞ」

 受雷は呆れた顔で言った。


「ここは島さー」

 和子は笑った。


「よいしょ」

 真理は荷台へと飛び乗る。


「はいはい」

 彼は肩をすくめ彼女に続く。


「受雷」

 紬は助手席乗り込みつつ、荷台の受雷に声をかける。


「ん」


「行こう」


「わかった」


 軽トラは夜道を走り出した。

 真美は暗がりの中、懐中電灯、スコップ、袋や毛布を見た。

 受雷も和子も黙っている。

 そういうことなのかなと思いつつ、彼女は空を見上げた満天の星が輝いている。


 ヤジリ浜に辿り着くと、大潮の影響でアフ岩まで砂浜が広がっていた。

 紬と武利は車に残り、3人は波の音だけが聞こえる夜の砂浜を歩いた。

 月明かりに照らされて白砂が青く光っている。


「行ってみよう」

 受雷の言葉に、

「うん」

 真美と和子は頷き、海の道を渡る。


 歩いてヤジリ浜からアフ島までの中間、先頭を歩く受雷が歩みを止めた。

「そういうことか」

 彼は呟く。


「・・・お兄ちゃん」

 和子はその場にしゃがみ込み動けなくなる。


 受雷は腰をおろすとその場で両手を砂浜にあてた。


「君のメッセージを聞かせろ!」

 静寂の海で彼の声が響く。

・・・・・・。

・・・・・・。

 しばらくのち、受雷はゆっくりと言った。

「ここだ」


 3人は一旦、軽トラへと戻り、武利を連れて海の道へ。

 紬は軽トラを降り、その方角へ向き祈りを捧げている。

 一方、受雷と武利はその場所にスコップで砂を掘る。

 風は凪ぎ、じんわり身体中に汗をかきはじめる。

 1mほど掘り進めると、変わり果てた彼女が出てきた。


「・・・葵さん」

 真美は目に涙を浮かべている。

 和子は目を反らさずじっと見ている。

 受雷と武利は無言で彼女の遺体に毛布をかぶせ、手を合わせた。


 受雷は右手で彼女に触れた。

「ダイブ」

 鎮魂探偵受雷は語りかける。

「うん、うん、よしっ、よしっ!・・・うん、わかった!」

 波の音に受雷の声が重なり響く。

「こんなんでましたけど~」


(相変わらず、しまらないな・・・けど、それが受雷さん)

 真美は思った。


「受雷さん」と、真美。

「お兄ちゃん」と、和子。

「受雷」と、武利。


「ああ、分かった。すべて」

 受雷は再び手を合わせ、立ち上がると振り返る。


 海の道を一人、歩いて来る男がいた。


「謎は解けましたよ。牧田理一郎さん」

 受雷は今回の依頼主の名を呼んだ。



 ついに。

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