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十二 ですわ系お嬢様にも裏の顔a

 なんだか知らないけれど、コノハをドン引きさせてしまったものの。

 コノハがこれからどうすればいいかは、改めて考えなくてはいけないことだ。

 今のところ、魔術に関して私が教えることはなにもない。

 というより、必要なことはコノハが自分で結論にたどり着いてしまうだろう。


 だったら後は冒険者としての経験と、それから彼女の場合は……人が善すぎるところが課題かな。

 自己評価が低いのはともかく、自己評価が低いにも関わらずあの慈愛の精神は、誰かに騙してくれと言わんばかりである。

 今までそういう人に狙われなかったのは、単純に装備が新人のそれだったからだろうな。

 顔もいいし胸もでかいけど、それくらいの冒険者ならグラールの街では他にもいるんだから。

 わざわざお金のなさそうなコノハを狙う理由がない。

 後はギルドもそれなりに気にかけていただろうしね。


 こういう時、一番強いのは横のつながり。

 Bランクになるまでソロで冒険者してた私の言えることではないけれど。

 同僚の冒険者っていうのは、その間柄が親しければ親しいほど、頼りになる存在だ。

 最終的にその信頼関係が極まれば、固定のパーティとしてパーティ名を登録するわけ。


 そう、ちょうどいますよね。

 最近知り合いになった新人冒険者パーティが。

 “進む光”。

 あのパーティほど、信頼の置ける新人パーティがこのグラールにあるとは思えない。


 ただ、コノハと“進む光”を引き合わせるにあたって。

 一つ、これは絶対に問題だよなと思う部分があるのだ。



 **



「今日は、お姉様とこうしてお出かけができて、ロロはとても光栄ですわ!」

「いやいや、感激しすぎだって」


 コノハと一旦別れて少し、私はロロとでかけていた。

 買い物に付き合ってほしいとのことで、せっかくだしと了承したのである。


「そういえば、ロロ達のパーティって攻撃が得意な魔術師の子っていなかったよね」

「そうですわね……シノが水属性の魔術を使えますけれど、あの子の専門は回復ですわ」


 その道中、早速だけれど雑談としてそんな事を聞いてみた。

 “進む光”の今のメンバーは前衛が二人、後衛が二人、遊撃としてどちらにでもスイッチできるのが一人という構成だ。

 男性陣二人はそれぞれ典型的な剣士のアタッカーと盾持ちのタンク。

 女性陣はミツキが弓を得物にした斥候(シーフ)職。

 そして、シノが水属性単のヒーラーだ。


 だから、今の進む光には純粋なアタッカーのウィザードがいない状況である。

 そう、コノハのような。

 まぁあの子の場合、光属性には回復のイメージがあるそうで、多少の回復もいける万能タイプなんだけど。

 流石は勇者だ。


「後は、アタクシも魔術に適性がございましたので、少し齧ってみることにしたんですの」

「へぇ、何属性なの?」

「そ、それは……そのぉ」


 これは少し意外……でもないか。

 ロロは天才だ、適性さえあれば彼女ならどんな属性もモノにしてしまうだろう。

 でも、本領は物理的な遊撃だろうから、あくまでサポート的な使い方なんだろうな。

 それにしても、どうして今更魔術を齧り始めたんだ?


「……つ、土属性ですわ」


 ――一瞬で納得した。

 こちらを見つめる熱い視線、恥ずかしそうに指を絡めて、恋する乙女のようだ。

 私は恋愛経験がないから、自分が鈍感なのかは判断がつかないけど、流石にこれは私でも解るぞ。


「いいね、おそろいじゃん」

「んんっ!!」


 キュン、みたいな感じで胸を抑えられた。

 おちついておちついて、どうどう。


「し、失礼いたしましたわ。……アタクシ、これまで魔術に関しては手慰みで習うには敷居が高いと思っていましたの」

「まぁ、間違ってはいないね」


 それこそ、例えばコノハなんかは多分やろうと思えば剣の才能だってあるだろう。

 でも、それを習う土壌がなかったのもあって、今の彼女は魔術師としての習熟に注力している。

 ロロとはある意味対極かもなぁ、ロロだって本気で魔術を学べば、魔術師として開花するはずだ。

 でも、本人は育った環境から剣士としてのスキルを伸ばした……まぁ、普通はそっちのほうが多いのかもしれないけれど。

 やっぱり、勇者の才能に限らずともコノハは特殊だ。

 ……私のほうが更に特殊じゃないかって?

 こほん!

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