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十一 嘘……私の練習方法、参考にならなすぎ……?a

 あの後、無事にシュワスプリンガーの掃討クエストを終えて、私とコノハはギルドに戻ってきた。

 するとミアさんがこっちに駆け寄ってきて「またですか!?」との一言。

 自分たちが紹介する前に、コノハと知り合ったことに対する発言なのだけど。

 私は何かフラグを引き寄せる体質があるとでも思われているのだろうか。


 まぁ、先日のモンスターハウス現象に引き続き、これでここ最近でも二回目だけどさぁ!

 ともあれ、知り合ってしまったものは仕方がない。

 すでに大体の話はついているので、後はコノハに色々と教えていくだけだ。


 ロロ達と知り合ってから、新人冒険者と話す機会も増えたけれども、きちんと誰かに教えるというのはこれが初めての経験だ。

 なにせ、進む光は別に私の助けがなくともそのうち高ランクの冒険者パーティになることがほとんど決まっているような、優秀な新人たちの集まり。

 教えることはなにもない。

 会えば話をするし、時折一緒に食事にも行くけどね。

 ここ最近は、ミツキとシノとも話をするようになった。

 流石に、男子組はまだきちんと話したことはないけれど。


 何にせよ、私にできるのは冒険者としての心得を教えることと、魔術師の先輩としてコノハの魔術の上達を助けることだ。

 というわけで、まずはコノハの現在の魔術の熟練度を確認しないといけない。

 すでに解っていることとしては、コノハは最低限、魔術を“使う”ことができているということだ。

 これ、魔術師になるうえで一番大事なことである。

 魔術はイメージというのはこの世界の基本だけど、その中でも最も大事なのが「自分は魔術を使える」というイメージだ。

 これができる人とできない人というのがいて、できない人間はどれだけやってもイメージを身につけることができない。

 実は私はこの魔術を「自分が使える」というイメージを抱くのが非常に苦手だった。

 コノハはこれができるのだから、最初の前提はクリアしている。

 ならば後は、どうやってそのイメージをより強固なものにしていくか、だ。


「というわけで、今日はよろしくねコノハ」

「は、はい! よ、よろしくおねがいします、クロナ先輩!」


 コノハと出会って次の日。

 私は早速、コノハと魔術の練習のため、グラールの外にある森までやってきていた。

 練習なんて街中じゃなければどこでもいいんだけど、ダンジョンとかだと人目が多いからね。


「そういえば、コノハは魔術を使うところまではできてるみたいだけど、どうやってそこまで勉強したの?」

「え、えっと……き、基礎的な事は故郷の冒険者さんに、教えて貰って……後は独学、です」

「マジか、私より優秀じゃんね」


 そもそも私は、独学じゃ魔術のマの字も理解できなかったよ。

 ともあれ、まずは普段コノハがやっている練習を見せてもらうことにした。


「えっと……魔術は、イメージが大切、で……自分の中のイメージを……どれだけ、正確にするかで、魔術の精度が決まる……ん、ですよね」

「そうだね、基本的に魔術ってイメージさえ出来てればどんなことだってできるからね」


 流石に、死者蘇生はできないけど。

 ほとんど死んでる状態の人間を、健常に戻すくらいならできる。


「な、なので、自分の中で、光属性と闇属性の魔術を使えるってより強くイメージできるように、してます」

「具体的には?」

「えっと……別属性の魔術を使ってから、光属性の魔術を使い、ます」


 それは、なんと。

 大正解だ。

 適性のある属性の魔術をより使いこなすために、適性のない魔術を敢えて使おうとする。

 そうすると、適性のない魔術は全然使えないという苦手意識がつく。

 その後に得意な属性の魔術を使うと、より使いやすく感じる。

 こうすることで、適性のある属性のイメージを身体に馴染ませるのだ。


 特に、単属性しか使わない魔術師にとって、この方法は非常に有効である。

 私も魔術を使えるようになってからは、この方法で魔術の精度を高めていた。


「すごいね、コノハは魔術師としての素質があるよ」

「きょ、恐縮です……」


 自己評価が低いのは相変わらず。

 でも、コノハはかなり効率の良い方法を自分で考えられるみたいだ。

 なんというか、少し意外な感じ。

 故郷で要領が悪いといわれていたのは、一体全体どういうことなんだろう。


「じゃあ次は、実際に魔術を使ってみてくれる?」

「は、はい、解りました。あ、えっと、何を使いましょう……」

「私、光属性の魔術にどういうものがあるか知らないからな……とりあえず、この間みたいに<光弾>の魔術を適当なところにぶっ放してみてもらえる?」

「あ、はい。……あっ、こ、このまえのことは非常に申し訳なく」

「いいって、悪いのはあの変態風船の方なんだから」


 へへへ、その変態風船クソ親父も、この間の掃討で綺麗さっぱりいなくなった。

 これでしばらくは、上層であの風船野郎の顔を見ないで済むぜ。


 いけない、また話がそれる。

 心中でそんな事を考えている私を他所に、コノハは手にしている魔杖(ワンハンド)を構える。

 大きな樫の杖。

 前世でも、魔術を使う杖といえばこんな感じだよねって共通認識がこういう杖にはあったけど、まさしくそんな感じ。

 この世界でもそれは変わらないようだ。

 故に、魔術を使うイメージがしやすく、取り回しやすい杖といえる。


「すぅ……はぁ……うう、見られてると、緊張します」

「大丈夫、大丈夫。落ち着いてやればいいから」


 コノハが狙っているのは、朽ちた倒木のようだ。

 全長は私数人分、木々の間からその一部が見えていた。


<光弾!>


 意識を集中させたコノハが魔術を放ち、杖の先から光の弾が飛び出す。

 速度は十分、木々の合間を縫ってそれは倒木へ着弾し――



 倒木を、一瞬にして消滅させた。



「えっ」

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