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パーティのお誘い

「あのっ、シルヴァイン様っ、良かったら今夜のパーティでエスコートして頂けませんかっ?」


甘えるような口調で、ウルウルと目を潤ませながら、リトリーが可愛らしく微笑んだ。

可愛い女の子のお誘いではあるのだが、傍から見ると無礼千万である。

先を越されたテレーゼも、髪を直しながらにこにこと笑いかけた。


「いいえ、是非私と一緒にパーティに出てください」


女性からエスコートを親類以外の男性に申し出るのははしたない。

しかも初対面、人前で、である。


一瞬、頭を撫でていた指に力がこもった。


やめて、林檎のようにくしゃっとされたくない。


マリアローゼの背に一瞬戦慄が走った。

ぷるぷると首を振って、兄の手から逃れると、兄への挨拶に立ち上がったままだったヘンリクスが、マリアローゼの目の前に突然跪いた。


「フィロソフィ嬢、両国の平和の為にも、今夜の祝宴には私にエスコートさせて頂けないでしょうか?」


んんん…

兄の怒りのオーラを感じていたが、増しているような気がして見上げると、

穏やかな笑顔が顔に貼り付いている。

勿論お怒りだ。


マリアローゼは兄に少し首を振って、ヘンリクスの前に立ち上がった。


「それは良いお考えですわ、殿下。ですが、陛下とわたくしの父にお伺いしなくては決められません」

「お二人の許可があれば、異存はないと?」


期待に胸を膨らませるように、ヘンリクスの表情が明るくなる。


「はい。喜んでお受け致します」


マリアローゼはこくりと頷き、ふわりと微笑を見せた。

ヘンリクスはその笑顔に微笑を返して立ち上がると、ぺこりと深くお辞儀をする。


「一刻も早く陛下に確認致します。本日はご心労をおかけして大変心苦しいが、私は貴女と話が出来て、とても楽しく思いました。では、失礼します。

お二人も部屋に戻って下さい」


最後の一言は二人の聖女に向けて言うと、ヘンリクスはその場を離れて行った。

小間使い達がテーブルの上を片付け始める。


「あのっお返事は…」

「私と出ますよね?」


先ほどヘンリクスが二人の暴挙を止めようと、割って入って話題を流したにも関わらず、である。

とてもしぶとい。

状況も理解していない。

シルヴァインは二人に向けて、穏やかな笑みを崩さないまま伝えた。


「お二人の争いの種にはなりたくないので、今回は遠慮致します」


口調は強めだが、あくまでも穏やかなお断りだったので、マリアローゼはほっと胸を撫で下ろした。


あまり兄に油を注がないで欲しい。

炎上したら困るのは貴女達ですよ……


「えーーーっ折角だから、選んで下さいっ」

「シルヴァイン様と踊りたーい」


マリアローゼの願いはあっさり無下に、砕け散った。

最早、油などではなくガソリンである。

静電気だけで着火してしまう、大爆発の一歩手前だ。

出来るなら、マリアローゼは後ろを振り返らずにこの場から走り去りたかった。


「恥をかきたくないので、遠慮させて頂きたい」


貴族は婉曲的な会話を好むものである。

だからこれは、痛烈な一言と言ってもいいだろう。

マリアローゼは溜息をつきつつ、二人を見るが案の定言葉の意味が分からなくてぽかんとしている。

兄を見上げて、袖を引いてマリアローゼは首を振って見せたが、

シルヴァインの目はマリアローゼを見なかった。


「猿は人間の言葉を解さないし、何を言われても楽しめるでしょう。

笑われるのは、猿を連れている人間の方なんですよ」


分かりやすく、直接的な表現で、あからさまな侮蔑的な言葉を言ってしまった。

というか、言わないと分かってもらえなかったのだ。

シルヴァインの冷たい目と、蔑んだ笑みを初めてマリアローゼは目にして震えた。

読んでくださり、ありがとうございます。

お陰さまで60万PV到達致しました。

少しでも、楽しんで頂けたら嬉しいです。

ブクマ・いいねもとても嬉しいです。励みになっております。

※下記のひよこのPixivから飛ぶと、自作のAIイラスト(未熟)で作ったキャライメージイラストがありますので、宜しければご覧になって下さいませ。

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― 新着の感想 ―
え?女は受け身でずーっと待っていなくてはいけないのか?しかもそうしない女に対して怒るとか?DVD気質でもあるのか、シルヴァインが暴君すぎる。 現実でも上流階級の婚活中の男女ってあなたは何番目のダンス、…
[良い点] 初めて会った人達の聖女への憧れをことごとくぶち壊しまくってそうな二人、ある意味すごい。
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