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六 Bランク冒険者の本気ってやつを見せてあげるa

 この世界の魔物は“出現”するものだ。

 なにかといえば、魔物と動物の区別の付け方の話。

 世界観によって魔物と動物って、同時に存在してたり動物が凶暴化したのが魔物だったりと、色々違いはあると思うのだけど、この世界の区別の付け方はとても単純。


 魔物はいきなり出現するのだ。

 なにもないところから、ゲームで敵がポップするような感じで。

 それこそゲームではよくある光景だけど、現実でそれが起こるとインパクトは強烈で。

 だからまぁ、この世界で魔物と動物の区別で困ることなんてそうそうないんだよね。

 他にも、魔物が出現する場所っていうのはある程度決まっているから、そこを避ける形で集落が作られる。

 街中に魔物が出現しないゲームのシステムをそのまま形にしたかのようだ。

 ただ考えてみると、魔物がもし突然湧き出るものだったとしたら、ゲームのシステムって現実的にも結構理にかなってるってことでもあると思うんだけどね。


 話がそれた。


 ようは、下水道はダンジョンの一部という特性があるから魔物が出現する危険な場所である。

 そして魔物は、いつどんな時にどれくらい出現するのか、そのパターンがまだこの世界では解明されていない。

 結果、どういうことが起きるかというと――


「なんて数のスリムスカーマウスですの……!」


 下水道に所狭しとあふれる、巨大ネズミの群れだった。

 その数は、正直ざっと数えただけじゃ数えきれないくらいの数。

 多分、全体で見れば百とか二百とかいるんじゃないだろうか。


「これは、最悪に運が悪いね。こういうの、年に一回くらいはあるんだよ」

「ダンジョン都市では、時たま起こると聞いたことはございますわ。まさか、自分たちがその当事者になるとは思いませんでしたが」


 ダンジョンでは、たまにすごい数のモンスターが一斉に出現することがある。

 いわゆるモンスターハウスとでもいうべきそれは、この下水道でも発生することがあるわけだ。

 というか、この世界でもモンスターハウス現象と呼ばれている。

 誰が決めたんだその呼び方。


 普通、モンスターハウス現象のタイミングで冒険者が下水道掃除をしてることなんて滅多にないんだけども。

 普段だったらいつの間にか下水道の中をいっぱいにして、あふれ出た魔物が町中に出現、近くにいた冒険者が対処することで発覚するというのが定番のパターン。


「出現したのがスリムスカーマウスでよかったね、これがヴァンパイアバットとかだったら最悪だよ、飛ぶし」


 なんていいながら、迫ってくるネズミを蹴っ飛ばしていく。

 スリムスカーマウスは、巨大だが痩躯なネズミで、基本攻撃はかみつきと体当たりだけ。

 毒とかも持っていないし、直接相手をするだけなら私の故郷の大人でも対処できる。

 まぁ、衛生的にばっちいから、噛まれたところから雑菌がどうこうってことはあるかもしれないけどね。


「ですが、このままでは対処しきれません! いったん撤退を!」

「ダメだよ、ここで撤退したら私たちを追ってきたこいつらが町中にあふれる。せめて一旦、こいつらから逃げ切らないと」

「無茶ですわ!」


 そう考えると、下水道掃除の最中に魔物の大量発生が起こるとそこにいた冒険者はよっぽどの事がないと助からないな。

 別に、冒険の最中に命を落とす冒険者なんて珍しいものではないけれど、新人向けクエストで命の危機があるのはまずい。

 あとでミアさんに相談しないと……と思いつつ、余裕がないので口に出すことなく私は、


「ちょっとごめんよ」

「え? ――ひゃっ!」


 ロロの腰を抱いた。

 足に魔力をまとわせて、そのまま一息に――飛び上がる!


 スリムスカーマウスの体高は私たちの胸元あたり。

 下水道は高さが私たちの身長の三倍くらいあるので、こいつらに囲まれた状況から脱出するなら上を飛び越えた方がいい。

 そして、そんなことが可能なのは魔力を使って身体強化をした私くらいなので、こうするしかないのだが。


「く、くすぐったいですわ!!」


 ロロは、直ぐにそれを理解したうえで顔を真っ赤にしていた。

 同性とはいえ、非常事態とはいえ、突然のことに恥ずかしくなってしまうのは仕方がない。


「大丈夫、絶対離さないから!」

「あ、いえ、それは……」


 私が安心させるように言うと、ロロは顔をそらしてしまった。

 とはいえ、それ以上言葉はなく、納得してくれたみたい。

 私はそのまま、スリムスカーマウスを踏みつけつつ、声のした方へと移動するのだった。

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