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悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く  作者: ひよこ1号


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加護は内緒です

まさか。


マリアローゼは震えながら、グランスを凝視した。


「申し訳ありません」


沈鬱な面持ちで、グランスがぴしりと会釈をする。


「まさか……グランス、あなた…彫刻の加護をお持ちなの!?」


一瞬、空気が凍った。


(はて?)


不思議そうな表情になったマリアローゼが見守る前で、グランスは思わず口を覆って笑いを堪えながら言う。


「……いえ、残念ながら」


ウィスクムは容赦なく爆笑し始めた。

勘違いだと知って、マリアローゼは頬を赤く染めて、椅子に深く腰掛ける。


「だ…だって、すばらしい彫刻を作ってくださるのだもの……」

「お嬢様は、それはそれは、グランスさんの作られた彫刻を大事にしていらっしゃるのです」

「そうです!毎日寝る前に撫でてから、抱っこして寝る事だってあるんですよ!」


庇うようにルーナが説明した後に、オリーヴェがふんす!と後押しするように言う。


(抱っこして寝る…なんて赤裸々な…。

それは要らない情報ではないかしら?)


マリアローゼは居心地悪そうにもじもじするが、グランスが左手を胸に当てながらスッと跪いた。


「それは、身に余る光栄でございます」

「……はい、加護については秘匿していて構いませんから、またお手隙の時に…あの…作って下さると嬉しゅうございますわ」

「ええ、是非、献上致します」


ぺこりと頭を下げて、グランスは優しい笑みを浮かべて立ち上がる。

丁度そこに、軽食を載せたワゴンを押した従僕とシスネが現れて、ウィスクムの前に色々な食べ物が置かれた。


「うま…すげーなさすが筆頭公爵家。ルキオラではしみったれた料理しか出ねーもんなぁ」

「ご実家の事をそう悪く言うものではございませんわ」


ウィスクムの実家は魔術の大家、ルキオラ公爵家である。

フィロソフィに次ぐ蔵書量を誇り、また本好き、研究熱心で知られている家だ。


「あんまり飯に興味ないから仕方ねーかもしれんがな。ここの美味い飯食ったら少しは意識変わるかねぇ」

「もし片手で食べるお食事が良いのでしたら、色々ございますけれど」


提案したマリアローゼにうんうん、と頷いて、ウィスクムはもぐもぐと食事を続ける。


「時間を惜しむ奴はそれでいけそうだが、必要な栄養だけ取れりゃいいって奴もいるからなぁ。どうせ家継がないし用も

無いから、別にいいけどな」


「ご家族に会いたいと思われませんの?」


家族大好きなマリアローゼは素朴な疑問をぶつけた。

ウィスクムは肩を竦めながら答える。


「挨拶もそこそこに、解析やら解読やら色々持ち込んできてコキ使われるだけだから、いいや」

「た、大変そうですわね……」


と言いつつ、不躾な質問をしてしまった事にマリアローゼは気づいて口を噤んだ。

フィロソフィ公爵家でも、祖父と父、叔父の間に確執があっただろう事は、ミルリーリウムの話で知っている。

もしかしたら、大魔法使いと言われるウィスクムも、跡継問題で家に帰り辛いのかもしれない。


「いや、そんな深刻な顔すんなって。マジであいつら糞だし、俺みたいないい加減な脳筋は家督なんて継がせねーって言われて半ば勘当されて家出たからな。それにグーラの……いや何でもない」


慰めてきたのに途中で中断されて、マリアローゼは宙ぶらりんにされた。

ウィスクムは笑顔で思い浮かべた。


(マリアローゼは好奇心旺盛だから、魔術学院のことは伏せるようにって言われてたの忘れてた)


だが、マリアローゼは続きを要求してくる。


「え?途中で止めないでくださいまし。続きが気になるではありませんの」

「グーラの飯もかなり美味いぞ。金があればだけど」


視線を泳がせつつ言った言葉に、疑わしげなジト目を向けながらマリアローゼはそれでもグーラの食事に興味が湧いた。

グーラは多民族国家であり、商業国家でもある。

商人達が実権を持っているので、金さえあれば叶わない事は無いと言う。


「いつか、食べてみたいですわ……」


思いを馳せるマリアローゼに、ユリアが両手を挙げた。


「はい!その時は是非、ユリアを御伴に!」

「私も一緒に参ります!」


嬉しそうにカンナも申し出て、マリアローゼも楽しげに頷いた。


「ええ、是非。皆で参りましょう」

「いいねぇ。俺色んなとこ案内できるし、まー船旅が大変っちゃ大変だけどな」


その言葉にマリアローゼは、目をぱちくりと瞬いた。


「船旅!どのような感じですの?魔物と闘いますのよね?」


マリアローゼに頷きながら、ウィスクムはひょいひょいと果物を口に放り込む。


「外海に出ると必ず出るからな。倒すのは問題ないが、ちょくちょく呼び出されるから休む暇もないんだよ。

素材や食糧になるから、無視する訳にもいかねーし」


「勝手に戦って回収してくれたら便利ですのにね…」


幼い少女らしい無垢な返事に、ウィスクムはふふっと思わず笑った。

今迄ずっと大人びた事を言っていたので、時々現れる幼さが可愛らしい、と感じるのだ。


「そうだな。魔法は万能じゃないからな」

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