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誰かに似ている人

岸に着いたシルヴァインは、さっさとマリアローゼを抱き上げると、舟から降りて宿へと歩き出す。

ルーナは用意されたクッションを片付けようとして、ギラッファに止められた。


「お前は先に行きなさい。ここは私が片付けさせておく」

「はい。かしこまりました」


手に取ろうとしていたクッションを離し、手荷物だけを抱えてルーナはシルヴァインの後を追った。

そして、最後にしょんぼりとユリアが舟を降りてくる。

後ろに控えていた従僕に指示を与えていたギラッファが、姿勢を正してそんなユリアを迎えた。


「お楽しみ頂けましたか?」

「いえ、はい、まあ……マリアローゼ様は何時もどおり非常に可愛らしかったです。

ところでギラッファさん、貴方誰かに似ているような気がします。顔とかじゃなくて…」


うーん、と眉を顰めて見上げるユリアは、内面や行動力を知らない他人から見れば、十分な美少女だ。

ふわりと緩やかに波打つな亜麻色の髪は肩よりも上でふわふわと風に揺られている。

天色の鮮やかな瞳が何とも温かみのある明るさを印象づけ、喜怒哀楽を表す表情は見ていて飽きない。


「あー分かりました!あの人に似てるんだ、あのやなやつ」

「やなやつ」


あまりの言い様に、思わず笑顔のままギラッファは復唱した。

その言葉にユリアはうんうん、と頷く。


「私の上官なんですけどね、冷静で動じないけど穏やかで、何か完璧っぽい感じの人です」

「お褒めに与り、光栄でございます」

「いや、褒めてないです、やなやつなんで」


どうすればいいというのか。


ギラッファは、それでも完璧な笑顔を浮かべたまま、背筋を伸ばして立っている。


「ですが、今仰っていたのは褒め言葉のように存じますが」

「まあ、確かに…?嫌なところがないっていう嫌な所がありますけどね…あっもう行かないと、では!」


遠くなるマリアローゼを追いかけて、ギラッファに疑問を植えつけたまま、ユリアは嵐の様に走り去っていく。

その姿を見送りながら、ギラッファはふむ、と頷いた。


ユリアが走ってシルヴァインの背に追い着くと、カンナもいつの間にか合流していた。


「ユリアさんの荷物、預かっておきましたよ」

「カンナさんありがとうございます」


などと二人が会話していると、マリアローゼがシルヴァインの肩越しにぴょこりと頭を出した。


「わたくしが頂いたお花は何処にあるのかしら…?」


きょろきょろと休んでいた場所辺りを見回すが、天幕は既に片付けられていた。

ルーナがそんな不安げなマリアローゼを見上げて、返事を返す。


「宿の者に渡しておきましたので、大丈夫です。部屋にございます」

「まあ、ありがとうルーナ」


マリアローゼはルーナに笑顔を向け、安心したようにシルヴァインの肩に凭れかかり…

かけてハッとして顔を離した。


「お兄様、お兄様、わたくしも歩けますわ」


最近とみに抱っこ率が上がっているのである。

色々と不穏な事続きで心配なのは分かるが、体力が落ちてしまうのでマリアローゼは足をぱたぱたと揺らした。

だが、にっこりと不敵な笑顔を浮かべたシルヴァインに少しぎゅっと腕に力を込められてしまえば、

たちまち足すら動かせなくなる。


「湖の傍は石が多いから捻ったら危ないよ。エルノではまたお土産を買いたいんだろう?」


過保護すぎではないのか?

そして、予定を先読みしすぎではないのか?


暗に足を怪我したら、お土産買えなくなるよと言う脅しをかけてきたのである。

マリアローゼは言葉に詰まり、それ以上何も言えなくなってしまった。

まだ兄には全然勝てない幼女なのである。


「仰るとおりですわお兄様。今は大人しく致します」


従順な言葉に反してぷっくり頬を膨らませて抗議する姿勢を見せるが、シルヴァインにとっては可愛い抵抗でしかない。

ユリアにとっては更にご褒美でしかなかった。

読んでくださり、ありがとうございます。

お陰さまで170万PV到達致しました。

少しでも、楽しんで頂けたら嬉しいです。

ブクマ・いいねもとても嬉しいです。励みになっております。

※下記のひよこのPixivから飛ぶと、自作のAIイラスト(未熟)で作ったキャライメージイラストがありますので、宜しければご覧になって下さいませ。

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