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五 この子たちええ子やな――――a

 下水道はダンジョンの一部、と言ったが。

 ようするに地下にある下水道はダンジョンの影響を受ける。

 結果、魔物が出現するのだ。


 下水道掃除のクエストには、この魔物の対処も内容に含まれている。

 だから普通のクエストよりも報酬は高額だし、危険度も高いわけだ。

 ただ、出現する魔物はあくまでダンジョンの上層に出現する弱い魔物ばかり。

 高ランクの冒険者は必要ない。


 そこでこうやって、下水道掃除のクエストは新人向けに出されるわけで。

 基本的には、出現した魔物の対処は新人だけでも十分可能だ。

 特に“進む光”のメンバーは皆将来有望な意識の高い冒険者だから、そうそう後れを取ることはないだろう。

 まぁ彼女たちの場合は、将来有望すぎてきちんと先輩冒険者の付き添いを受けているのだけど。


 なぜ先輩冒険者の付き添いが大事なのかといえば、下水道は普段の上層と違って周囲に冒険者がいないからだ。

 基本的にダンジョンは上層ほど人が多く、下層ほど人が少ない。

 上層にいるうちは、誰かしら近くに別の冒険者がいるのだ。

 だから魔物に襲われて死にかけていても、大声を出して助けを求めれば周囲の冒険者が助けてくれる。

 周囲の冒険者も、明日は我が身かもしれないので助けない者はあんまりいない。

 下水道にはそれがないので、こうして付き添いをつけるのが慣例だ。


 後は掃除のレクチャーもする。

 付き添いに選ばれる冒険者は下水道掃除の経験者だからね。

 私も結構自信がある。


「というわけで、この“水魔術スクロール”でざっと見える汚れを洗い流してから、“掃除用ポーション”を全体に吹きかけてブラシで擦るのが、掃除の基本だよ」


 かくしてここはダンジョン都市“グラール”の下水道。

 グラールには商店街、宿場街、歓楽街、住宅街とエリアごとに特色があるまちづくりがされていて、私達がいるのは三番街、多くの冒険者が拠点としている宿の立ち並ぶエリアだ。

 そこは当然人が多く、歓楽街と並んでゴミが多い。


 悪臭が酷い、原因は汚れ。

 さっさと取り除いてしまおう。

 というわけで近場をさっと終わらせた、だいたい十分程度。

 新人なら、三倍はかかるだろう。

 “進む光”ならもっと効率はいいだろうけど、いきなりここまで手慣れてたりはしないはず。


「すごく手際が良い、慣れてますのね……」

「新人の頃から、よく下水道掃除の依頼は受けてたし、今も監督役としてたまに下水道に来ることもあるからね、腕は錆びてないよ」

「あ、失礼しましたわ、独り言でしたの。新人の頃から……」


 おっと、ここはダンジョンの一部だからって軽く魔力で身体強化をした結果、聴力が良くなってしまったんだな。

 何やらロロは考え事をしているようだけど、話は終わったので仕事をするよう促した。


「とにかく、手順はだいたいわかったと思うから、各自掃除を始めよう。今から始めれば、君たちのプラン通りなら今日中に余裕を持って終わるはずだよ」

「あ、は、はい! かしこまりましたわ!」

「ただ、魔物には気をつけること、出現したら絶対に二人だけで戦わず、応援を求めること。いい?」

「はい!」


 最後の私の言葉に、ここにいる全員が元気よく返事して、私達の下水道掃除は始まった。



 の、だが。



「――終わっちゃったね」

「あっという間でしたわね――」


 終わってしまった。

 私とロロの担当だけ。

 一時間もかからなかった。


 原因は単純、ロロが優秀過ぎたのである。

 最初私はロロに先輩面するべく、そこそこの手際の良さで掃除をしていた。

 “進む光”の面々の前で実演した時も、まだ本気は出していなかったんだよね。

 だっていうのに、ロロはほとんど最初から、私に負けないくらいの手際の良さで掃除を始めるものだから。

 対抗してしまった――――


 最終的に成長するロロと、ギアを上げていく私。

 イタチごっこの様相を呈した掃除バトルは、担当箇所がピカピカになったことで終了した。


 ……これ、私の勝ちでいいよね?

 最後まで追いつかれなかったし。


 ははは、私の勝利だ!

 ……いやなんで掃除程度で張り合ってるんだよ!?(冷静になった)


「他の手伝いに行くべきかしら……」

「それもいいけど、今後もこのクエストを受けるつもりなら、今後他のメンバーが慣れるためにも、任せた方がいいかな」

「……そうですね、皆にそのことを伝えたら、少し休憩にしてもいいかもしれませんわ」


 休憩という名の勉強会ですね、解ります。

 いや別に、皮肉でもなんでもなく、ロロたちの行動は何もかもが自分の成長につながるってくらい、意欲に満ちている。

 下水道に来るまでの話も、私がどうやって冒険者として活動したかとかそういう話。

 ちょっと申し訳ないのは、私の冒険者としての活動はどう考えても普通じゃないので、何の参考にもならないだろうってところかな。


 まぁでも、答えられることなら何でも来いだ!

 私がこの子達に認められるスーパー冒険者であるということを見せてやる!

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