朝市での発見
マリアローゼ一行は朝早くから、市場へと出かけていた。
市場が開かれる広場の近くには、フィロソフィ家の大邸宅がある。
その邸宅は普段高級ホテルとして解放していて、現在家人は誰も住んでいない。
邸宅に住むのを嫌がったジェレイドが街の中心部に別宅を構えたので、フィロソフィ家の従僕や小間使い達が入れ替わりで
街のホテルで働いているらしい。
此処で、料理人達の集会を開いても良かったのでは…?
一瞬思い浮かべたものの、現在ホテルとして営業している以上、客の為の業務で忙しいのだろう。
祭りはまだ始まっていないが、貴族達が領地へ帰還すると共に、王都の使用人共々領地へと付いて行く。
貴族も旅行に出るし、その間暇を出されて、やはり旅行に出かける者達も少なくない。
アウァリティア王国は比較的治安も良く、従業員達も奴隷ではないので、契約に守られているのだ。
邸宅ホテルで馬車を預かって貰い、マリアローゼ一行は早速市場に足を延ばした。
色とりどりの野菜や果物が目当てである。
新鮮な魚や貝類もあるが、今日はそれが目当てではない。
目当てでは、ない。
無いのだが、鰻のような魚が目に入ってしまった。
(土用の丑の日……
それは禁断の美味、鰻の蒲焼が大活躍する日である…)
抑えられない唾液を飲み込みつつ、傍らのユリアを見ると、ユリアも珍しく鰻を凝視している。
「ユリアさん、このお魚食べた事ございますの?」
他国ではポピュラーな食材かもしれないので、ユリアに尋ねると、ユリアはブンブンと首を横に振った。
「いえ、神聖国でも帝国でも目にしたことないですね、これ、鰻なんでしょうか?」
「わたくしも初めて見たので、食べてみない事には…」
転生者と言うのは表向き公言していないので、鰻だとか鰻じゃないとは返答出来ず、マリアローゼは言葉を濁した。
「お、食べてみるかい?姫様!」
「い、いえ、姫では…でも、焼いて頂けますの?」
「すぐそこの店が知り合いだから、持っていけば焼いてくれるよ、美味しかったら買ってくれ」
店主の指差した方に、確かに店があり、焼き魚専門と看板にも書いてある。
マリアローゼはふむ、と頷いた。
領地の料理ギルドから改革しても良いかもしれませんわね……?
「分かりました、では、魚をどちらからでもいいので身を二つに捌いて下さいますか?」
「えっ?このくねくねした状態だから、それは難しいなぁ」
ですよね!?
多分適度な大きさにぶつ切りにして食べるのが普通なのだろう。
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※下記のひよこのPixivから飛ぶと、自作のAIイラスト(未熟)で作ったキャライメージイラストがありますので、宜しければご覧になって下さいませ。
 




