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十五 そして四人が集うc

 こうなってくれば、ロロも話に加わってくるのは自然な流れで。

 特に「私が面倒を見ている新人冒険者」という点での食いつきは非常に良いものだった。

 自分と同じ立場の冒険者って時点で、それなりの興味を抱くのは当然である。

 こういう時、ロロが全肯定系光のオタクであることは非常にありがたく、コノハを前にしたロロが、


「とても嬉しいですわ! アタクシと同じように、お姉様を慕う冒険者の方が他にもいらっしゃるなんて!」


 と喜んでくれたあたり、本当にロロはいい子である。

 なおコノハは新たに現れた陽の気に満ちた美少女相手に「あ」しか言えなくなっていた。

 解るよ……


「つまり、お姉様とコノハさんに、それから、あ、あ、あ、あ、アスノ様の三人でクエストを受けるんですのね?」

「そういうこと。師匠なら、今丁度いい感じのクエストがないか見繕ってるよ」


 この時間だと、あまりいいクエストはないだろうけど。


「そういうロロは、どうして一人でここに?」

「クエストが終わって、その達成報告に来たんですの。パーティの皆さんは、一足先に宿へ戻っておりますわ」


 ふうむ、と考える。

 前に聞いた話だと、“進む光”はクエストを達成した次の日は休みだという。

 そして今日は週の末。

 具体的に言えば明日は前世で言う土曜日、そして明後日は安息日だ。

 安息日はよっぽどの理由がない限り“進む光”も休みを取るというから。

 だったら――


「……ねぇロロ」

「はい、何でしょう」


 今日は、コノハの紹介――というか、コノハが勇者であるということを話してみるだけのつもりだったけど。


「クエスト受けるの、たぶん明日になるんだけど。……ロロも来る?」

「行きますわ」


 即答だった。

 私が前に、師匠のことを知っているかと問われた時くらいの即答だった。

 つまりそれくらいの熱量だった。


「多分一日で終わるし、同じ新人……と言ってもどっちも同じくらい新人と思えないくらい優秀なんだけど……新人がいれば、コノハも学ぶことは多いとおもうからね」

「あ、あ、あ、あ、あ、は、はひ」

「落ち着いてコノハ」


 相変わらずコノハははひはひしていた。

 いかん、このままではコノハが溶けて消えてなくなってしまう。

 こうなることもあって、やっぱりロロのパーティとコノハは向いてないよな。


「コノハさん、大丈夫ですの?」

「あ、えっと、あ、はい、よ、よろしくお願いします」

「ふふ、コノハさんは変わってますのね? 落ち着いてくださいまし、アタクシは焦ったりはしませんわ」

「……あ、はい」


 ニコリ、とロロが微笑むと、過呼吸気味だったコノハは、それでようやく落ち着いたようだ。

 一つ息を吐いて、残っていた飲み物を飲み干す。

 これはなんていうか……

 百合の香り?

 いや違うな。


 さて、ここまではよし。

 ロロを誘うことは、私達にとってメリットが多い。

 そして、ロロにとってもメリットが多い。

 まず私とクエストを共にすること。

 前々から、一緒にクエストに行こうと約束はしていたけど、この機会にその約束を果たすことができた。

 普段はロロがきちんと“進む光”の活動を優先しているから、なかなかそういう機会もないしね。

 次にコノハというパーティ外の新人と一緒にクエストができること。

 これが一番大きいだろう、それにコノハは戦闘面では優秀だから、きっとロロも驚くはずだ。


 そして――師匠とクエストを共にすること。

 これ、間違いなくロロにとってメリットなんだろうけど。

 やばいことにならない?

 大丈夫?

 ロロ、耐えられる?


 解らない……私はロロのオタク力を測りきれていない……


 そして、最後に。

 これに関しては推測なんだけど。


 ロロは勇者も推してるんじゃないか?


 冒険者の冒険が好きなら、勇者の冒険も好きである可能性は高い。

 そうなった時、ロロは果たしてどれほどの化学反応を起こすのか。

 計り知れないものがある。

 いや、そうだな……一つ思いついた。


 私は、魔力強化で聴力を強化する。

 何をしているのかといえば、足音を聞き分けているのだ。

 師匠の足音は身長のせいで特徴的だし、何度も聞いているから記憶している。

 聞き分けは簡単だ。

 何より師匠の足音だしね。

 師匠の足音はいいぞ。


 ――師匠は、こちらへ近づいていた。

 どうやらいい感じのクエストを見つけたらしい。

 なら、ロロにこの事を話すタイミングは今しかないだろう。


「そういえばロロ、ロロって勇者については詳しい?」

「勇者様ですの? もちろんですわ! 勇者シロナ様を始め、歴代の勇者様と魔王の戦いはアタクシ、全て記憶しておりますの!」

「すごいね」


 やっべ想像以上に好きだった。


「確か、先代の勇者様が誕生したのが今から百年ほど前でしたから、そろそろ次代の勇者様が歴史に登場するはずですわ」

「そ、そこまで知ってるんですね……」


 驚いた様子のコノハ。

 多分、勇者に対してこれだけ情熱を燃やす人を彼女は初めて見ただろう。


「それでね、ロロ」

「はいですの」

「――コノハが、その次代の勇者なんだ」


 できるだけ、サラッといった。

 できるだけ、サラッといった結果。


「――? ……? …………!!!????」


 ロロは、無言で百面相したまま、停止してしまうのだった。

 お労しや……

 そしてコノハは、困惑したままこちらとロロに視線を向けている。

 ごめん……


「……何をしているんだい?」

「あ、師匠おかえりなさい」


 そして、このタイミングで師匠が帰ってくる。

 狙いはこれだ、勇者の衝撃でロロと師匠の初エンカウントを有耶無耶にする!

 とりあえず、まずは師匠に事の顛末を話す。


「君は……なんというか」

「なんですか」

「まぁいい。いい感じのクエストを見つけてきたよ」


 そういって、師匠はクエストの内容が書かれた紙を見せてくれた。



「ランペイジボアの討伐、懐かしい響きだろう?」



 師匠の持ってきたクエストは――なんというか。

 結果的に、この四人で受けるのにある意味一番ふさわしいクエストかもしれなかった。

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