十九 私だけが知っている。b
「お姉様! アタクシ達これから、偶にですけれど一緒にパーティを組むことになりましたの!」
「が、頑張り……ます」
そうして、ロロとコノハの元へ戻ったら、いつの間にか諸々のあれやこれやが解決していた。
まってまって話が早すぎてついていけない。
「えっと、つまり……どういうこと?」
「コノハさんには、時折臨時のパーティメンバーとしてパーティに参加してもらうことになりましたの。コノハさんは人付き合いが苦手とのことですから、これでちょっとでも慣れていってもらいたいのですわ!」
なんてこったい。
ロロは完全にコノハの問題点を把握していた。
いつの間に? 私が見ている間では、ロロとコノハはどこかコノハがよそよそしく壁を作っていたはずなのに。
一体いつ、距離を縮めたのだろう。
っていうか結構距離が近くない?
百合の花が咲いてない?
お姉様って呼ばれてる私より近かったりしない?
じぇらら……
「なるほど、固定パーティだと色々と問題も起こるかもしれないが、臨時パーティならそれも大きな問題にはならないか、いいんじゃないか?」
「……っ!!! あ、ありがとうございますわ、アスノ様!!」
私が変な嫉妬心を心の薪にくべている間に、師匠がロロ達の方針を褒めていた。
師匠? 師匠まで私から大切な人をNTRっていくつもりですか?
いくら師匠でも、NTRはダメですよ、NTRは……
じゃない!
実際のところ、パーティを臨時で組むというのは大正解だと思う。
固定パーティに臨時で入る助っ人というのは、別に珍しい立場ではない。
私の場合は殆ど無いけれど、師匠とかは結構、他のパーティと組んで行動することも多い。
師匠の英雄譚には、そういう別パーティとの合同クエストで起きたことも含まれているのだ。
ただ、特定のパーティにだけ、臨時で参加する助っ人というのは珍しい。
コノハの場合、しばらくは“進む光”でだけ臨時の助っ人をすることになるだろうが、彼女のことを考えれば何れは助っ人するパーティを増やしていくのがいいだろう。
「それに、色んなパーティの助っ人をすることを前提に、普段はソロで活動する冒険者も結構いる。コノハは、そういう立場で信頼できるパーティを少しずつ増やしていくのが理想だろうな」
「は、はい……深い人付き合いが苦手でごめんなさい……」
「もう、そんなこと言わないでくださいまし! コノハさんはとっても善い人なのですから、すぐにコノハさんの良さを多くの人が解ってくれますわ」
ってああー!?
私が考え事をしている間に、三人が何かいい感じに話をまとめ始めている!?
やめて! NTRはまぁ癖の話だからともかく、のけものにされると私は死んでしまうぞ!!
「それに……」
「……あ、はい」
「ふふ、そうですわね」
三人の心が通じ合っているのを感じる。
私以外の三人が友情を深めているのを感じる!
イチャイチャの種を感じる――――!
「――ク、クロナ先輩」
と、そこで三人の視線が私に向いて、コノハが私の名を呼んだ。
え、何? 勝手に脇で変なことを考えていたのがバレた?
私があまり考えなしだということがバレた!?
「こ、これからもよろしくお願いします……ね?」
「え、あ、うん。こちらこそよろしく……」
普通によろしくされてしまった。
不束者ではないので、コノハはまだ未婚だ。
私は何を言っているんだ?
さっきから変なことばっかり考えているので、思考が変な方向に行ってしまっているのを感じる。
「全く、何を呆けているんだ、君がしっかりしないとダメだろう、クロナ」
「師匠?」
「なにせ、コノハくんの方向性をこうしていい感じに纏めたのは、君がコノハくんとロロくんを巡り合わせたからだろう」
「あ……」
なるほど。
確かにコノハとロロは、住む世界が違いすぎて何かしらの偶然がなければ巡り合うことのなさそうな二人だ。
それこそ私の介入がなければ、道端で落とし物を拾うとか、そういう運命的な何かが必要になる。
「そうですわ、お姉様! アタクシ、こうしてお姉様と出会えてとても幸運だと思っておりますの!」
「ロロ……」
「ですからこれからも、お姉様と仲良くしたいですわ!」
つまるところ、この三人……私を含めて四人は。
私がいなければ、出会わなかった四人なわけだ。
だから、私をのけものにするなんてのはむしろ逆、絶対にあり得ない。
NTRとか、イチャイチャの種とか、そういうアホみたいなワードで適当言ったけど、それは単なる私の思い違いというわけだ。
「く、クロナ先輩とも、一緒にパーティを組んで……い、色々なこと、教えてもらいたい……ですっ」
「コノハ……もちろんだよ。まぁあんまり教えることもなさそうだけど……」
「え、あ、う……が、頑張ります」
多分教える前に一人で理解しちゃうんじゃないかな、と思わなくもないけれど。
コノハの言葉はとても嬉しい。
先輩として、コノハの成長を見守ると決めた身として、とても光栄なことだ。
だから……
「コノハも、ロロも、もちろん師匠も……」
私は、三人に笑顔でこういった。
「これからも、よろしくお願いします」
三人も、それに笑顔で首肯するのだった。