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四 手のひらドリラーa

 異世界モノで他人から評価されない主人公ってのは、たいてい周囲からバカにされてたり過剰に貶されたりするわけだけど、現実だとそういうことはそうそうない。

 だって人が多すぎるから。


 冒険者の街グラールには、総勢一万人程度の冒険者がいる。

 Bランク以上――魔力操作が可能な一流冒険者という括りでも、百人近い冒険者がいるのだ。

 その中で、評価されない私の知名度なんて、下から数えればすぐってくらい低い。


 だから、私をバカにする周囲の人間なんていないし、そういう人間と関わる機会がない。

 一つ可能性があるとしたら、新人の冒険者と一緒にクエストを受ける事があった場合、だろうか。

 新人冒険者にとっては、Bランクの冒険者なんて雲の上の存在だ。

 そして、新人冒険者というのは派手でわかりやすい冒険者が好きだ。

 そんな新人冒険者に、「玄人好みないぶし銀」が評価されないのは不思議なことじゃない。


 でもいいじゃないか、玄人好みっていうのはそういうものだ。

 多くの人からの評価は望まない、自分が好ましいと思う相手に、相手からも好ましいと思ってもらえればそれでいい。

 そもそも、新人冒険者のクエストを一緒に受ける機会なんてそうそうないし、あってもお互いのことなんてほとんど理解しないまま別れてしまうのだから。

 なにせ、私は彼らと一緒に仕事をするわけじゃなく、彼らの仕事に付き添って手伝いをする立場だ。


 前に上げた不人気依頼の一つ。

 新人向けクエスト。

 今ではほとんど受けないといったけど、決して受けないわけではない。

 新人冒険者が受けたクエストに“付き添い兼護衛兼監督役”として同行することもある。


 果たしてどんなクエストに同行するのか?

 一言で言えば、『下水道掃除』だ。

 もう名前だけで悪臭と過酷な労働がイメージ出来てしまうクエストである。


 そして今回、私はそのクエストを受けることになった。

 普段なら、簡単に仕事の内容を説明し、掃除の仕方を実演して後は新人たちが仕事を終えるのを監督しているだけの簡単な仕事なのだが――



 今日は、少しばかり普段と様子が違った。



 **



「はじめまして、クロナ先輩。アタクシは冒険者パーティ“進む光”のリーダーで、ロロですわ。今日はよろしくおねがいしますの」


 今日は、そんな下水道清掃の依頼を受けた新人冒険者パーティの付き添いをするべく、私はギルドへやってきていた。

 そうして色々と手続きをすませると、件の冒険者パーティ“進む光”と顔合わせをすることになった。

 お互いに挨拶をすませ、軽く打ち合わせをしたらこのまま下水道へ向かうことになっている。


「クロナだよ、冒険者ランクはB。よろしく」

「Bランクの冒険者に監督していただけるなんて、光栄ですわ」


 そうやって、リーダーのロロと握手を交わす。

 なんというか、とてもしっかりした雰囲気の子だ。

 年の頃は私より一つか二つ下、一般的にこの世界の成人は十五歳で、冒険者になるのもそれくらいの年齢からだから、おそらくは十五歳。


 しかも、めちゃくちゃ顔がいい。

 燃えるような赤髪の、リンとした美人である。

 意志の強そうなツリ目と、スラッとした長身でスタイルも抜群。

 どこか顔にあどけなさがあって、少女らしい可愛らしさも感じさせる彼女が道を通り過ぎれば、多くの人が思わず振り向いてしまうだろう。


 そういう、一言で言えば華のある冒険者。

 ひと目みて解ってしまう。

 彼女はすぐに大成する。

 冒険者として、あっという間に誰もがその名を知る有名人へとなってしまうだろう。


 私とは生きる世界の違う人。

 まぁ、今は私のほうが先輩だし高ランクの冒険者だ。

 先輩風邪、ふかしていきましょうかねぇ。

 へくち。


「こちらが、パーティメンバーのイチハ、ニト、ミツキ、シノ」

「よろしくね」


 “進む光”のパーティメンバーは総勢五名。

 イチハとニトが男の子で、ミツキとシノが女の子だ。

 全員、顔がいい。

 そして纏う雰囲気も、ロロに近い。

 これまた、ひと目みただけで解る。

 彼らもロロと同様に、あっという間に大成する。


 これは、あれだ。

 つまり、えっと。

 あれだ。


「早速ですけれど、今回の清掃クエストのプロセスを確認してもいいかしら?」



 ――意識高い人だ!

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