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十二 ですわ系お嬢様にも裏の顔b


「でも、土属性魔術は違いましたわ。土属性魔術って、イメージのハードルが低いんですのね」

「そうだね、流石はロロ、よく気づく。土属性魔術でできることって、現実的に起こりうる現象が多いんだ。だから、なにもないところから火や風を生み出すよりずっと簡単にイメージできるんだよね」


 例えば、石片の射出。

 アレはやろうと思えば魔術を使わずとも腕の力でなげることだってできる。

 だからたとえば頭の中で野球みたいに石片を投球するイメージを想像して魔術を使うと、狙いはともあれ簡単に石片を射出できるのだ。

 これが炎を手のひらから吐き出すってなると、果たしてどういうイメージをすればいいんだ? となって躓くことがある。


 だから、剣士が片手間で覚える魔術として土属性魔術は最適!

 なんだけど、そもそも剣士が土属性魔術の適性を持っていることは少ない。

 適性を持っていないのは人気がないからで、人気がないから土属性の便利さがイメージとして浸透しない。

 イメージとして浸透しないせいで土属性の人気は更に下降し、適性のある人間も少なくなる。

 マイナスのスパイラルに突入してしまうのだ。


「それにもう一つ、土魔術の練習を始めると気づきがありましたの」

「それは?」

「後衛からの視点ですわ。魔術というのは基本的に後ろから仲間を見ながら使うものですものね」

「確かに、ミツキやシノがどういう考えで動いているかを、学べたわけだ」

「そういうことですわ。やはりこうやって、何かを学ぶという経験はとても得難いものですわね」


 そうだね、とうなずきながら私はこの子達の優秀さを改めて認識する。

 学ぶこと自体に得難い経験を見いだせる人間というのは、やはり希少だ。

 “進む光”は全員がそれを自然とやってのける人たち。

 ロロが「あまりにもパーティに恵まれすぎている」と思うのも納得しかない。


 では、そこに才能は間違いなくあるけど、自己評価最悪なコノハを挟んでみよう。

 果たしてうまくいくだろうか――



 絶対に無理だ――――!!



 どうかんがえても上手くいくわけがない。

 というか、私でも無理だ。

 私は自分で言うのもあれだけど、努力の方向性が他人とは違う。

 やる気のある時は、他人の何倍もやる気があると自負しているけれど。

 普段の生活はどちらかというとずぼらな方だぞ――!


 そう、問題はこれである。

 コノハが進む光とパーティを組めたら、コノハが変な奴らに騙される可能性はおそらくゼロになる。 

 でも逆に、コノハは進む光の優秀さに性格的に馴染めないし、進む光もコノハの自己評価の低さに遠慮してしまう。

 実利を考えればお互いの利益になることのはずなのに、性格面ではどう考えても破綻するとしか思えない組み合わせ。

 人間関係って難しい……!


「そういえばお姉様……一つお聞きしたいのですけど」


 と、少し考え事をしてしまっていた。

 今はロロとの会話に集中するべきだ。


「何かな?」

「お姉様は、冒険者のアスノ様のこともご存知でしたのよね?」

「うん、結構知ってる」


 師匠です、とは流石に言い出せないけど。

 師匠がまだこの街にいるなら、そのうち顔を合わせることもあるだろうな。

 アレから一度も会ってないけど、グラールの街は広いから会おうと思わないとそうそう会えないんだよね。


「アスノ様は素晴らしい冒険者様で、多くの方から人気がありますわ」

「ドワーフの冒険者って目立つしね、色んな場所を見て回ってエピソードも多いから、ここ最近の冒険者で一番話題性が多いのもあると思うよ」

「なんて的確な分析なんですの……!」


 って本人が言ってたしね。

 まぁ、私も概ね同意するからこうしてロロに話してるんだけど。


「やはりお姉様も……」


 それにしても、私は時折思うことがある。

 ロロの言動に関してだ。

 基本的に、ロロはすごく意識の高い優秀な冒険者である。

 頭の回転も早く、効率を重んじる合理主義者な側面もある。

 同時にその性格は善性が強く、まっすぐな気質の少女だ。


 だが、時折そんな彼女の言動に違和感を感じることがある。

 それは、彼女が他の冒険者に言及する時だ。

 彼女はそんな時、なんだか“何か”を抑えようとする様子を見せる。

 そして、何やらこちらに、探りを入れるような雰囲気も。


 その違和感の正体を、私は知っていた。

 というか、身に覚えがあった。


「あ、あの、お姉様! 今日の買い物なのですけど、どうしても寄りたい場所があるんですの!」


 意を決した様子で、ロロがこちらに呼びかける。

 私が感じるロロの違和感。

 それは――



「私と一緒に、冒険者ショップで、冒険者のグッズを見てほしいのですわ!」



 ――ロロが、冒険者オタクであるということだ。


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