六 Bランク冒険者の本気ってやつを見せてあげるb
「いましたわ! 全員合流しているようですの!」
ほかの“進む光”のメンバーは、壁を背に四人で固まって、迫りくるスリムスカーマウスを吹っ飛ばしながらなんとか持ちこたえているようだった。
声はそこまで遠くから聞こえていなかったし、スリムスカーマウスは弱い魔物なので合流まで耐えきることは難しくない。
ただ、やはり新人だけでこの数を相手するのは無謀極まりないな。
いったん、彼らを休ませるために時間を稼がないと。
私はロロさんを抱えていない方の手で、持ち歩いている荷物袋からあるものを取り出す。
取り出したのは、握りこぶしほどの大きさの“石”だ。
「? 何を――」
「任せて」
私はそういいながら、スリムスカーマウスと“進む光”メンバーの間に降り立ち。
<隔壁!>
直後、私たちを囲むように、手にしていた石が巨大化し壁を作る。
「な――」
壁は、スリムスカーマウスの体当たりを防ぐように設置され、いくつか開けられた魔物が通り抜けられない小窓以外は穴のない“隔壁”となった。
私が得意とする土属性魔術だ。
「みんな、大丈夫?」
「え、あ、は、はい……だ、大丈夫です。すぐに合流できたので」
突然の私たちの出現に驚いたのか、困惑しながらも“進む光”メンバーの一人、ミツキちゃんが返事してくれた。
ここに来る前の相談の時の様子からして、ロロがいないときのまとめ役は彼女なんだろう。
「現状はわかってると思うけど、これは魔物の大量発生……いわゆる“モンスターハウス”現象だ。私たちは運悪くそれにぶち当たっちゃっただけ、いい?」
「……あ、え、ええそうですわね。あの、クロナ先輩」
「……? どうしたの?」
と、正気に戻ったロロが、
「――――降ろしてほしいんですの」
あ、ごめん。
私は慌ててロロを地面に降ろすと、話を戻す。
ロロは、おろされても何だか恥ずかしそうだった。
……ごめんなさい。
「出現したのはスリムスカーマウス、幸いにもそこまで対処の難しい相手じゃない。ただ、私たちを追いかけて町中にスリムスカーマウスを連れて行ってしまうのだけは避けたいんだ」
「このまま魔物がこの壁に体当たりすることをあきらめるまで待つ、というのが良いのでしょうか」
「選択肢の一つではあるね」
ただ、向こうはこちらの音を敏感に感じ取ってくるから、息を潜めて何時間も魔物がここから離れるのを待たないといけない。
そのうえ、離れていってもここから脱出するまで、見つかったらまた囲まれる危険性が付きまとう。
「だから、ここは緊急事態なのだし、私も遠慮なく事態の解決に動こうと思う」
「……と、いいますと?」
「こいつらを一網打尽にする」
「――!」
だったら、もっと簡単な方法をとった方がいい。
この状況では、玄人好みとかいぶし銀とか、戦い方を選んでいる余裕はない。
つまり、
「――Bランク冒険者の本気ってやつを見せてあげる」
私は、少しだけ決め顔で、そう言ってみせた。