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悲劇の魔女、フィーネ 3

 翌日―


 宿泊先のビジネスホテルで簡単なモーニングセットを食べ終えて部屋に戻ると、早速昨日ガイドをしてくれた男性に連絡を入れた。


トゥルルルル…

トゥルルルル…


何回目かのコール音の後、昨日のガイドが電話口に応答した。


『はい、もしもし』


「おはようございます。ユリウスです。昨日は御世話になりました。本日もアドラー城跡地まで連れて行って下さい。それで時間ですが…」」


しかし、最後まで言い終らぬうちに受話器越しにガイドの悲鳴じみた声が聞こえて来た。


『な、何ですってっ?!またあの呪われた場所へ行くつもりですかっ?!冗談じゃありませんっ!昨日は初めてのお客様だったので特別サービスでご案内しただけです!私はまだ命が惜しいですからね…もし行かれるのであれば、別のガイドを探して下さいっ!兎に角私はもうごめんですからっ!』


それだけ喚くと、ガイドは一方的に電話を切ってしまった。


「え…?何なんだ?一体…。あのガイドは本当に魔女伝説や呪いを信じているって事は…きっと今度の話は…当たりって事かもしれないな…」


口元に思わず笑みが浮かんでしまった―。




****


「え?駄目ですって?」


『ええ、何と言われようともあの場所までは絶対に行けません。他のタクシー会社を当たって下さい』


そういうと、またしても電話を切られてしまった。


「一体、何だって言うんだよ…全く…」


本日10件目のタクシー会社に断られてしまった。


「参ったな…タクシーを使えないとなると…仕方ない。レンタカーを借りるか…」


そこでネットでレンタカー会社を探し、このビジネスホテルの近くにあるレンタカー会社に連絡を入れる事にした―。




「…はい、ありがとうございます。それでは本日11時に伺います。え?ああ…名前ですね。申し訳ございません。ユリウス・リチャードソンと申します。どうぞよろしくお願い致します。…はい、では失礼致します」


ピッ


連絡が終り、俺はスマホの電源を切ると早速出掛ける準備を始めた。





「はい。ではお部屋の鍵はお預かり致します」


「…よろしくお願い致します」


部屋の鍵をフロントマンに渡すと、笑みを浮かべて尋ねられた。


「お客様。本日はどちらへお出かけでしょうか?」


「はい、アドラー城跡地に行く予定です」


「な、何ですってっ?!」


途端にフロントマンの顔色が変わる。…ひょっとしてこのホテルの従業員も怨霊の話を信じているのだろうか?


「お客様…悪いことは言いません。絶対にあの場所へ近付いてはいけません。命が惜しければ尚更です。あそこは興味本位で行くような場所ではありません!」


必死になって止めるフロントマン。


「何もそこまで大袈裟に騒ぐ事ないではありませんか」


苦笑しながら言うと、フロントマンは首を振った。


「いいえ!絶対に行ってはなりません!」


すると騒ぎを聞きつけてか、別のフロントマンが現れた。


「お客様…どうかされましたか?」


「はい。実はこれから何所へ行くのかこちらの方に聞かれたので、アドラー城跡地に行くと告げただけなのですが…?」


するとそのフロントマンまでもが顔を青ざめさせた。


「いけませんっ!絶対にあの城へは行かないで下さいっ!ここだけの話ですが…今まであの城の跡地に興味本位で足を運ばれた観光客の方々がおりましたが…全員命を落としているのですよっ!交通事故に遭ったり、自殺をしたり…中には宿泊客の方でホテルに戻って来なかったお客様もいられるのですっ!」


「そんなまさか…昨日も私はあの城の跡地に行きましたが何ともありませんよ?この通り無傷です」


「そ、そんな馬鹿な…」

「信じられない…」


2人のフロントマンは怯えた様子で俺を見ている。すると1人の背広姿の品の良い初老の男性が声を掛けて来た。


「ひょっとすると…兄さんは何かお守りを身に着けていたんじゃないですか?」


「え?お守りですか…?」


そう言えば、俺はミステリースポットばかりを追っているルポライターと言う事もあり、世界中で怪しげな占い師達から気休めに『お守り』と言う物を買って身には付けているが…どれも怪しいものばかりだった。けれど『アドラー城』の情報を俺に教えて来たルポライター仲間が「必ず城に行くときは身に着けていけ」と言われた怪し気はお守りが送り届けられてきたっけな…。


俺は腕に着けたミサンガをじっと見つめた。


「ええ、お守りなら沢山持っていますよ?」


笑顔で答えると、初老の男性が言った。


「そうですか…ではそのお守りは肌身離さず持っている事ですな」


それだけ言うと、その老人は去ってしまった。


「どうです?私はお守りのお陰で無事ですよ?」


途惑う2人のフロントマンに肩をすくめて俺は言った。


「「…」」


2人のフロントマンは互いの顔を見合わせていたが、やがてこちらを振り向くと笑顔で言った。


「「それではお気をつけて行ってらっしゃいませ」」


と―。



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