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「あっちにいるのはお兄ちゃん?」
砂場に居るもう一人の男の子と、ベンチに座っている男の人。
「うん。二人ともお兄ちゃんだよ! この洋服もね、お兄ちゃんの洋服なんだよ」
「でもね、本当はこの洋服着たらダメなんだー」
そう言って、自身が着ている洋服を引っ張りながら話す。
恐竜のイラストが載った長袖に普通の長ズボン。
何がダメなんだろう?
「何でダメなの?」
「お母さんがね、あなたは女の子なんだからダメ! って言うの。本当はお兄ちゃん達みたいな洋服が着たいのに」
服装と髪の短さで男の子だと思ってたけれど、女の子だったのか。
「でも、今日はお母さんがいないから、お兄ちゃんが内緒で着せてくれたの」
そして、自分と似ている。
「そっか、優しいお兄ちゃんだね。その洋服も似合ってるよ」
その子の頭を撫でながら伝えると、
「ふふっ、ありがとう」
くすぐったそうに笑った。
先程まで出ていた自分の涙もいつの間にか止まっていた。