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蜃気楼がある

作者: うつうつら
掲載日:2023/09/10

君が見えて、100m先の君の声が届くまで僅か約0.3秒。

僕は時々考えてしまう。0.3秒後、そこに君がいない未来を。


蝉の声が街に響く夏の頃。

君は突如として現れる。必ず「あっ」と声をあげ、手をふる。

うだる暑さのせいで水分も体力もなく、ただ君の姿を見つめることしかできない。

なぜ、そんなにも元気なのか。なぜ、そんなにも君は…。


綺麗なのか。


僕の灰色の世界の中で唯一、色があり、光が反射してきらきらと輝いている。

近づかないでほしい。

君の隣で歩く資格がないから。

声をかけないでほしい。

ともに話す勇気がないから。

これ以上、僕の心を惹きつけないでほしい。

君は僕の心配をよそに「いいじゃん」と笑ってくる。

ほんと、やめてほしい。


このままでは好きになってしまう。


視界がゆがむほどの現実では何が本物なのか分からない。

今、見えているものが幻覚であっても、幻想であっても、

確かめるすべを僕は持っていない。

今にも消えてしまいそうな白い肌。

ラムネ瓶を詰め込んだような瞳は今日も僕に語りかける。

心が躍る夏の思い出を。

君の話は水のように僕の喉を潤す。


まだ、別れたくない。


その思いが強くなるにつれ、一日の時間は早く進む。

君と会える時間は決まっている。

残る時間はもう少ない。


走ってきた君は泣いている。

いつもと同じ場所、でも、いつもと違う時間。

外に出るなと言われた君は抜け出してきた。

消えかかる声は言葉にならない。


僕は君の頬に触れられない。

君の腕を引いて走れない。

抱きしめることも許されない。


でも、

笑顔は届く。

音は届く。

色は届く。

光は届く。


君はとても笑顔が似合う。

僕は君の思い出を大切にする。

暗い道なら僕が照らすよ。

この思いは幻じゃない、本物だから。


きっと、伝わる。



蝉の声が街から遠のく夏の頃。

君は突如として現れる。「あっ」と声をあげ、手をふる。

君が見えて、声が届く0.3秒、僕は君を見つめることができない。

消える前に残したメッセージ。

暑さが残るコンクリート。

水で書いたこの文字は、消える前に君へ届くだろうか。



君は綺麗だ。

日食なつこさんの「蜃気楼ガール」を聞いたのち、書いています。

興味がある方はぜひ、聞いてみてください。

https://youtu.be/P4ez2kwJ0kA?si=N9Tyv5_RcKJa5RIs

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