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悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く  作者: ひよこ1号


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使い道は謎のままにしておきましょう

メイヤールは何かにとりつかれたようにブツブツと独り言を言い始めた。

何かの計算式か呪文のようだが、マリアローゼには全く理解出来ない。

理解出来ないので、マリアローゼは更に思いついたことを伝えた。


「あと、意匠についてなのですが、今すぐには無理かと存じますけれど、温度で意匠が変わる陶器が欲しいのです」

「……それは、可能なのでしょうか……?」


ぴたりと、何かの呪いの儀式のような呪文を止めたメイヤールに、マリアローゼは少し脅えながらこくこくと頷く。


「確か絵柄に使うインクを作り出せれば可能です。紅茶を飲み干した後にカップが冷えて、底面に薔薇の絵が浮き上がるような……インクさえ出来れば、どんな物にも転用出来るかと存じます」

「他にはございますか?」


ずずい、と近づかれて、慌ててノクスに制されるメイヤールを見て、マリアローゼはううん?と小さく首を傾げた。


「そうですわね…少し違いますけれど、暗闇で光る性質のインクを使えば、変わった意匠の物を作り出せますわね」


いつの間にか周囲に集まった従業員達は、手帳を片手に真剣に何かを書いている。

メイヤールはふう、と溜息を吐いて、またにこやかな笑みを浮かべた。


「お嬢様の発案には感服致しました。是非ともジェレイド様に相談して、急ぎ祭に合わせて商品の品揃えを強化致しましょう。ああ、それと、料理長が首を長くしてお嬢様をお待ちしておりますので、どうぞ3階へ足をお運び下さい。昇降機も使えるようになりましたので」


「まあ、是非参りましょう」


マリアローゼが立ち上がると、バタバタと忙しそうに店員たちは散って行った。

メイヤールに昇降機まで案内されて、案内係の操作でまずはマリアローゼとルーナとオリーヴェ、ユリアとカンナが3階へ向かう。

ぎゅうぎゅうに詰めればもう少し乗れない事もないが、貴族相手には失礼にあたるだろう。

昇降機から出ると、すぐ右側が店の扉になっていて、目の前には1人の給仕が立っている。

マリアローゼ達に恭しくお辞儀をすると、店内に招き入れた。


窓際の席に案内されると、白壁に橙色の家並みの向こうに、真っ青な海が見え、広場の大邸宅も良く見える。

そして、大邸宅の背後の岬の遥か向こうに大きなステラ・マリウス、海の城が鎮座しているのも見通せた。


「まあ…素晴らしい眺めですわ」


よくよく見ると天井自体も高いので、普通の二階建ての建物が三階部分のレストランの窓の視界を塞ぐ事は無かった。

そして、海辺に向かって緩やかに傾斜する地形も味方していて、町の中心部と交差している広場と海へ向かう大きな道路も

人通りが多く、活気に満ちているのもよく見える。


「綺麗な景色ですね」

「ほんとですねー」


マリアローゼの感嘆の声に、カンナとユリアも同意の言葉を返す。

そこに、料理長のダレンが現れた。


「お待たせ致しました。当店のレモーヌ・アクアとレモーヌ・ソーダになります」


長身のダレンは日焼けした顔に、銀の長髪の美形な青年である。

そわそわと、頬を赤らめて反応を窺う姿は、大きいのに小動物のように見えてしまい、マリアローゼは微笑んだ。


レモーヌ・アクアは程よい甘みと酸味で、ジュースというよりも水に近い薄めの味付けとなっている。

料理をメインにしたいので、味の邪魔にならないようにしたいのだろう。

それでもあっさりとした甘味がおいしく、何杯でも飲めそうな味だ。

マリアローゼはふんふん、と頷いて、レモーヌ・ソーダを口にする。

しゅわしゅわとした微炭酸に、レモーヌの爽やかな香り、銀砂糖の甘さに加えて、どこかスパイシーな調味料がアクセントとなっていてエキゾチックさと高級感を醸し出している。


殆ど同じ材料を使いながらも、両者は全く違う味の飲物だ。

マリアローゼはこくん、と大きく頷いた。


「美味しゅうございましてよ、ダレン。ソーダに調味料を加えましたのね?とても素敵なお味でしたわ」

「あ、…ありがとうございます!」


ぱああ、と嬉しそうに笑顔を浮かべて、ダレンは勢いよく頭を下げた。

後ろで編んだ三つ編み尻尾が跳ね上がったほどである。


「あ、そうですわ。ユリアさん、あのお魚の捌き方をダレンに伝授して下さる?」

「いいですよ!なんなら焼き加減も教えてきます」

「?」


訳が分かっていないダレンを急きたてて、ユリアが厨房へと消えていき、マリアローゼは改めて飲物を楽しみつつ外を眺めた。

だが、そこでカンナが何気ない調子で不穏な言葉を口にする。


「それにしてもユリアさん、普段からあんな物持ち歩いてるんですね」


そう。

金串である。

両端が尖った金串でかなり鋭利な刃物類である。

決して鰻を串焼きにする為に持ち歩いているのではない事は確かだ。


気付いていた男性陣もそれぞれ困ったような素振りを見せている。

マリアローゼは静かに呟いた。


「使い道については、知りたくありませんわ……」

ユリア「鰻を焼く為ですよ!」

全員『嘘だ……』

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