飛行少女
わたしは飛行少女、空を飛ぶ女の子
どこまでも 高く 高く 高く
誰よりも 速く 速く 速く
わたしは誰よりも優れていて
だから誰からも遠ざけられた
わたしはひとり
いつでもひとり
でももう慣れっこだからいいの
そう思っていた
ある日わたしにともだちができた
誰もいない屋上でひとりお弁当を食べていたら声をかけられたのだ
それから毎日その子とご飯を食べた
その子はわたしほど優秀ではなかったけど
わたしの次に優秀だった
だからお話してても飽きなかった
夢のように楽しい毎日だった
いつからかわたしはクラスメイトたちからいじめられるようになった
でもいいんだ
ともだちのあの子だけはわたしの味方だったから
わたしはずっとその子といっしょだった
お昼は毎日屋上でふたりきり
お弁当の具の交換をしたり食べさせ合いしたり
わたしの日常はとても充実していた
わたしがわたしでいられるのは彼女のおかげだ
ある日の昼下がりわたしはいつものように屋上で彼女とふたり
その日のわたしは落ち込んでいて前を向けないでいた
彼女は暗く落ち込むわたしの背中を押した
わたしは重力を感じながら落下し数秒後には地面に衝突した
そして天へと昇った
その途中彼女の声が聞こえた気がした
それは誰にも聞かせるつもりはなかったのだろう
とても小さな声でこぼれた
「これで私が一番」
わたしは飛行少女、空を飛ぶ女の子