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悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く  作者: ひよこ1号


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情報を集めるお嬢様

「そうでしたわ。わたくし硝子工房が欲しいのです」


ビジューは宝石に似せたイミテーションの硝子細工だ。

とはいえ、この世界では硝子自体に希少価値があるので、それなりに高価ではある。

宝飾品の多くは宝石で出来ており、ビジューは靴やドレスの縁飾りなど、脇役になっているのだが、マリアローゼが欲しいのは更に極小のビーズである。

ボタンやスパンコール等も作れるだろう。


「ふむ、でしたら、いっそのこと職人を集めた街を作るのも良いかもしれませんね」


とんでもない事を言い始めたので、マリアローゼは固まった。


「ま、街、ですか?」


「ああ、いえ、無から作り出す訳ではありませんよ。例えば、綿花や綿羊のいる地域で糸の生産が盛んなように材料の原産地に工房を作って、そこからアイテールや王都に運ばせれば、輸送の経費も抑える事が出来ます。

ただ、そうなると連絡を密に取り難いのが問題でもありますが」


「連絡手段の構築も考えねばなりませんね。ですが、神聖教の異端に触れる可能性もあるので、レイ様に相談しませんと……とりあえず技術開発だけはこの町で行って、製法を各地の工房へ送る形に致しましょう」


「お嬢様……ええ、その様に致しましょう」


思わず本当に5歳ですか?と訊きかけて、マローヴァは静かに頷いた。

ジェレイドという規格外の化物を見続けていたのだから、マローヴァも慣れてはいる。

その彼が切望した女性もまた幼い外見ながら、規格外だと言う事だ。


「他にも欲しい物が出来ましたら、メイヤールに命じて頂ければ問題ありません。もし、私でなくては嫌と言う事があれば、是非もないですが」


「いえ、メイヤールさんで大丈夫です」


営業スマイルは確かに格好よくはあるのだが、ジェレイド並みに胡散臭いのでマリアローゼは即遠慮した。


「ああ、そうでしたわ。もしかして、図書館の本をご用意くださったのもマローヴァさんですの?」


「ええ、引き続き集めるように言われておりますので、王都よりも立派な図書館になるかもしれませんね」


王都のフィロソフィ家の図書館にも有能な司書が沢山いて、有用な図書は常に買い求めたり複製したりしているのだが、確かに最近の勢いは領地の図書館の方に軍配があがりそうだ。

そして、保管されているのは本だけではない。

マリアローゼは頷きつつ、更に要求した。


「でしたら是非集めて頂きたい物がございますの」


「伺いましょう」


「各国にある、王侯貴族の私文書ですわ」


「それはまた…悪事に手を染めよというご命令ですか?」


不穏な光を眼に宿らせたマローヴァに、マリアローゼはきょとんと眼を大きく見開いた。


(誰も、そんな事は望んでおりませんわ……)


そして慌ててマリアローゼは否定する。


「いえ?内偵行為をしろというのではなく、オークションや遺品整理などで売りに出される物で構いませんのよ。流石に王家所有の物は出回らないでしょうけれど、逆に王家から拝領した物ならば、話は別でしょう?」


「ふむ、分かりました。内偵は内偵で愉しそうではありますが、それはジェレイドの分野ですからね。情報の精査はこちらで致しますか?」


(叔父様は一体何をなさってるの……!?

いえ、深く考えてはいけないわ……)


マリアローゼは慄いたが、深く追求せずに丸投げをかました。


「レイ様の分野に関わる事なのでしたら、相談の上で決めて下さって良いですわ。原本は図書館で保全させますので」


マローヴァは静かに顎に指を当てて考え込んでから、問いかける。


「何か、お調べ物でもあるのでしたら、命じて頂ければ調査も可能ですが」


確かに、商人の情報網は侮れない。

今頼んだ事ですら、マリアローゼや公爵家が動くより早く情報も入るだろう。


「……まだ、分かりませんの。ただ、広く情報を集めたいのです」


本当は一つだけ目的はあるが、マリアローゼは言葉を濁した。

まだ、聖女の誘拐事件や神聖教の腐敗の話は出来るだけ伏せておきたい情報である。

信頼出来る相手ではあるが、必要な時期がきたら、きっとジェレイドから伝わるだろう。

マローヴァも心得たもので、にっこりと微笑んで快諾した。


「承りました。貴重な蔵書を手に入れたいと言えば、何も疑われる事も無いでしょう。お任せください」


蔵書を探す序に、私文書まで買い取るという体裁を作るのだろう。

メインがどちらかと言う事は売り手には報せる必要も無いのだ。

マリアローゼが頷くと、マローヴァは早速立ち上がって大仰な最敬礼をすると、扉から颯爽と出て行った。


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