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九 土属性は(冒険者にとっては)不人気b

 掃討と言っても、正直わざわざ大人数がシュワスプリンガーの掃討を行っても効率が悪い。

 そこで、私はシュワスプリンガーの討伐ではなく、そのサポートを行うことにした。

 ちなみにギルドの許可は得ている。

 ミアさんからは、相変わらずこういうの好きですねぇ、とのこと。

 まぁ……そうですねとしか言えないね。


 私がやることといえば、二つ。

 一つはシュワスプリンガーが炸裂させた白濁液の掃除。

 この世界の魔物は死ぬと一定時間が経った後消滅するという、これまたゲームみたいな仕様をしている。

 シュワスプリンガーの白濁液もその例にもれないのだが、消滅には結構時間がかかる。

 なので、その間にうっかり粘液で冒険者が足を滑らせると大変なことになる。

 あと、掃討クエストが終わった後のダンジョン内部の絵面が最悪になる。

 なので予めある程度、シュワスプリンガーの残り滓を掃除することにしているのだ。


 そしてもう一つは見つけたシュワスプリンガーを捕獲すること。

 土の檻を作り、動けなくする。

 これだけで粘液誤爆の可能性が減るのだから、結構大事な仕事だ。


 掃除の方法? 簡単だ。粘液が飛び散っている地面の上から岩石を押し付けて放置するだけ。

 この岩石は時間とともに魔力が霧散し、消えるようになっている。

 シュワスプリンガーの粘液も大体そのくらいの時間で消えるので、単純な処置だけどこれが一番確実であるといえる。


 で、そうやってシュワスプリンガーのあとしまつをしていると、あちこちで魔術師の皆さんを見つける。

 杖を構えて、各自思い思いの方法で粘液を被らないようにしながらシュワスプリンガーを倒していた。


 の、だが。

 いつものことと言えば、いつものことなのだが。



 土属性魔術の使い手がすくない!



 いないわけではない。

 少ないのだ。

 あくまで、少ない。

 ここ大事。

 というか、いないなら逆に特別感があるので別にいい。

 少ないってことは、純粋に不人気ということである。


 何故か!

 土属性は不人気だからだ!

 クソァ!


 なお、ここで明言しておきたいのは、不人気なのは冒険者の間でだけだ。

 これが鍛冶師とかが制作の補助に魔術を使うとなった場合、圧倒的一番人気は土属性である。

 理由に関しては、今更言うまでもないだろう。

 これまで私が幾度もやってきたように土属性魔術で土を加工できるのは、魔術の強みだ。


 なので、あくまで話を冒険者の人気属性に絞って話をする。

 まず、大前提としてこの世界には四つの“基本属性”が存在する。

 前世にも存在した、地水火風というやつだ。


 そして、冒険者が一般的に使う属性は一つか二つである。

 なぜなら、複数の属性を扱おうとすると、使える属性を増やすたびに一つの属性でできることが減るのだ。

 魔術の威力とか、操作性とかが著しく落ちる。

 そうなると当然、冒険者は習得する属性を選ばざるを得ず、魔術の人気に格差がでるわけだ。


 こういう時に、土属性は色々な理由から習得する属性に選ばれないというわけですね。

 じゃあ逆に、一番習得する属性として選ばれているのはどれなのか――?



<風刃!>



 ふと、風属性魔術でシュワスプリンガーを吹き飛ばし、更に風の刃を生み出してそれを切り裂く冒険者がいた。

 杖を構えながら、いい感じにシュワスプリンガーをぷちぷちしている。


 意外に思うかもしれないが、冒険者一番人気の属性は風属性だ。

 これにはこの世界特有の事情が絡んでいる。

 媒体の準備が容易だからだ。

 風はこの世界のどこにでもあって、手を振るだけで風は発生する。

 だから、媒体が必要なこの世界の魔術においてもっとも手軽に媒体を用意することができる風属性魔術は冒険者に人気だ。


 更には、風属性魔術は攻撃性能に優れる。

 この世界でも、前世のように風を刃にして飛ばしたりするという“イメージ”は存在する。

 すなわち風属性は攻撃魔術として最大の汎用性を誇るのだ。


 土属性は前にも言ったけれど媒体を用意するのが簡単という利点がある。

 だけど、風属性はそれよりも更に媒体が簡単に用意できる。

 これは他の属性では絶対に敵わない最大の長所である……というわけ。


 そして、二番人気は――



<爆炎!>



 別の場所に移動すると、シュワスプリンガーに炎をぶち当てて、飛び散る粘液を蒸発させる冒険者がいた。

 流石にすべての粘液を蒸発できるわけではないが、そうそう自分のところに飛んでくることはない。


 火属性魔術は、魔術の定番だ。

 故に、冒険者の中では二番目に人気がある。

 ただ、なんとなく想像がつくかもしれないが、火属性魔術は四大属性の中で最も媒体の用意が難しい属性だ。

 火種を用意しないと魔術が使えないのである。

 宝箱から出土するアイテムの中に、ライターのようなものがあるからそれを利用したり、魔杖に発火機能を付けて媒体を用意するわけだが、それにしたって手間である。


 だが、火属性魔術の火力は四大属性の中でダントツのトップだ。

 なぜなら多くの人間は、火こそが最も攻撃性が高いという“イメージ”を持っているから。

 イメージとは共通認識。

 共通認識は、魔術の発動を“イメージ”する上で大事な助けとなる。


 魔術の効果を決めるのは、魔術師の想像力だ。

 同じ<爆炎>の魔術でも、魔術師の想像がより攻撃的であればあるほど、その威力は上昇する。

 この点に置いて、四大属性最大の火力というイメージを持つ火属性魔術は、大きなアドバンテージを持っているといえる。

 あと単純に、人気なんだよね火属性。

 派手だし、かっこいいし。

 畜生……! ゆるせねぇよな! 火属性……!

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