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九 土属性は(冒険者にとっては)不人気a

 シュワスプリンガーの掃討クエスト。

 読んで字の如し、ダンジョンに溜まったシュワスプリンガーを一斉に掃除するクエストだ。

 魔術を使える冒険者は、特に理由がなければ必ず参加することがギルドの規約で義務付けられている。

 だってそうしないとダンジョンはシュワスプリンガーでいっぱいになってしまう。

 あんな旨味もなく、ただ迷惑なだけの魔物しかいないダンジョンとか一体誰が潜りたいとおもうのか。


 故に、掃討クエストが発令されるのは必然だった。

 そしてもちろん、掃討クエストが冒険者に嫌われるのもまた、必然であった。

 報酬はいいんだけどね。


 そんなわけで、私は今日ダンジョンへやってきていた。

 まわりには、結構な数の冒険者、普段ダンジョンへは安息日にしかこないから、なかなか新鮮だ。


「おい見ろよ、あの冒険者。シュワスプリンガーの粘液引っ被ったらしいぜ」

「まじかよ、気の毒に……」


 むむ。

 ダンジョンではオートで身体強化をするから、聴力が良くなって他人の会話が聞こえてしまった。

 話題もアレだし、ここは聞かなかったことにして聴力の強化を弱く――


「よく見ると、可愛くね?」

「ああ、地味だけどかわいいな」


 ――いややっぱり少し強くしておこう。

 ほらね、参考までにね。


「なんていうか、街中にいてもそんな目立たないけど、もし目の前で話するってなったら、結構目を引かれる感じだよな」

「あの子のこと可愛いと思ってるの俺だけだろうな……みたいな」


 んんんんん。

 解ってますね、解ってますね男!

 いやあ、TSって性別の変わる違和感とか、男としてのアイデンティティとか色々ありますけど。

 私の場合はあれなんですよ。

 何でもいいけど、褒められると嬉しい。

 承認欲求が満たされる。

 なので、エッチな目で見てこない限りは、可愛いとか綺麗とかいわれるのは大歓迎だ。


 ……あれ? そもそもどうして私は可愛いと言われているんだっけ?


「ああいう、男と付き合ったことなさそうな子がシュワスプリンガーの粘液まみれになるとかめっちゃエロいよな」

「神に感謝だな……」


 ――――さ! さっさとシュワスプリンガーの掃討に移ろうね!

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